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さて…どこできるかで切ったら…もう数文字しかけなかったので、ここにかくー
前回のに書いたあとがきがー!!なのだけど…まさにあれだ…ここに張り付けたときは大丈夫だが、保存して戻ったら…消えていたとかマジかよ!!である…
まぁ、植松聖のことをどうのこうのというが…そういったのを許せない!というのもまた…まったく同じことをしているに過ぎない、的なことを書いたのよな…まぁ他にも…
弱者を助ける、という…助けるということ自体がそもそも、上から目線であり、それができる余裕のある、優性者であり…
その人に自分の全て、、家族も金も何もかもをくれてやれるかというと…言い方を変えれば、立場を入れ替えることができるか?というと、できないだろう?ゆえに所詮は偽善である。
まぁ、やらんよりはいいが…「あんたらのようなご立派な人生じゃ、底辺のことを理解するのは死んでも無理。理解しようとするだけましだが…その時点ですでに目線が違う」的なことを言うてるなーみたいなのを書いたのだが…他にも書いただが…わし二度手間的なのが、すごく嫌いなのよねぇ…ま、いいか、さ、続きじゃー。
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テオ
「ほんとのことだよ」
ジェシー
「・・・それなら、聞かせてもらいましょうか?」
シルフィリア
「あ、えっと・・・」
アンナ
「ジェシー」
ジェシー
「なによ?わたしは聞きたいだけよ」
ウルフリック
「そうだな!この人たち、ぷろ?なんだろ!じゃあ、聞いてもらおうぜ!」
ルイ
「そうだね、ぼくも正直、おねぇちゃんのが上手いと思ったよ」
ロナ
「わたしは、嫌いじゃないわよ?ジェシーさんの歌、でも・・・」
ボブ
「子供は辛辣だな、おい」
彼
「本当にな、得にここの奴等は・・・」
シルフィリア
「みんな、そんな事言ったらダメだよ・・・折角きてもらったのに・・・」
シーリア
「おねぇちゃんの、おうたーきくー」
ジェシー
「歌うの?歌わないの?」
シルフィリア
「ぇ、あ・・・歌って、みます・・・」
ジェシー
「歌は、オリジナル?それとも、何かの曲?キーボード持ってきてるから、ある程度なら、弾けるわよ」
シルフィリア
「あの、それじゃあ、さっき歌ってもらった歌の、歌詞とか書いてあるのを貸してもらっていいですか?」
ボブ
「ああ、あれ歌うのか?」
シルフィリア
「あの、すごく、よかったので、実際にあった話ですよね?」
アンナ
「うん、そうだよ」
彼
「おんなじの歌うとか、喧嘩売ってる感じだな、おい」
シルフィリア
「ぇ、あ、そ、それなら、、あの、別の、でも・・・」
ジェシー
「いいわよ、別に。はいこれ、歌詞」
シルフィリア
「ごめんなさい、ありがとうございます」
ボブ
「っと、準備はいいか?」
シルフィリア
「はい、大丈夫です」
テオ
曲が始まって、シルフィリアさんが、歌う。
ギターとキーボード、そして、ベースの音。
それにも全然負けていないくらいの声量で、歌う。
みんなが歌に耳を傾ける。
歌も中盤に差し掛かったとき、バン!という大きな音がして、音楽と歌が一斉に止まった。
シルフィリア
「あ、あの・・・」
ジェシー
「・・・っ・・・ごめんなさい」
アンナ
「ジェシー?」
ジェシー
「・・・完敗よ、というか、それだけ歌える人は、プロでも中々いないわよ?」
ボブ
「・・・やばいよな」
ジェシー
「アンナ、レコーダー、もってきてるかしら?」
アンナ
「え、うん、あるよ」
ジェシー
「ねぇ、別の歌なんだけれど、よかったら、録らせてくれないかしら?」
シルフィリア
「ぇ?あ、はい、歌を録るんですよね?」
ジェシー
「そうよ、録音させてもらうわ」
ロゼット
「今日もありがとうございました」
マリー
「こっちもありがとう」
ジョシュア
「あー、面白かった」
マリア
「そうね!」
ロゼット
「あの、また来ても、いいですか?」
マリー
「ええ、いつでも来てね」
ロゼット
「はい、では今日はこれで!ありがとうございました!」
シルフィリア
「ありがとうございました。あの、良かったら、晩御飯、食べていってください」
彼
「だってよ?勿論食ってくよな?」
ボブ
「おう!貰うぜ!」
ジェシー
「ええ、いいなら頂くわ」
アンナ
「うん、わたしもお腹すいちゃった」
シルフィリア
「あの、お酒、呑める人はいますか?」
彼
「俺は、車の運転手だからなぁ・・・また、貰って行ってもいいか?」
アンナ
シルフィリアちゃんが出してくれた料理は、ビーフシチューとフランスパンとポテトサラダだった。
あとは、運転をする彼には悪いけれど、ワインを1杯貰うことにした。
ボブ
「家のマリーのも美味いけど、これも美味いな!」
彼
「確かに、美味いな、また食いに来てもいいか?」
シルフィリア
「いいですよ」
彼
「おい、俺のときは、そうじゃねーだろ?」
シルフィリア
「ぇ?・・・いいよ」
彼
「そうだ、それでいい」
ボブ
「お前は何を言わせてるんだよ・・・」
彼
「堅苦しいのは苦手なんだよ」
ボブ
「ま、それはわかるけどな」
ジェシー
「ねぇ、貴女、、プロとかになる気はない?オーディションに出るとか・・・」
シルフィリア
「あの、そういうこと、よくわからないですから・・・」
アンナ
「もったいないよ」
ボブ
「んじゃ、ご馳走様だったぜ!」
アンナ
「美味しかったよ、ご馳走様」
ジェシー
「ねぇ、あなたのこの歌、、勝手に使わせてもらっても良い?」
シルフィリア
「え?えっと・・・はい・・・」
彼
「んじゃ、帰るか」
シルフィリア
「あ、まって・・・はい、これ」
彼
「おっ、そうだったな、貰ってくぜ」
テオ
その後も、そのおじさんは、何度もここにやってきた。
シルフィリアさんとも、子供たちとも仲良くなっていった。
正直、すこし、嫉妬した。
テオ
「おじさん、仕事しなくていいの?」
彼
「ああ?これも仕事だぜ?」
テオ
「ほんとに?」
彼
「さぁてな・・・。あいつ、いるか?」
テオ
「自分で探しなよ」
彼
「あーいよ」
テオ
「・・・シルフィリアさんに会いたいだけじゃないか・・・」
彼
「お、いたいた。なぁ、ちょっと、いいか?」
シルフィリア
「なに?」
彼
「テオいるだろ?あいつ、貸して貰っても良いか?」
シルフィリア
「・・・どういうこと?」
彼
「ああ、俺が今居るところでな、俺の手伝いに使いてーんだ」
シルフィリア
「わたしは、テオがいいって言うなら、いいよ」
彼
「おう、そのかわり、何か手伝って欲しいことがあったら、テオに伝えておいてくれ、車があるからある程度はいけるからよ」
シルフィリア
「うん、わかった。ありがとう」
彼
「おう、テオ」
テオ
「話はおわったの?おじさん」
彼
「まぁな、所でよ、俺が手伝いさせてもらってるとこ、来てみるか?」
テオ
「え?いきなり、なんで・・・?」
彼
「お前12だろ?あいつも言ってたろ、12になったらって、だから、まぁ、自立の為って言うかな・・・。社会化見学だ」
テオ
「でも、おれ・・・」
彼
「それによ、ここの奴らにも紹介できるかも知れねーだろ?お前が先発隊ってことでな?どうだ?」
テオ
「・・・うん」
ロゼット
「そんなこともあったんですね!」
マリー
「そうなのよ、、あ、そうだわ、もう一人新しく、ここを手伝ってくれる人が居るのよ」
ロゼット
「そうなんですか?あってみたいです!」
マリー
「口は悪いけど、ボブとは違った意味で、ガキ大将みたいな人よ。似てるからかしらね、ボブは特に気に入っているみたい」
ロゼット
「あはは!あ、、今日はもう行かないと、また話を聞かせてください!」
マリー
「ええ、また来てね」
彼
「うし、ついたぜ」
テオ
「でも、やっぱり・・・」
彼
「今更なんだよ?頼れるところは多いほうがいいぜ」
ロゼット
「あれ?今の人・・・どこかで・・・。気のせいかな?」
彼
「てなわけでよ、よかったら、こいつを、まぁ、俺の助手で使っても良いか?」
マリー
「それは、シルフィリアちゃんに言うべきことじゃない?」
彼
「あいつの許しは得てるぜ」
テオ
「そう、なの?」
彼
「ああ、お前がよければ、だけどな」
テオ
「・・・おれ、何していいかわかんないよ?」
彼
「いや、それは、俺も同じだ。つい最近入ったばかりだからな」
ボブ
そうやって、あいつが連れて来た、このテオとか言う坊主。
話してみると、意外と生意気なことがわかった。
あいつによると、シルフィリアの前では、大人しいんだそうだ。
言われてみると、女の前では大人しいかもしれねぇな・・・。
テオ
おじさんに言われて、おれはこの小さな世界を手伝うことになった。
ジェシーさんやマリーさんにアンナさんの手伝いもしたりした。
この施設にいる人たちとも、話をしてみたりした。
色んな世界があるんだなぁ・・・。
アンナ
ボブや彼の前では、結構生意気らしいけど・・・。
わたしやマリー、ジェシーとか女性の前では生意気な面はみせない。
ジェシー
それがなぜなのか・・・。なんとなく分かった。
きっと、テオには母親が居なかったのだろう。
彼
俺とテオの仕事は、主に、シルフィリアの造ったワインを配りに行ったりとかだったが。
小さな世界の仕事も勿論あったが、ボブ達を演奏する場所に連れていくような送り迎えだ。
暇なときは、テオを色んな所に連れて行ったりした。
テオ
「シルフィリアさんとも一緒にきたかったな」
彼
「お?なんだ、俺とじゃ不服だってか?」
テオ
「あたりまえだよ、おじさん」
彼
「ったく・・・。ま、でも、確かに、あいつも連れていきてーな」
テオ
「みんな連れてきちゃえば、いけるよね」
彼
「そうだな、シーリア・・・あいつがもう少し大きくなったら、そうするか」
テオ
「そうだね」
テオ
「ねぇ、おじさん」
彼
「あん?」
テオ
「なんで、おれを助手にしたの?年齢以外で」
彼
「そうだな・・・なんとなく、似てると思ってな」
テオ
「おじさんと?」
彼
「ああ」
テオ
「・・・そっか」
彼
「んじゃ、また頼むぜ」
テオ
「うん、おじさんもまたね」
シルフィリア
「おかえり、テオ」
テオ
「シルフィリアさん、ただいま」
ユライプ
「テオー・・・ここにいたのかぁ・・・。だめじゃないかぁ、家出して、こんな所でぇ・・・あの女がおいたをしたんだねぇ」
テオ
それから数日後、今日は、病気の人たちが来て、診断と治療薬の注射を受ける日だ。
医者も勿論来ていて、特に何の問題なく終わった。
患者さんからお礼を言われたりして、少し、戸惑ったけど・・・。
おれとシルフィリアさんにお礼を言ってその医者も最後に帰っていった。
テオ
「結構、遅くなっちゃいましたね」
シルフィリア
「そうだね、ごめんね、遅くまで」
テオ
「いいんです」
シーリア
「・・・おちっこ・・・」
テオ
「シーリア、起きちゃったのか、トイレだね、いこっか」
シーリア
「うん」
シルフィリア
「下のほうの片付けしてくるね・・・シーリアのこと、お願いね」
テオ
「はい、シーリアが寝たら、手伝いに行きます」
シルフィリア
「うん、ありがとう」
テオ
患者の注射針とか普通は医者が処分する物のはずなのに、
シルフィリアさんにとってはいつものことなのだろう、片付ける為に下へと降りていった。
シルフィリア
「ここは、これでいいかな・・・」
シルフィリア
消毒液に漬けられた注射針を怪我をしないように丈夫な袋の中に入れていく。
・・・そのなかに、使ってない針と、消毒液に漬け忘れた針が数本あった。
そんなことは初めてだった。お医者さんも疲れているんだろうな。
そう思っていたら、部屋の扉が開く。
シルフィリア
「・・・テオ?」
ユライプ
「おまえかぁ~、テオを連れて行ったのは」
シルフィリア
「ぇ・・・っ、テオのお父さん、ですか?」
ユライプ
「そうだよ?君が連れていった、テオの父親だよぉ!!」
シルフィリア
「!?」
ユライプ
「綺麗だな・・・そうかぁ、そうかぁ!!」
シルフィリア
「・・・っ」
ユライプ
「テオは、どこだぁ?ここにいるんだろう?」
シルフィリア
「いまの、あなたには、会わせられません」
ユライプ
「生意気な女だなぁ・・・だが、確かに美しいなぁ・・・」
シルフィリア
「っ・・・!」
ユライプ
「形の良い胸だなぁ・・・もっとよくみせておくれ!!」
シルフィリア
「ぁうっ!!」
ユライプ
「あはは、きれいだなぁ・・・。お前達をずっとみてたからなぁ・・・わかってるんだぞぉ?」
シルフィリア
「・・・テオには、会わせられません」
ユライプ
「良い眼だ、綺麗だなぁ・・・。それで息子を誑かしたんだな!!!」
シルフィリア
「っ・・・!!」
ユライプ
「ぁあ、すまない、女性を殴るなんて、いけないよなぁ・・・。でも、お前が悪いんだぞ?」
シルフィリア
「!!やめ、、てっ・・・」
ユライプ
「なんだぁ~?テオともしたんだろう?父親のわたしもいいじゃないかぁ~」
シルフィリア
「あなたは、っ!」
ユライプ
「あは、あはははは!ひゃははあははーーー!!!・・・ぐふぉ!?」
シルフィリア
「・・・っ・・・」
ユライプ
「・・・いけないなぁ・・・大人を蹴るだなんてぇ、痛いじゃないかね?ふひっ・・・お仕置きが必要だなぁ」
シルフィリア
「可哀そうな、人・・・」
ユライプ
「ぁあ?何か言ったかねぇ?・・・ん~?これは注射針かぁ~、いいねぇ~、これだぁ、これを使おう」
シルフィリア
「ぅ・・っ・・」
ユライプ
「まずは、一本・・・」
シルフィリア
「くっ!・・・っ・・・」
ユライプ
「2本・・・」
シルフィリア
「ぁ!・・・・ぁぁぁ、っ・・・」
ユライプ
「綺麗な胸が、針の山になってしまったねぇ~」
シルフィリア
「っ!!・・・っ・・・」
ユライプ
「なんだぁ?まだそんな眼で見るのかぁ?・・・このまま握りつぶしてやろうなぁ、痛いだろうなぁ・・・」
シルフィリア
「ひっ・・・っあぁぁあああああああ!!!」
ユライプ
「良い声だぁ・・・感じてしまうじゃないかぁ、もっと聞かせておくれぇ」
テオ
「ひ、めい?シルフィリアさんっ!!」
ユライプ
「・・・テオぉ、だめじゃないかぁ・・・ずっと探していたのにぃ」
テオ
「と、う、さん・・・」
シルフィリア
「・・・ぅっ・・・テ、オ・・・?」
テオ
「とう、さん・・・っ・・・」
ユライプ
「この女に、無理やり監禁されたんだろ~?さぁ、おいで、悪い女へのお仕置きは済んだからね・・・」
テオ
「・・・!!シルフィリアさんから、離れろ!!」
ユライプ
「なんだぁ、父親にむかっt」
テオ
「離れろよ!!でないと、でないと、お前を殺してやる!!!」
ユライプ
「・・・ころすぅ?いけない子だなぁ、テオぉおおお!!」
テオ
「ひ・・・う、うぁあああああ!!」
シルフィリア
「っ・・・だめっ!テオっ!!」
ユライプ
「ぐっ!!テオォォオォオオ!!!」
テオ
「うあっ!!・・・ぐぁ!!」
シルフィリア
「・・・っ、やめて!!!!」
ユライプ
「・・・ぁ~?」
テオ
「はぁ、はぁ・・・」
シルフィリア
「・・・あなたも、帰って、ください・・・テオは、今のあなたには、渡せません」
ユライプ
「また、その眼かぁ・・・にがてだなぁ・・・強い奴の眼だなぁ・・・」
テオ
「・・・このっ!!シルフィリアさんっ!」
ユライプ
「ぅっ・・・ぁぁ。痛い、痛いなぁ・・・。あいつも・・・そんな眼をする、女だった、、なぁ・・・」
テオ
俺に突き飛ばされた父さんは、立ち上がると、何かを呟きながらフラフラと出て行った・・・。
シルフィリア
「ごめんね、大きな声だして・・・怖かったよね」
テオ
「怖くなんて、ないです!!」
シルフィリア
「よかった・・・」
テオ
「シルフィリア、さん・・・っ!、胸の、それ、血ですよね!?」
シルフィリア
「・・・平気」
テオ
「で、でも!!」
シルフィリア
「・・・ごめんね、少し、まって、て・・・」
テオ
シルフィリアさんは胸元を隠しながら、おれに背を向ける。
シルフィリア
「・・・んっ・・・っ・・・は、、んっ・・・」
テオ
部屋は薄暗くて、シルフィリアさんは背を向けているから、よくわからなかったけど、苦しそうな声が聞こえる。
おれの方に振り向くまで、暫く、押し殺したような声が聞こえた。
シルフィリア
「・・・ごめん、ね・・・」
テオ
「ごめん、なさい。おれの、おれの、とう、さん・・・が・・・」
シルフィリア
「私は、大丈夫、大丈夫だから・・・」
テオ
おれを抱きしめて、そういうシルフィリアさんの体は、震えていた。
シルフィリア
「ぁ、顔に、ついちゃった、かな・・・?ごめんね」
テオ
「っ・・・うっ・・・ぐず・・・」
シルフィリア
「・・・。みんなには、内緒・・・ね?」
テオ
耳元で囁かれたその言葉に、おれは黙って頷いた。
シルフィリア
「みんな、おはよう」
テオ
「おは、よう・・・」
ロナ
「あれ・・・?おねぇちゃん、お顔どうしたの?」
シルフィリア
「ぇ?あ、ちょっと、ぶつけちゃったの」
ルイ
「本当に?」
シルフィリア
「本当は違うの・・・ごめんね、嘘ついちゃった」
ウルフリック
「言いたくないなら、いいぜ!」
テオ
「ぅ・・・」
シーリア
「おねぇ、ちゃん、どうかちたの?」
シルフィリア
「ううん、なんでもないよ、大丈夫」
シルフィリア
「洗濯物、干してくるね」
シーリア
「あたちも、いくー」
シルフィリア
「うん」
ウルフリック
「・・・お前、何か知ってるだろ」
テオ
「知らない、よ」
ロナ
「おねぇちゃんから、言わないでって言われたんでしょ?」
テオ
「っ!」
ルイ
「おねぇちゃんと同じで、嘘が下手だね」
テオ
「・・・ごめん」
ルイ
「それじゃ、しょうがないね」
ロナ
「そうね。さて、わたしも洗濯物、手伝ってくるわ」
彼
「おう、手伝いに来たぜ」
シルフィリア
「ありがとう、それじゃあ、それ、運んでもらっていい?」
彼
「おう」
テオ
日に日に、シルフィリアさんの顔色が悪くなっていく・・・。
みんなの前でも隠そうとしてるけど、無理をしているのがわかる。
ルイ
「おねぇちゃん、大丈夫?顔色、悪いよ」
シルフィリア
「ぇ?大丈夫、ごめんね、すこし気分が良くないみたい」
ウルフリック
「ほんとうかー?無理はだめだぞ?」
シルフィリア
「うん、ごめんね、ありがとう」
シルフィリア
「っ・・・はぁ、はぁ・・・くっ」
シルフィリア
(・・・みんなには、みせ、られないな・・・心配、させちゃう)
彼
「なぁ、あいつ、時々苦しそうな顔してないか?」
テオ
「っ・・・そ、そう、、かな」
彼
「・・・いや、気のせいならいいんだ」
シルフィリア
「・・・みんな、ごは、、ん・・・」
彼
「お、おい!!」
テオ
「シルフィリアさん!?」
子供たち
「おねぇちゃん!?」
彼
「ちょっとまて、電話・・・ちっ、圏外かよ!!」
テオ
「ど、どうしよう」
彼
「俺が運んで病院に連れて行く!車もあるからな!」
テオ
「まって、おれも!!」
彼
「お前は、このガキ共をみてろ!後で迎えに来る!」
シルフィリア
「・・・っ、、ぁ・・・わた、し・・・」
彼
「おう、気がついたか・・・待ってろ。今病院に連れて行くからな」
シルフィリア
「・・・倒れ、たんだね・・・わたし・・・」
彼
「ああ、まぁ、病院にいきゃ、なんか、わかるだろ・・・」
彼
シルフィリアを病院に連れて行った後、医者の話を聞いた。
俺は電話をかけて、全員を呼んだあとで、そのことを話した。
テオ
「言わないでって言われたけど・・・けどっ!」
テオ
おれは、あの時に何があったのか全部話した。
テオ
「きっと、そのときに、父さんに、なにか、されたんだ・・・」
ジェシー
「・・・エイズ患者の注射針を刺されたんだわ。それしか、考えられないわ」
ボブ
「エイズって、そんなに早く発症するもんじゃねーだろ!!」
彼
「医者から聞いたんだ、新種なんだとさ・・・発病から発症まで、あっと言う間で、発症してから死ぬまではもっと早いらしい」
アンナ
「それって、治らないの?」
彼
「・・・あぁ、普通のエイズは治る可能性はあるみたいだが、これはダメらしい。感染したら、終わり、なんだとさ・・・」
テオ
「おれの、おれの、せいだ・・・おれが、もっと早く、みんなに、いって、病院に・・・」
彼
「言ったろ?感染したらもう終わりなんだよ」
テオ
「なんで、そんなに冷静なんだよ・・・シルフィリアさんのこと、好きだったんじゃないのかよ」
彼
「・・・俺にも、わかんねーよ」
マリー
「シルフィリアちゃんの家の子供たちをどうするか、考えないといけないわね・・・」
アンナ
「こっちに連れて来る事って出来ないの?」
マリー
「ええ、それは考えているわ」
ボブ
「その間は、、俺達が面倒を見るか」
マリー
「そうね・・・でも、今のままだと長くは無理だろうから、そういう機関にも手伝ってもらえないか、連絡してみるわ」
アンナ
「そっか・・・うまくいくといいけど」
彼
「で、お前はどうする?」
テオ
「おれ、もう、あそこには帰れないよ・・・」
彼
「そっか・・・なら俺の家に来いよ」
テオ
「・・・うん」
彼
「落ち着いたら、ちゃんと戻って訳を話せ。・・・きついけどな」
テオ
「・・・うん」
テオ
そうやって、おじさんの家に住むことになった、小さな世界の手伝いを一緒にしながら。
暫くたった頃、家に帰った後で、二人で話をしているとき、お互いの家族の話になった。
おじさんの過去の話も、おれの過去の話もしあった。
その話をするうちに、名前の由来についての話をすることになった・・・。
彼
「俺の名前の話なんだけどよ」
テオ
「うん」
彼
「昔な、飛行機事故があったんだ。エア・フロリダ90便墜落事故 っていってな」
彼
「極寒の川に生存者の6人が投げ出された。雪のせいで交通も麻痺してたらしくてな、救助隊が来るのが遅れたんだ」
彼
「レスキュー隊が遅れる中、公園管理の警察パトロール隊が吹雪の中20分かけて、そこにたどり着いた」
彼
「それから救助ヘリは6人に向かって、ロープを投げた」
彼
「弱っていた奴から救助されていった。そいつは2番目にロープを投げられたんだ」
彼
「だけどな、他の奴に譲っちまった。救助のヘリの奴もなんで譲ってしまうんだ?と思ったらしい」
彼
「最終的にそいつは、5人全てにロープを手渡した」
彼
「6人目のそいつを救助するヘリが戻ってきたときは、そいつの姿はもう無かったらしい」
テオ
「人のために、自分を犠牲に出来る人だったんだね」
彼
「ああ、そうだ。けどよ、そいつの名前をもらった俺はどうだ?情けなくてよ、その名前で呼ばれんのが嫌になったのさ」
テオ
「そうだったんだ・・・」
彼
「でもよ、ここでこうやってると、そんなに考えすぎなくてもいいかなって思えてきちまうぜ」
テオ
「いいんじゃないかな」
彼
「ちっぽけなことで、悩んでたんだな~、俺・・・。母親から貰った名前、好きだったのにな」
テオ
「・・・じゃあ、おれの名前の由来も話すよ」
テオ
「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホって知ってる?」
彼
「ああ、あの有名な、、画家だろ?」
テオ
「そう。それで、おれの名前はテオドルスのテオからとられたんだ」
彼
「テオドルス?」
テオ
「テオドルスっていうのは、テオドルス・ヴァン・ゴッホっていってね、ヴィンセントの弟だった人なんだ」
テオ
「自分は結婚もして、家庭を持っているのに、画家を目指してふらふらしている兄に尽くした人で・・・」
テオ
「奥さんが止めるのにもかかわらず、兄の描く絵は僕の誇りなんだ、みたいなこといって、援助し続けた」
テオ
「ヴィンセントが無職で画家を続けても、大丈夫だったのは弟のおかげだったんだ」
テオ
「弟のテオドルスは兄である、ヴィンセントを早くから認めていたみたいでさ、いつか認められるって」
テオ
「テオドルスの絵を見る目は確かだった見たいで、画商として売っていた絵は モネ、ルノワール、ゴーギャン、ドガ、ロートレック、ルドン がいたみたいだよ」
テオ
「上司にはくだらない絵って言われてたみたいだけれどね」
テオ
「でも、ヴィンセントが生きているときに、売れた絵って、実は一枚だけなんだよ。売れ出したのは死んでからなんだって」
テオ
「兄が死ぬと、テオドルスも希望をなくしたように衰弱していって、その次の年に死んだんだ・・・墓は、同じところにあるらしいよ」
テオ
「でもさ、おれの家系は、こんなだからさ、頼れる家族とか欲しかったな」
彼
「じゃあ、俺が兄貴になってやるよ」
テオ
「なんだよ、それ」
彼
「ああ、やっぱりあれか?こんな兄貴は嫌だとでもいうつもりか?」
テオ
「そんなことないけど・・・まぁ、しばらくはおじさんね」
彼
「可愛げの無いやつだなぁ」
テオ
「・・・ねぇ、明日、シルフィリアさんのお見舞いに連れて行ってくれない?」
彼
「ああ?いつも行ってるじゃねーか」
テオ
「そうじゃなくて、二人だけで、話したいから・・・」
彼
「ぁあ?・・・しょうがねーな」
テオ
「じゃ、おじさん、お願い」
彼
「おう」
彼
「ついたぜ、俺はここで待ってるからよ」
テオ
「ありがとう、おじさん」
彼
「おう、ほれ、行って来い」
テオ
「シルフィリアさん」
シルフィリア
「テオ、いらっしゃい」
シルフィリア
「・・・みんな、大丈夫かな」
テオ
「ボブさん達が、面倒をみてくれるから、平気だよ」
シルフィリア
「そっか・・・今度来てくれたときに、お礼、言わないと」
テオ
「・・・シルフィリアさん」
シルフィリア
「うん、どうしたの?」
テオ
「抱いても、いいですか?」
シルフィリア
「え?」
テオ
「・・・なら、前、見たく、抱きしめてください」
シルフィリア
「ぁ、うん、いいよ」
テオ
「ん・・・シルフィリアさん、おれも、男ですよ?」
シルフィリア
「テオ?」
テオ
「一緒に寝てるときとか、我慢、してたんですよ・・・?」
シルフィリア
「・・・テオ・・っ・・んっ!!んんっ・・・っ!!」
テオ
「ぐっ!・・・っ、おれは!おれは、シルフィリアさんの事が好きです」
シルフィリア
「はぁ、はぁ・・・駄目・・・駄目、テオ」
テオ
「・・・・・・」
シルフィリア
「ごめんね、怪我、してない?」
テオ
「抱きしめないでよ、そんなことしないでよっ!嫌いなら、そうだって言ってよ!!なんでそうやってっ、勘違いさせないでよ!おれは好きなんだよ!本当に!病気でもなんでもいいから!一緒に死ねるならそれでも、いいから、いいから・・・っ・・・うぅぅ」
シルフィリア
「ごめんね・・・」
テオ
「謝らないでよ・・・おれに未練のこさせるつもり?」
彼
「おう、戻ってきたか」
テオ
「・・・・・・」
彼
「どうしたぁ~?元気ないな」
テオ
「別に・・・なんでもないよ」
マリー
「シルフィリアちゃん、具合は、どう?」
シルフィリア
「マリーさん、そんなには、苦しくないです」
ジョシュア
「へぇ、おねぇさんが、シルフィリアさんかぁ。ボクはジョシュア」
マリア
「はじめまして、マリアです」
シルフィリア
「よろしくね」
マリー
「あなたの子供たちの事が心配だったから、ボブ達を行かせたんだけれど、あなた、ちゃんとやっていたのね。もう手伝いの人が来ていたわ」
シルフィリア
「ご迷惑をお掛けして、ごめんなさい」
マリー
「いいのよ」
ジョシュア
「その人たちって、信用できるの?」
シルフィリア
「できます」
マリア
「そう。なら、わたし達の出番はないのね~」
シルフィリア
「そんなことはないです、テオの事もそうですけれど、すごく助かってます」
マリア
「それなら、いいのだけれど・・・」
シルフィリア
「テオのこと・・・子供たちのこと、お願いします。」
マリー
「ええ、できるだけのことはするわ」
シルフィリア
「ありがとうございます。・・・子供たちのこと、よろしくおねがいします」
ジョシュア
もう一度、そういった、シルフィリアさんの瞳は、慈愛に溢れた母の瞳だった。
・・・ボクは、その瞳に恋をした。
マリア
お見舞いに行って、少しだけ話をした。
たったそれだけの、こと・・・。
でも、わたしも兄様もわかった。
シルフィリアさんは、とっても強くて、優しい人だって。
わたし達、人を見る眼は、あるの。
だから、間違いないわ。
シルフィリア
「・・・いきなり電話してごめんね。・・・お願いがあるんだけど、いいかな?」
シルフィリア
「・・・もう、そろそろ駄目かもしれないから・・・。うん、だから・・・もっと大きな病院?・・・ありがとう、でも自分のことだから、わかるよ」
シルフィリア
「だから、その時は、みんなに連絡して欲しいの。うん、ごめんね」
シルフィリア
「そんなこと言わないで・・・。それに私がお願いしたことだから」
シルフィリア
「ごめんね・・・子供達の事、お願いね・・・。私の家?・・・そう、だね。必要な人にあげて欲しいな」
シルフィリア
「それと、小さな世界って知ってるかな?・・・うん、できるだけ力になってあげて欲しいの」
シルフィリア
「・・・やり方は任せるよ。うん、ありがとう、お願い」
テオ
おれが、告白をしたときから、数日、あの時は、歩くことはできたのに・・・。
もう、シルフィリアさんは、ベットから起き上がることも出来なくなった・・・。
彼
「・・・今度は、俺がお前に頼んでいいか?」
テオ
「なに?おじさん」
彼
「お前と同じことさ。あいつと、二人で話したい」
テオ
「・・・いいよ、行ってきなよ、ここで待ってるから」
彼
「苦しいか?」
シルフィリア
「・・・だい、じょうぶ・・・」
彼
「辛いときは、そう言って良いからな?」
シルフィリア
「心配、かけさせちゃって、ごめん、ね」
彼
「謝るなよ、お前は別に何も謝ることなんかしてねーよ」
シルフィリア
「そう、なのかな?・・・テオにも、あなた、にも、謝って、ばかり、だった、ね」
彼
「なぁ、こんな時に、なんだけどさ・・・。俺、お前の事が好きだ、愛してる」
シルフィリア
「・・・ごめんなさ、い・・・」
彼
「答えはNO・・・か」
シルフィリア
「ありがとう、その気持ちだけ、でも、本当に、嬉しい」
彼
「嬉しいとかいうなよ、未練が残るじゃねーか」
シルフィリア
「ご、めんね・・・テ、オにも、おなじ、こと、いわれちゃっ・・・た・・・」
彼
「そっか、まぁ、それがお前の・・・。・・・おい?」
シルフィリア
「・・・・・・」
彼
「っ!お、おい!おいっ!しっかりしろ!おい!シルフィリアっ!」
テオ
その後、みんなが呼ばれて集まった。
だけど、シルフィリアさんは、そのまま、二度と目覚めることはなかった・・・。
テオ
「・・・シルフィリア、さん」
彼
「おう、大丈夫か?」
テオ
「・・・・・・」
彼
「大丈夫なわけ、ねーか」
ジェシー
「もう、あの歌声は聴けないのね」
アンナ
「うん・・・でもさ、ほら、録音、しておいたから・・・遺って、るよ」
ボブ
「なんで、だろうな・・・。牧師さんが死んだときは違って、なんか、な・・・」
マリー
「まだ、この娘のこと良く知らなかったもの・・・」
ボブ
「そうじゃなくてよ、なんか、こう・・・。怒りじゃなくてよ、すげぇ、なんていうかな・・・」
アンナ
「どうしてなんだろう、なんで、こんな娘が・・・そういうやるせない感覚と・・・駄目だ、わたしもうまく言えないや」
ジョシュア
「ボク達は、シルフィリアさんのことをあまりよく知らなかった、だから、これくらいですんでるんだろうね」
マリア
「・・・兄様、でも、わたし、涙が・・・でてきちゃって・・・っ・・・」
ジョシュア
「優しいね、マリアは」
ジェシー
「私達にとっては、人事(ひとごと)かも、しれないけれど、あの二人は・・・どうかしらね。それに、子供達も・・・」
アンナ
「人事、かもしれないね、、でも、泣いてるじゃん、ジェシー」
マリー
「覚悟をしていたかどうかの違い、よ・・・それでも、駄目なものは駄目だけれど」
アンナ
「あの子達に、なんて話そう・・・」
ボブ
「・・・もう、会えないって、そういうしかねーだろう」
マリア
「呼んであげたほうがいいと思うの」
ジョシュア
「ボクもそう思う」
ジェシー
「そうね、年齢の割にはしっかりしてるから・・・大丈夫よ、きっと・・・」
ジョシュア
「ボクちょっと、外の空気吸ってくるね」
マリア
「わたしも行くわ」
ジョシュア
「ごめん、マリア、すぐ戻るから・・・」
マリア
「・・・うん」
マリア
・・・兄様が出て行ってからすぐに、私はその後を追った。
病院を出て、少しだけ歩いた所でお兄様は足を止める。 誰も居ない、静かな場所。そこにあった木の根元に縋り付く様に蹲(うずくま)って・・・。 ・・・兄様が泣くのを見るのは、初めてだった・・・。
ジョシュア
「・・・っ・・・・ぅ、、ぅっ・・・・」
マリア
「兄様・・・」
テオ
その後、孤児院のみんなを連れて来た。
シーリアは、泣き叫んだ。
ウルフリックも、ルイも、ロナも、泣いた・・・。
おれは、、みんなの顔が見れなかった・・・。
アンナ
シルフィリアちゃんの葬式には、本当に色んな人が来ていた。
政界の人や財閥の人も居たかもしれない。
テオから聞いた医者も・・・。その人は責任をすごく感じていた。
あの時に自分がちゃんと針を処理していればって・・・。
ジェシー
そしてこれは、ルイから聞いた話。
その医者は免許こそもっていたけれど、そっちの世界での評判は良くは無いみたいだった。
正確に言えば、爪弾き者。
自分で開発したワクチンを病気の人に打っていた。
だけど、人を治したいという思いは本物だった。
患者も、それを承知の上で医者の所に通っていたみたい。
だからシルフィリアおねぇちゃんは場所を貸していたんだって。
マリー
一体シルフィリアちゃんが、どんな世界で生きていて、どんな人脈を持っていたのかはわからない。
生まれた場所も、どんな風に育ったのかも知らない。確かなのは、これだけの人脈とそれだけ慕われる生き方をしていたということだけ・・・。
私達が思っているよりも、ずっと、あの娘はすごい娘だったのだろう。
彼
「葬式もすんだし・・・これで終わったな」
テオ
「本当に、冷静だね・・・」
彼
「自分でも驚いてるな」
テオ
「人を殺したことがあると、感じ方も変わるのかな」
彼
「あ?・・・さぁなぁ」
テオ
「今のは、殴ってもいいと思うよ」
彼
「そんなの散々いわれたからな、慣れてきたよ」
テオ
「ごめん。たださ、悲しいときって、さ・・・。強ければ、こんな気持ちにならないですむのかなって・・・」
彼
「それは、強さなのか?」
テオ
「わかんないや」
彼
「・・・ほれ、悲しい時は泣けよ」
テオ
「っ・・・子ども扱い、するなよ」
彼
「実際、ガキだろうが」
テオ
「・・・やっぱり、泣けないや」
彼
「そっか・・・」
テオ
「みんなが来るまで、シルフィリアさんと二人で居たんだよね?ずるいや」
彼
「あぁ・・・でもな、フラれちまったよ」
テオ
「そっか、じゃ、仲間だね」
彼
「なんだ?お前も告ったのか?あぁ、あん時か・・・。まぁ、好きなんだろうとは思ってたけどな・・・。んじゃ、フラれた者同士、仲良く二人で呑むか?」
テオ
「おれ、まだ子供だよ?おじさん」
彼
「わかってるよ、だからみんなには内緒な?・・・それにアルコール度数は低いやつだ、まぁ、付き合えよ」
テオ
「でさ、無理やりキスしちゃった・・・」
彼
「ああぁ?無理やりだぁ?そいつはいけねーな!」
テオ
「あだっ!・・・勢いで・・・さ」
彼
「ったく・・・っと、そうだ」
テオ
「どうしたの?」
彼
「ほれ、これ、お前に渡しておくぜ」
テオ
「これ、シルフィリアさんのワイン?」
彼
「ああ、まだワインの味なんてわかんねーだろ?・・・分かるようになったら呑んで見ろ、美味いぜ」
テオ
「・・・うん」
彼
「ま、いまはこの酒で我慢しろ、ほれ、もっと呑め!」
テオ
「うぅ~、なんだか、フラフラしてきた・・・」
彼
「ははっ!酔ったのか?ほーれ、あーんしろ、食わせてやるよ~」
テオ
「こ、子ども扱いしゅるなよな!」
彼
「げひゃひゃ!噛んでやんの!しゅる~だって、可愛いね~!」
テオ
「う、うるしゃいな!!」
彼
「ははっ!・・・ま、もう普通の飲みもんにしたほうがいいな」
テオ
「・・・お母さんみたいだったんだ、シルフィリアさん・・・」
彼
「そんなものかもな、男は母親に恋をする、女は父親に恋をする。ま、円満な家庭なら、だけどな」
テオ
「おれ、母さんのこと良く知らないから・・・」
彼
「俺は、親父をまったくしらねーな」
テオ
「やっぱり、似てるね、おれたち」
彼
「はっ!・・・ふぅ、そうだな」
テオ
「・・・悲しいね」
彼
「そうだな」
テオ
「・・・おれが、悪いのかな・・・」
彼
「あん?」
テオ
「シルフィリアさんの所に、逃げ込まなければ・・・」
彼
「お前のせいなんかじゃねー・・・ん?」
テオ
「どうしたの?」
彼
「いま、窓に人影が・・・っ!」
テオ
「お、おじさん!」
彼
「くそっ!やっぱりだ、覗いてやがったあいつ!」
テオ
「と、とうさん!?」
彼
「ああ、まちがいねー!追いかけるぞ!」
ユライプ
「ひっ!!」
彼
「追いついたぞ、こら!」
ユライプ
「テオ、あぁ、テオ・・・そんな危険そうな奴といないで、私と、、なぁ、テオっ!」
テオ
「っ!・・・も、もうやめてよ!父さん!」
ユライプ
「だめじゃないか、、テオ、、父さんの言うこと聞かないと、、だめだろぉおお!!」
彼
「っ!この野郎!?っ、父親なら、父親ならなぁ!!」
ユライプ
「ヒッ!!・・・ぐあっ!」
彼
「もっと、息子を見てやれよ!?愛してやれよ!!」
ユライプ
「グっ!・・・がっ!・・・」
テオ
「もう、もういいよ!おじさん、父さんが死んじゃうよ!!」
彼
「ちっ、しょうがねぇなぁ」
ユライプ
「・・・アイシテイル、トモ・・・アイシテ、あい・・・」
テオ
何かをつぶやきながら、父さんは、ゆっくりと立ち上がった。
・・・破裂するような、乾いた音がした・・・。
彼
「あ?・・・っ・・・」
ユライプ
「愛しているとも、愛して、アイして・・なぁ、テオ・・・」
テオ
「とう、、さん・・・」
ユライプ
「あひゃ・・・ヒッ、、ヒヒャヒャヒャァァアアアーーー!!」
テオ
「と、とうさんっ!!・・・っ!お、おじさん、大丈夫!?」
彼
「へへ、撃たれ、ちまったよ・・・。あちゃー、こりゃ駄目かも、な・・・」
テオ
「だ、大丈夫だよ、駄目なんかじゃないよ!」
彼
「ちっ・・・あいつと同じところだ・・・因果応報って、やつ、かね・・・」
テオ
「アーランドっ!!駄目だよ、すぐに、すぐに救急車呼ぶから!だから!」
彼
「あっち、では、あいつが、待っててくれてるだろうからな、、お前より、先に、モーション、かけ、とく、ぜ・・・」
テオ
「兄さんっ!兄さ・・・っ・・・。なんでみんな・・・こんなの・・・。おれ、なにか悪い事したのかよ・・・なんっ!?」
テオ
父さんが走っていった方から、続けざまに、さっきと同じ音がした・・・。
銃声を聞いて駆けつけた警官隊に、父さんが撃たれた音だった・・・。
マリー
警察から、連絡があって、テオが連れて来られた・・・。
ボブ
「あいつは、どうなったんだ?」
マリー
「その場で、死亡が確認されたって・・・」
ボブ
「マジかよ・・・っ!テオは・・・どうした?」
アンナ
「こっちに、いるよ」
ジェシー
「けど・・・」
テオ
「ボク、ガ、イキ、てる、から・・・」
マリー
テオの心は壊れてしまっていた。父親、初恋の人、そして、兄弟の様になった親友を一度に失って・・・。
テオ
「イラ、ナイ、コ・・・ナ・・ン・・ダ」
アンナ
言葉もうまく喋れなくなった。
テオ
「ボク・・・ガ・・・ダカラ・・・イタインダ・・・ツラインダ・・・」
ボブ
あいつは、縛りつけてでもおかないと、フラフラと歩いて行っては高い場所を探して飛び降りようとした。
俺達がギリギリで見つけて捕まえたり、そうでなくても、ここにいる仲間達や、みつけた奴が通報してくれたり、止めたりしたお陰で助かっていた。
それを止めるために部屋に閉じこめて見張っていたらいたで、舌を噛み千切ろうとするわ、ガラスを割って首を掻き切ろうとするわ・・・。
その度に、俺達は力ずくで止めていた。
アンナ
最初は、力ずくで止めると、急に元気が無くなって、座り込んで大人しくなっていた。
けど、、すこし言葉が戻ってきた頃から、思いっきり抵抗して暴れるようになった。
ジェシー
それからも付きっきりの日々が続いた。小さな世界のみんなも手伝ってくれたりするけど・・・。
暴れて怪我人が出ることもあった。
テオを殴りつける人まで出てきて、精神状態が不安定になってしまう人も居た。
マリーはそんな人たちには自分の事を考えてと言ってテオから離れさせた。
ジョシュア
「・・・しばらくボク達は休業、かな」
マリア
「そうね、テオが良くなるまで、見てなくちゃ」
マリー
「ええ、お願い。病院にも連れて行かないといけないかもしれないわね」
アンナ
「・・・きっと、監禁病棟に入れられちゃうよ」
ジェシー
「そうね、けど、そうでもしないと・・・」
マリー
「みんなの意見は?」
ボブ
「俺は・・・ここで見るほうがいいと思うぜ」
アンナ
「わたしも、そう思う」
ジェシー
「・・・簡単じゃないわよ?わかってる?」
アンナ
「でもさ、嫌だよ・・・私なら、嫌だよ・・・」
ボブ
「俺だって、嫌だぜ」
ジェシー
「何かあったら、どうするの?」
マリー
「・・・そうならないように、見張っておきましょう、交代で・・・」
ジェシー
「手、縛ったりしたほうがいいわよ」
アンナ
「ジェシー!・・・そんなの駄目だよ」
ジェシー
「アンナ、今までのテオを見たでしょ?」
アンナ
「そう、だけど、さ」
ボブ
「・・・いや、確かにそのほうがいいかも知れねぇな・・・暴れられた時とかよ、俺ならいいけど、お前達じゃ危ないだろ?」
マリー
「・・・気が進まないけれど、そうね」
マリア
「かわいそう・・・」
ジョシュア
「今のテオは動物みたいなものだよ、猛獣は縛り付けておかないと」
マリア
「兄様、動物は言いすぎよ」
ボブ
「俺達も、暫くは休業かもな」
ジェシー
「そうね」
アンナ
「うん」
マリー
「・・・あなた達にはしてほしい事があるのよ」
ボブ
「お、なんだ?」
マリー
「シルフィリアちゃんの住んでた家のことなんだけれど」
ジェシー
「あの家ね」
マリー
「ええ、引き取り手が居ないから競売にかけられるかもって・・・だから、私達が引き取ろうかって思ってるのよ」
ボブ
「なるほどな、白亜の家、か。そういえば、子供達はどうしたんだ?」
マリー
「・・・ここには子供が少ないから、前に話した通りに、子供を引き取ろうかとも思ったの・・・けど、駄目だったわ」
アンナ
「じゃあ、別の施設に・・・?」
マリー
「ええ・・・だから、その子達が戻ってこられるように、大きくなったら、戻ってこられるように、しておきたいのよ」
ボブ
「はぁ、面倒を少し見たくらいじゃ、ダメってことか」
マリー
「そうね、ちゃんとした孤児院じゃないからって・・・。シルフィリアちゃんと、約束、したのに・・・」
ボブ
「お前が思いつめることじゃねーよ・・・それにその新しい所も、シルフィリアの奴が頼んでおいたんじゃねーか?」
マリー
「ええ、そうね、そうよね・・・」
ジェシー
「家は、なんとかなったのよね?・・・それなら、いいじゃない。それこそ、歌を歌ったりするのに使えるでしょうし」
ボブ
「そうだな。まぁ、使い方は後で別に、考えるとして・・・俺達も数える程度しかいってねぇからなぁ・・・。荒れてるのか?」
マリー
「いいえ、全然・・・ただ、ブドウ畑とかワインを作る道具とかあるらしいのよ」
ボブ
「ワイン、、そりゃまたすごいな・・・」
ジェシー
「ボブも呑んだでしょ?」
ボブ
「え?あぁ、、もしかして、あんときに飯と一緒に出てたワインがそうか!」
アンナ
「そうだよ」
ボブ
「普通に市販されてるワインかとばかり思ってたぜ」
ジェシー
「美味しかったものね・・・ていうか、ボブ、あなた、地下室とか行かなかったの?」
ボブ
「あ、ああ、子供のこと見るので、手一杯でな」
アンナ
「え?そんなに手のかかるような子達じゃなかったはずだけど?」
ジェシー
「そうよね、それに他のお手伝いの人も来ていたでしょ?時間は作れたはずだけれど?」
ボブ
「いや、意外と、そのな・・・。遊んでくれって言われてよ、ギターも教えてたし・・・。それに結構、やり込められたぜ・・・」
ジェシー
「・・・親とか大人、とかじゃなくて、同じ子供仲間だと思われてたんじゃない?」
ボブ
「まぁ、それでも別に良いけどよ」
マリー
「・・・si vales valeo(シー・ウァレース・ウァレオー)それがワインの名前よ」
ボブ
「ラテン語だな・・・あなたの幸せこそが私の幸せ、か」
アンナ
「なんだか、あの娘らしいのかも」
ジェシー
「かも、じゃないわ・・・あの娘らしいのよ」
アンナ
「うん、そうだね・・・お葬式のときも、沢山の人が来てたもんね」
ロゼット
「もしもし、ロゼットです。ご無沙汰してます」
マリー
「ぁぁ・・・ロゼットちゃん・・・」
ロゼット
「どうかしたんですか・・・?すごく、その、疲れた感じがしてます、けど」
マリー
「そう、ごめんなさいね。・・・いまちょっと大変なの。だから、インタビューは暫くは無理よ」
ロゼット
「そう、なんですか・・・。あの、なにかあったんですか?・・・あっ!すいません、私ったら!」
マリー
「いいのよ・・・じゃあ、すこし、話を聞いてくれる?」
ロゼット
疲れた声をしたマリーさんから、話を聞いた。
きっと、マリーさんからこういう話をすることは滅多にないんだと思う・・・。
テオ君という少年にあった出来事・・・それをきいた。
マリー
「そういうわけなの、だから、ごめんなさいね」
ロゼット
「いえ!こちらこそすいません・・・」
マリー
「いいのよ、聞いてくれてありがとう」
ロゼット
「・・・あの、その、撃たれた人って、、もしかして・・・」
ロゼット
私は思い出したように、あの時にすれ違った、二人のことを聞いてみる。
マリー
「ええ、その子がそうよ」
ロゼット
「あの、一緒にいた・・・人の、名前って・・・なんていうんですか?」
マリー
「・・・アーランドよ」
ロゼット
「その人・・・わたしのっ・・・」
マリー
「どうしたの?」
ロゼット
「きっと、そうです。私のスクールのときの、初恋の人・・・名前が同じ・・・」
マリー
「・・・そう、あの時のインタビューの内容は、ボブ達から聞いたわ・・・そう、だったのね」
ロゼット
「・・・はい、おかしいな、ニュースとかでみたはずなのに・・・」
マリー
「大きな記事には、なってないもの・・・」
ロゼット
「です、ね・・・。あの、彼は、彼は・・・っ」
マリー
「素晴らしい人だったわ、ええ・・・とても・・・私達にとっても、そして、あの子にとってはもっと、もっと・・・」
ロゼット
それから、少しだけ話をして、マリーさんとの電話を切った。
その後、うずくまる様にベットに入った・・・。
ロゼット
「私の初恋の人は、一人の少年のヒーロになって、逝きました」
ロゼット
「物語的・・・すぎるよ、だけど、こんなの・・・っ・・・・うわぁぁああああああああんん!!!!」
ロゼット
私は声を上げて泣いた・・・初恋なんて、ずっと昔の話なのに・・・。
なのに、なのに・・・涙が溢れて止まらなかった・・・。
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よし!フラグを回収したぞ!…的な感じである。
基本的に…なんだ…”生”だけでなく”死”まで書きたい人間であるからして…そしてそのキャラがどのような奴なのかを知りえないと…生死で感情も揺さぶられることはない。
ある意味…優性思想よりも、残酷である。能力があろうがなかろうが、何も知らない奴が生きようが死のうがどうでもよいこと、であるのだから。
ゆえに…無骨でもいいから、そのキャラがどんなキャラなのか…?それがわかるようにしたいと常々思っている。
…こんな姿なのかな?とか…あのアニメのキャラみたいな声なら合いそうとか、この声優やこんな感じの声が”聞こえた”とか…そういったものが浮かぶといいなーと思う…が、代わりに情景描写はマジで苦手である。
誰でも無料でお返事をすることが出来ます。
お返事がもらえると小瓶主さんはすごくうれしいと思います
▶ お返事の注意事項