雪が、降った。寒くはなかった。寒くは無いけど、人の温度を探した。

雪が降った
冷たくて、でも不思議と寒くは無い

雪が降った
白くて、でも見た目ほど綺麗では無い

雪が降った
積もることは無い地域で、こんこんと

雪が降った
雪が降って、風が吹いて、日が曇った

雪が降った

涙が出た。
不思議と嬉しかった。
雪が見れて、嬉しかった。
綺麗だと思った。
真っ白を落とす灰色に包まれた世界。
美しくて、とても綺麗だった。
独りだと、思った。
この世界に1人のように感じる。
目の前には人が沢山いるのに。
モールに入ればそれはもう見えないのに。
雪が降った時にだけ感じる。
この不思議な気持ちが好きだ。

一人でも、唯一その時だけは。
寂しくない瞬間だから。

世界は見た目ほど綺麗じゃない。
だから、汚いそれを綺麗だと思った。

寒くはなかった。
もう、ずっと寒いから。
寒いなんて分からないから。


温めて欲しいなんて、
暖かさを知らないから、
願って止まない人の温度は

どんなに暖かいんだろう。

想像するだけで、
離れた温度に寒くなる。


雪が降った。
雨が降った。
息を吐けば白くなるほど寒いらしい。

僕は不思議と寒くなかった。
世界に溶け込んだ錯覚を持つ。
冷たい手も、足も。
冷えきった体も、心も。

その時だけは、嫌じゃないから。

どれだけ暖かいのだろう。
でもそうすれば、私の冷たいが移って
その人は寒くなるのかな。

風邪をひかせてしまうのかな。
ああでも、風邪を引けばいいなんて。
思っちゃいけないのに。

熱くなった体温を、
僕の冷たい手で冷やしてあげたい。
なんて、







雪が降っている。
こんこんと、チラチラと、
舞うように、落ちていく。
白くて透明で黒いそれ。


雪が、降ったんだ。