それは、8ヶ月前のこと。
元々彼らのことは知っていた。見ていた人とコラボしていたから。
ならば、なぜ見ていなかったのか。
言ってしまえば悪いが、民度が悪いという噂だったから。
けど、よくホーム画面に出てくる彼らの動画が気になった。見た理由はそれだけ。
隠れ鬼の動画だった。
今では見慣れたその動画は、私にとって新鮮だった。
おもしろいな。
それだけだった。今思えば、なぜそのまま他の動画を漁ったのだろうか。
きっとあの時私は、もう、彼らに惹かれていたのだろう。
そこから私は底なし沼にはまった。
彼らを知れば知るほど大好きになった。
魔も買った。原作も買った。闇も買った。
お金はかかった。お年玉から引き出してもらった。もちろん親に止められた。けど、それ以上に幸せだった。
新メンバーが出てきてワクワクした。
けど、なぜか受け入れられなくて辛かった。今では大好きになった。
これからも応援しよう。そう思っていた時だった。
9月1日。自分史上最大の事件。
知ったのは、9月2日だった。1日の夜になにか異変があったのは分かったけど、調べても出てこなかった。
2日の昼、調べたら動画が出てきた。怯えながら動画を見た。
苦しかった。
あんなに苦しげな声は知らなかった。
あんなに静かな彼らは知らなかった。
あんなにショックな動画は知らなかった。
そこからは地獄だった。
学校はやってくる。塾だって行かなければならない。
なにをしても楽しく無い。強いて言えば、父親に全てを言った時と、友達と遊んだ時。これが救いだった。
水色さんなわけない。黒色さんのわけない。
彼らの仲間を信じきれない自分が嫌だった。
よく見ていた絵師さんが、次々と鍵垢にしたり、ツイートしたり。
おれらこの街の古参だな、と言ってる人もいた。もちろんその人を非難しているわけじゃ無い。
でも、待ってよ、と叫びたかった。これが夢だったら、と何回も願った。
水色さんが帰ってきたり、新メンバーが増えたり。
白色さんがツイートしたり。黒色さんがブロマガを書いたり。
なにかが起こるたび、感情がぐちゃぐちゃになった。
肝試しもあった。面白かったし、嬉しかった。配信は時間が遅くて、次の日学校だったし見れなかったけど。少しは見れた。
そのアーカイブを見ている時は幸せだった。4日かけて見きった。
でも、やっぱり辛かった。
気付けば11月。9月1日から2ヶ月。
傷なんて治っていない。
今、タブレットが壊れ、彼らの声だって聞こえない。
権利者が嫌になった。なにも知らずに動画を見て笑っていた自分が嫌になった。
でも、それでも彼らを愛してしまう私は。
もうどうしようもないのだろう。