あれは、たしか中学生のころ
安心したことが ありました
ぼくにとっては そこそこの
衝撃的なできごと
皆が隣室に集まって
ぼくはひとり テーブルの角の椅子に座ってた
いまでもあざやかに思い出せる
オレンジ色のけしき
たかだか数十秒
だけど安らぎを知るにはじゅうぶん
人は ほっとすると、こうなるのか
と 新しいせかいは
きれいだった
運よく 辿り着いた場所は
二度と行けないと思って
とびらの前で
立ちすくんで
忘れちゃだめだと
それを見つめて
あまりにも 唐突な安らぎは
まだ ぼくには眩しすぎて
明日また死のうと その時決めた
あれから幾つか歳を重ねて
少し こころが荒んだかも知れない
あのけしきに触れることがあっても
きっと 通り過ぎるだろう
いつでもそれは そこにある
今いる せかいと交差する
それだけで もうじゅうぶん
ぼくは 此処にいるのです
Hatose