私は一匹のおたまじゃくしを見ました。夏の暑さも和らぐ頃です。未だ蛙になれていないおたまじゃくしに私は惹かれ、この小さな池を「明日も見に行こう」と心に決めたのです。
次の日、おたまじゃくしには脚と手が生えていました。通常ならば五日ほどで手脚が生えるものです。一日で急に生えてくることなんてありません。そんなおたまじゃくし、常識的 に考えているはずがないのですが、私には同じおたまじゃくしだという確信がありました。
次の日には、新緑を纏う小さな蛙に、その次の日には深緑の大きな蛙に姿を変えていました。そんな不気味な蛙の成長を確認するのが私の夏休みの楽しみとなっていたのです。
私が蛙を見つけてから五日後、その日はすぐに見つけることができませんでした。というのもそ の日の蛙は小さな池の中でも見ずらい草陰にいたのです。ぷかり。と。蛙は漂っていました。そんな、動かない蛙の変わりに腹の中の卵が少し動きました。