*足元の神様*
君は上ばかり見ながら、お礼を言うんだね。
君の望む「神様」は、そんな天の高みになんていない、大きくない、偉くない。
小石に座れるくらいの大きさで、君の足元にいるんだよ。
落ち込んだ時は俯くくせに、どうして見えないのかな、分かんないのかな。
ねえ、僕は下の下から、どん底から、君を見上げているよ。
悔しさの日、頑張れってラッパを鳴らして、応援した。
悲しさの日、君の落とした涙を集めて、通学路に花を咲かせた。
戸惑いの日、君が立ち止まる、そのたびにつま先にキスをした。
追いかけて、走り回って、へとへとになって。
それこそ、もう一歩も動けなくなるくらいに君を愛したよ。
そうして君は、小首をかしげながら「なんだか元気」と友だちに笑う。
「神様ありがとう」と高い空にも笑う。
足元の僕は目を合わせることも叶わず、君の軽やかな歩みに蹴られて、飛ばされて。
ああ、それでも、また君が「神様」を求めないかって期待して傍に戻るんだ。
それを馬鹿と呼ぶのなら、それでも別にいいんだよ。
無償の愛があるとするなら、まさしく「僕」だと胸を張ろう。
でも、仮にその愛に冠をもらえるのならば、それは君の笑顔がいい。
それを我儘と呼ばれても、願うことだけはやめられない。
ねえ、唇を噛み締めたあの日、ラッパの音が聞こえなかったかい。
頬を涙がつたったあの日、道先の花だけが君に揺れなかったかい。
進む道に迷い俯いたあの日、つま先に温もりを感じなかったかい。
いつか気付いてくれるだろうか、足元の小さな僕を。
君から生まれ、君を支え続ける、足元の小さな神を。
もしも僕の声が届いたら、ただ僕のためにだけ笑って。
本当に一度きりでいい、見えなくてもいいんだよ。
足元に落ちている君だけの愛に、どうか微笑んでください。
そうしたら僕は、もっとずっと君のために頑張るから、ね。
END
明日は、笑顔は、幸せは、愛は、君の足元にあるかも。