長くなります。すみません
大好きなお兄ちゃんの話です
父さんの声はいつも大きくて
酒臭くて、怖かった。
お父さんが怒鳴り始めたらすぐに誰かが殴られた。それは2つ上のお兄ちゃん。
おとなしくて、優しくて、頭のいいお兄ちゃん。身長の小さいお兄ちゃんはガードも出来ないでサンドバッグになっていて、それでも私にはいつも笑顔だった
でも知ってた。歯を食いしばって、ガタガタ震えながら泣いてたこと。
「今は辛いけど、我慢してくれ。今の俺には、お前を養ってやる金もの力もないから。バイトが出来る歳になったら、バイトの掛け持ちしてお前を養ってやる。ちゃんといい高校にも行かしてやる。親父がこんなんだと友達に知られたくないだろう?大丈夫。兄ちゃんが守るから」
殴られてもない私が怯えて泣くたびにお兄ちゃんが言ってた。
勉強をしながら近所のオヤジさん達のお手伝いをして、高校に行くお金のたしにして、安い高校に行った。かなりのヤンキー校。
学校終わったらバイト。帰って来たら私を近所のオヤジさんに預けてまたバイト。
勿論オヤジさんは虐待に気づいてお兄ちゃんを責め立てた。何故言わなかったと
「妹の人生に汚点を作りたくないからだ」
寝たふりして泣いたよ。お父さんがアル中のろくでなしでもよかったのに。バレてもよかったのに。
…………お兄ちゃんが倒れた
がくって崩れ落ちるように倒れた。
パニックをおこしてオヤジさんのところに助けを求めに行って家に戻ると、お兄ちゃんはいなかった。 バイトに行って来ます
私はお兄ちゃんのおかげで高校に受かった。お兄ちゃんは友達と一緒にお祝いもしてくれた。
そして日曜日の夜中、やっとお父さんが死んだ。最低だけど、嬉しかった。最後に言った言葉は「目付き悪くなったな。何泣いてんだよお前は」最後までろくでなし。
でもお兄ちゃんは違った。ハハハと笑い声を上げ泣いていた。最後に隣にいたのはお兄ちゃんで、私が着いた頃には布が被せられてた。
私は1滴も涙が出なかったけど、お兄ちゃんは支えられないと立ってられないくらい泣いてて、友達に支えられて家に帰ってずっと部屋で泣いてた。お兄ちゃんの友達が「お兄ちゃんは、まだまともだった頃のお父さんをよく覚えてたから」と
泣き疲れて寝てしまったお兄ちゃんの体を、お湯で濡れたタオルで拭きながら教えてくれた 。とても元ヤンとは思えない優しさ
まだ残る痣を撫でて、よく頑張ったなって呟いた。
お兄ちゃん。これからは、自分のために生きてね。絶対幸せになって
今度は私が支えるから。