僕の現在位置です
先週、都心に向かうラッシュアワーの急行電車に乗っていたときのこと。
僕はカバンを持ちながら車内の中ほどに立っていた。
急行停車駅の中でも、特に乗車人数が多い駅に電車が着いて、4～5人の客が降りたあと、ホーム上で乗車を待っていた人の塊がドサッと勢いよく車内に傾れ込んできた。
その塊に押されながらも、周りは各自、少しでも自分のスペースを保とうと必死だ。
そのとき、中国人（香港人か）と思しき数名の団体（広東語を大声で話していた）が、身体とキャリーケースを無理矢理にねじ込みながら乗ろうとしてきたので、駅係員が「これからのご乗車はご遠慮ください」と数回、注意喚起していた。
しかし、係員のアナウンスメントを聞くはずもなく、彼らは「私達のためにもっと中へ入れ」と言わんばかりに乗り込んできたので、身体を押された車内の客数名が僕の方へよろけてきたのだ。
僕はと言えば、もう行き場を失っていて、身動きが取れない状態だったのと、カバンを肩に掛けていると周りの迷惑になるので、身体の前に抱えていた。
そこへ、僕に向かってよろけてきた乗客の身体が覆い被さり、その全体重をカバンが受け止める形になった。
瞬間、何かが割れるような「パキッ」という乾いた音がしたのが分かった。
スマホの画面が割れるにしては大きな音だな、手帳型ケースに取り付けてあるし……スマホの線は無いなと思った。
薄型の書類ケースは少しばかり柔軟性があるから、たぶん割れにくいよな……。
ほかに割れる可能性があるものとしたらヘッドフォンのバンドか。嫌な予感がした。
電車を降りてコンコースの端に寄り、すぐさまカバンの中身を確かめる。
予感が的中した。
ヘッドバンドの折り畳み部分（ヒンジ）の近く、樹脂の肉厚が薄くなっている所が見事に折れた。
溜息しか出なかった。これ、もう終息製品で買えないのに……。なんてこった。
あの中国人（香港人か）たちの顔を思い出すたび、黒い感情が呼び起こされる。今でも。
そんなことがあって、しばらく外出時の音楽は無しで過ごしてきたけど、昨日届いたヘッドフォンがなかなか良い品物で気に入っている。
KENWOOD の KH-KZ30。色はホワイト。
メーカーの公式ストアで、新品未開封のアウトレット品として出ていた所をお買い上げ。
あの通販の巨人アマゾンよりも安かった。
お値段だけ見れば普及価格帯、入門モデルになるんだろう。
だが音を鳴らしてみて驚いた。
なんだ、このバランスの取れた良い音は……！ 高音域までしっかりと伸び切るから気持ち良い。
売れない理由が分からないな（実際に売れたのかどうかは知る由もないが）。
黒い感情を白いヘッドフォンで上書きしよう。
そうだ、それがいい。
♪BLACK WATER / THE DOOBIE BROTHERS
