広大で強力な内面世界

制作関係の海外イベントで現地入りしたとき、会場で同業者とあれこれお喋りするのがとても楽しみ。
オーストラリアでのイベントに出席した際には、日本からのゲストが非常に珍しいということで、滞在中、イベント主催者がずっとエスコートしてくれた。
その時話したことで、とても強く印象に残っているのが、”introvert”、つまり、内向的という言葉の意味について。
私が、自分は、内向的だが社交家というような話をしていて、
「それは矛盾しない」
と先方が言い出したのがきっかけだった。
「内向的というのは、人見知りとかシャイというより、広大で強力な内面世界を持っている人に使う言葉だよ」
とのことだった。

「広大で強力な内面世界」
これで思い出したのが、ロマン・ロランの
「自分の軍隊」
という言葉。
音楽家のジャン・クリストフが、意地悪で冷笑的で俗な世界に打って出るときに、
「彼は一人ではなく、内面に自分の軍隊を従えていた」
というような文脈で使われた言葉だ。

ああ、そう言われてみれば、確かに私は、「自分の軍隊」を持っているな。
それも、記憶にないくらい大昔から。
そんな風に、妙に腑に落ちた。

逆に、「自分の軍隊」なしで生きている人は、心許なくて大変だろうと思う。
多分、「内面世界」を全く持たずに生きている人は殆どいないだろう。
ただ、それを「広大、強力」なもの、つまり、「自分の軍隊」と呼べるほどのものになるまで育て上げることが出来るかどうか。
それは、多分に、周りからの影響によるのではないかと思う。
親であれ先生であれ、本当に優れた指導者というのは、各自の「内面世界」に目を向けさせ、そこをコツコツ耕し育てて、生涯にわたって自分を支えてくれる何かに鍛え上げるよう、方向付けが出来る人なのかもしれない。