中秋の名月。
心が……、
騒つくよ…。
どうしても、
2人でいた夜を、
思い出さずにはいられない。
「名月だよ?一緒に見よっ?」
「名月か…、いいね。
うんうん、後で見よっか。」
………月は見なかったね。
けどさ、
窓を開けると、
外の空気が、
夜の地球の匂いが、
部屋にゆっくり流れ込み、
静かな、
穏やかな、
あの夜。
貴方は、
私の隣にいた。
「ね、
きっとうまくやれたよね、
私たち。」
「うん、やれたよね…。」
想いは、
溢れ出して、
私たちを飲み込んだ。
決して辛いだけの沈黙じゃなかったけどさ、
その中で、
お互い、
それぞれの想いを、
それぞれの無念を、
感じてた…………。
そして。
想いと無念の先へ。
準備も、
覚悟もできないまま。
貴方も。
私も………。
中秋の名月や、
キンモクセイは、
私には辛すぎる。
私は辛くていい。
貴方を想うから。
貴方を想わずに、
残りの時を過ごすことなどできないし、
したくない。
けど、
貴方は、
辛い思いの中にいないよね?
お願い。
もう、
十分………。
心配しないで…。
私、
頑張るから…………。