結構長いです。
私は、模範的な生徒である事でしか自分の価値を感じられなかった。
私みたいな鈍臭くて馬鹿で何もできない人間ができることなんてそのくらいしかなかったから。
大人がつける子供の評価なんて、結局は、従順か、そうでないかで決まるから。
分かりやすいもんだと思った。
馬鹿な私でも分かるくらいには。
だから私は、努めて従順でいた。
たくさん勉強した。言われたことは全て守った。
そうしたら案の定、模範生徒として大人達から讃えられた。
腹の底では向こうも馬鹿にしていたのかもしれない。マニュアル通りにしか動けない、紙の上でしか役に立たない知識しか持っていない馬鹿だ、と。
しかし、私にとってそれは唯一の自分の価値を見出せるものであったし、人に認められる、見てもらえる術でもあった。
私はそれにひたすら執着した。血眼になって勉強した。
本当はこんな事をしたって自分に価値がない事を心の奥底で分かっていながら。
そのせいか、百点のテストを受け取っても、輝かしい優越感に浸る中で、その後ろにできた影のように常に自己否定がちらついた。
こんなものができたって、社会じゃ役に立たないし、もちろん役に立つという人もいるんだろうけど、絶望的に要領の悪い私にはそんな事到底考えられなかった。
クラスに1人、問題児と言われる子がいた。
その子は本当に何も出来なかった。
常識がなってなくて、人とコミニュケーションをとるのが下手くそで、簡単な話も理解できず、いつも挙動不審。
もし私が優等生と呼ばれる立場なら、彼女は全く逆の立場に皆の目には映っただろう。
でも私は知っていた。
彼女と私がなんら変わりないということに。
どちらも、生きるための頭の良さが欠落しているということに。
もし私からこの学校という狭い箱庭でつけられた成績を取ったら、優等生のレッテルを剥がしたら、彼女と私は何が違うのだろう。
幸い、そんなことをわざわざ言ってくる人はいなかった。
当たり前だがそこらの人は私のことなど大して気にしてなどいない。
しかし私は怯えていた。お願いだからどうかばれないで、成績というフィルターがあるだけで結局は、かの問題児と変わりない愚図だと、見抜かないで。
いっそ叫んでしまいたかった。
私は馬鹿です、少なくともあなたたちよりはずっと、どうしようもない人間です。
しかし下手なプライドと怯えからそんなことはできず、褒め言葉の否定という形に留まった。
頭が良いね、などという言葉に対する否定は、謙遜だけでなく、本心でもあった。
そうやって、模範生徒という価値に執着し、誰かの称賛で心の表面を慰めて、しかし同時にその奥底で自分は無価値だという自己否定に勝手に苦しめられてを繰り返す、ほんとうにどうしようもない人間が完成した。
今に至っては成績だとか、模範生徒だとかいうことは、どうでも良くなった。
それは自分の価値を見つけられたからではなく、そんなことをしたところで結局自分には価値がないということに気づき、人からの承認や称賛、さらには目を向けられることすらも諦めたからだ。
ただ、時々思い出す。
私は確かにあの時誰かに認めてもらいたかった、私には価値があると言って欲しかった、辛かった、助けて欲しかった。
どうすればよかったんだ。
こんなに長い文章をここまで読んでくれてありがとうございます。
こんなこと、一生誰にも話すことはないだろうけど、もし誰かが少しでも共感してくれたら嬉しい。
名前のない小瓶
191436通目の宛名のないメール
お返事が届いています
ななしさん
長文、失礼します。
あなたのことを理解できるのは、
きっとあなただけですし、あなたの人生はあなただけのものだということを前提として、言わせてください。
私も、同じです。
あなたととても似ています。
常に模範というくくりから外れなければ、見て貰える、認めて貰えると
思っていました。
それに反して、周りは何もしていないのに認めてもらえていました。
私は模範であり続けることに努めているのに。なぜ、何もしていない奴等が。
…と思うこともあり、今も苦悩しています。
しかし、私は気づいたんです。
私はただ、楽な道を進もうとしているだけだと。模範であり続けるということは私にとって一番楽なことで、何の努力もせずいようとしているだけでした。
投稿主様は、努力しつづけていましたね。
それは素晴らしい才能です。
努力することは、大変ですし、
努力し続けることは、さらに精神を消耗していくと思います。
安直な言葉になってしまいますが、
私は、そんなあなたを
かっこいいと思います。
周囲からの評価ではなく、
あなたの価値は、
あなたが決めてください。
頑張ったあなたの心を、
真に想って、慰めて、認めてくれるのは
あなただけだと思います。
名前のない小瓶
あなたの価値は、きっとあるよ。
かなり不本意ですが、生まれ育って、そのままのあなたには、少しも価値がなかったとしましょう。
生まれてから、あなたは自分に価値を付け足すために努力をして、自分のするべきこと、いわゆる勉強を頑張ったわけです。
あなたは『成績』と『模範生徒の称号』そして、『努力』という価値を手に入れました。
これらの価値は、世の中の多くの人々に欠如している価値です。
それに、これは少し私事ですが、実は、私もあなたのように感じることがあります。
多分、私が持っている価値は『優等生の称号』『成績』『音楽』ぐらいかな……
あなたと同じ3つですが、私には『努力』が欠如してるんです。
えぇ、私だけではなく、世界中の人々の中から欠如しているでしょう。
『私は馬鹿です、少なくともあなたたちよりはずっと、どうしようもない人間です』
『そんなことをしたところで結局自分には価値がない』
そんな事言わないで。
あなたは、世の中の多くの人が手に入る機会があるくせに手に入れてこなかった『努力』という価値を持っています。
これは本当にすごいこと。
あなたに価値が無いわけがないじゃないですか。
それだけすごいものを持っているのに。
レッテルなんて剥がさなくて良い。
あなたはあなたです。
努力をして、みんなより良いものを手に入れたんです。
その事実には代わりありません。
どうか自分を否定しないであげてください。
あなたに目を向けている人間は、ここにいます。
もしあなたが黒の『名前のない小瓶』でなければ、きっと私は仲良くするために色々な小瓶にお返事をしたことでしょう。
たくさん自分を褒めてあげてください。
あなたには、他の人にない価値がある。
それこそ、あなたの光り輝く価値です。
以下はまだお返事がない小瓶です。
お返事をしていただけると小瓶主さんはとてもうれしいと思います。