私の残りの人生の半分を
貴方にあげたかった。
キラキラしたあの日、
連絡を受けた時のこと、
何ひとつ忘れない。
貴方の病室も、きっと明るい陽射しに満ちていたと思う。
「迎えに来てよ。入院なんてしてたら余計進行する。」
前夜何度も何度も言ったね。
どれだけ苦しかっただろう。
どれだけもがいただろう。
どれだけ無念だったろう…。
ねぇ、
貴方が最後に見たものは、
何?
ねぇ、
最後に貴方が思ったことは、
何…?
たった独りで。
貴方の病気の進行はとてつもなく速く、
あとどれくらいの時間があるのか、
いつも追い詰められ、いつも怖くて、
だから、
1秒1秒がとても大切だった。
「突然、いなくなったりしないで、お願い。」
言葉にした途端、
貴方がいない私の世界が、
いつか。
本当に。
やってくるんだ…と。
「ごめん、それは約束できないよ。
それはできないんだよ…、知ってるでしょ?」
の貴方の返事は、
正直だった。
貴方は痛くて、呼吸が苦しくて、怖くて。
それでも私は、
できることは全て全力でするから、
生きててよ…。
私のエゴは、貴方に生きていてほしい、
傍にいてよ…、だったと、今、思う。
貴方が胃瘻の決断をした時、
私は嬉しかった。
だけど術後貴方は、
貴方らしい優しい、穏やかな笑顔と声で
「栄養摂取のためじゃなくてさ、
モルヒネのためだよ。
そのための胃瘻。」
……言葉が出なかった…。
これからやってくる想像できないほどの苦しみに、貴方は抗う術がないことを知っていて、誰よりも覚悟と勇気を持って正面を向いた。
もう少しだったのに。
もう少しで、レスパイト入院なんて必要無くなったのに。もう少しで、私がずっと傍にいてあげれたのに。
突然終わってしまった残りの時間。
お互い、いろんなことがあったよね。
でも、
今までの全てが、
貴方に逢うためだったんだ、
これだったんだ…。
と、思えた。
「結婚しよーよ…。」のプロポーズ、
ありがとう。
貴方の人生の最後に私を選んでくれて、
ありがとう。
ただ、ただ、隣にいてほしい。
ただ、ただ、同じ空間で時を過ごしたい。
ただ、ただ、貴方の優しさの中にいたい。
話したいことがいっぱいある。
聞きたいことがいっぱいある。
一緒にしたいことがいっぱいある。
「さようなら」を言えることができたなら、
……私は言えただろうか………?