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対人恐怖症でずっと人生が苦しい話を聞いて欲しい。生まれた時から元来シャイな性質だったに違いない。小中学校ではずっと虐められ、友人は居なかった

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対人恐怖症でずっと人生が苦しい話を聞いて欲しい。

流石に幼児の記憶は無いが、生まれた時から元来シャイな性質だったに違いない。小中学校ではずっと虐められ、友人は居なかった。虐めの具体的内容については割愛する。こっ酷く玩具にされた、それだけの話だ。

教室で肩を窄め、授業の合間は教科書か本に齧り付き、昼休み、昼食はさっさと済ませて図書館に駆け込み本棚の影で本ばかり読んでいた。教室にいれば必ず周囲からの中傷の嬌声が聞こえるからだ。好奇と軽蔑の視線を背に感じるからだ。お陰で尋常ではない早食いになった。食べるのは好きだが、このせいで今でもゆっくり食事を楽しむ事に抵抗がある。一人でいる時でさえも。毎日学校からは逃げるように帰った。明日が来なければ良いと考えていたのは言うまでもない。

今思い返しても苦々しい思い出が一つある。
私の居た”そんな”環境の学校では、やはり不登校の児童がクラスに一、二人はいた。彼/彼女にもどうやら友人がいるらしく、その友人達は甲斐甲斐しくプリントを持って行ったり、たまに来た時も仲良くやっていたりした。
良かったね。貴方には待ってくれている友達が居るんだね。良かった良かった。

その事実を噛み砕いた私は感じた。
私は? 毎日歯を食いしばって登校し、一度も休むことが無かった私は? こんなに血反吐を吐く思いで頑張ってるのに、私には?
それでもなお友人が居ない、不登校の人間より友人が少ない(だって0より少ない自然数など無いもんな?)私はその時世界で一等惨めで卑しい存在だったのかもしれない。地面の下で蠢く虫の様なものだ。

高校では大っぴらな虐めこそなかったが、卑屈な生活は変わらなかった。弁当をさっさと食べ、図書館に駆け込み、部活に入らずさっさと家に帰った。
友人は勿論一人もいなかった。終わり。

これで人間を信じろという方が無理な話だ。
当然の如く私は対人恐怖症になった。人生の早くから。
家の外に一人で出歩く事自体が苦痛だ。道を歩いているだけで、向こう側から歩いてくる人間、車に乗っている人間、店にいる人間、全てが恐ろしい。電話も大嫌いだ。向こうに人間がいるのは変わらない。同じくSNSも自分で呟く気になれない。世の中に要らないゴミをまた一つ増やしてどうなる?
服屋や美容室など着飾るための娯楽店は最も恐ろしい。店員は私の事を×××と思っているかもしれない、いや、そう思っている、怖い、逃げたい…
服はいい歳をこくまでずっと親が買ったものだけを着ることになった。今でも自分自身の服のセンスがないままだ。何をやっても結局は糞の上にラメを振りかけているような気分になる。無駄の塊でしかないが、やらざるを得ない。だから憎いし苦しい。

この症状は大学でやや寛解を迎える。ショック療法に近いが、一人暮らしをせざるを得なくなった。色々あったが、お陰で何とか生活必需品を買える程度には落ち着ける様になった。勿論家から出ないのが一番である事は変わらない。

大学入学直後の健康診断でメンタルヘルス面で引っかかった際、面談を受ける事になった。
色々話した後、その先生はこう言った。
「初めて会う人は平気だけど、二度目に会うのが苦手だったりする?対人恐怖症によくあるんだけど」
その通りだ。
この時、初めて私は自分が対人恐怖症である事を他人に指摘された事になる。感情が昂り、泣きじゃくる私に先生はこう聞いた。
「少なくても友人が居るなら大丈夫。無理して多くの人と付き合わなくていいんだよ」
限りなく正しい言葉だが、その当時の私にとってはそうでなかった。私にその当時も、友人は居なかった。
少なくても友人が居るなら大丈夫?では、全く居なかったらどうなってしまうのだ。ちゃんとした先生が言うのだから尚更恐ろしかった。そのまま特に何も案内されず面談は終わり、医者からの対人恐怖症というお墨付きと鬱々とした気分だけを持ち帰った。

ロクなサークルにも入る事なく、粛々と通学だけをする日々が続いた。これでもやや虐められかけたのだから被虐体質ここに極まれりである。講座ごとの集まりであるのが救いだった。ゼミは殆ど善人ばかりだったので助かった。

まだ対人恐怖症は治っていない。
生半可に生存する事は可能なレベルであるから、病院に行く気も出てこない。
ただ、他の人間と比べた時、友人に屈託なく遊びに誘われた時、人に言われあれこれ作業する時、どう考えても対人恐怖症とそれによって生じた貧弱な精神と経験の少なさが足を引っ張っている。
他の人が馬鹿にする様な些細なことでも、私にとっては針の上を歩く様な苦行だ。だから人に言ってどうこう配慮してもらおう、などと甘えた考えは持っていない。私自身の過去から生じた問題であり、現在関わる人間に何の責任も無いし、逆にカミングアウトして“そういう”目で見られても困る。家族にさえも、(彼らは薄々理解はしているだろうが)言ってはいない。他の人間は私が少し馬脚を表すだけで、途端に今までは見えていなかった(見ない様にしていた)断絶を明らかにし、また私は傷つくからだ。
私はどうせ大したことでもない事で傷つく劣等人間だ。

病は気から、では無いが言ってしまった瞬間本当に(事実そうであったとしても)そうなってしまいそうな気もするのだ。対人恐怖症、ADHD、アスペルガー、色々思い当たるものはあるが、結局医者にかからない限り何も判別できないものだ。そして実際医者にかかる事さえも恐れているのだから滑稽な話だ。不摂生による病が判明するのを恐れて病院にあえて行かない人間の事を笑えない。

過去により歪んだ感覚と歪んだ精神を抱えてここに居る。この先、その他健全な人間と同じくらい純粋に物事を楽しむ事はできないし、同じくらいの喜びの機会を得る事はできないという未来を思うと絶望する。また、このままでは、また本当の地獄が訪れるであろう事にも。そして、この感覚を共有できる人間に巡り会う事があり得ない事にも。理解し共感しろと言う方が暴虐である事を十分知っているけれども。
他の脛に傷ない人間達が多くの喜びを享受しているのを見ると、過去に想いを馳せ喜びを懐かしむのを見ると、どうしようもなく羨ましい。羨ましいと思うと共に、どうしようもなく××らしく感じてしまう。そう言う事を考える自身について一番××らしく感じる。死にたくなる。

私も、他者を踏み躙りそれすらも気づかない図太い無神経な人間に生まれたかった。弱者の涙を啜って搾取する側になりたかった。
愛らしい人間に生まれたかった。何をやっても許され、愛され、持て囃され、尽くされ、何の苦労もせずとも生きていける側になりたかった。
いや、人間の業さえも背負いたくない、それこそ自我のない生物になりたかった。
いや、生まれたくなかった。
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