小学校の頃の話。私は忘れ物とか怪我が他の子より少し多かったけど、いたって普通の子どもだった。
友達は広く浅く。人気者じゃなかったけど嫌われてもなかった。
私がいるクラスの担任の先生は女の人で、みんなからすごく慕われていた。でも、産休に入ってしまったとかで別の男の先生が担任になった。
そこからクラスは少しずつ変わっていった。
たしかに、今思うと新しい担任の先生はちょっと挙動不審だったかもしれない。でも、だからって先生にあんなことをするなんて。
はじめは、出席をとるときの返事だった。クラスのボス的な存在の男の子。先生に名前を呼ばれたのに返事をしなかった。
先生は何度か呼んだけど、しばらくしたらあきらめて次の子の名前を呼んだ。
その次の日。クラスのほとんどの子が返事をしなくなった。教室がしーんとしたあとに小さい笑い声が聞こえた。
先生へのいじめが始まった。先生に投げる消しゴムをみんなから集めて笑う女子。先生がくる前に黒板に先生への悪口を書く男子。
消しゴムを投げられたとき、教室の黒板に自分への悪口がいっぱい書いてあったのをみつけたとき、それを生徒の前で消したとき、どんな気持ちだったんだろう。
私も加害者だ。消しゴムを先生に投げるからちょうだいと言う女子に消しゴムを渡した。いやだって言ったら私もいじめられると思った。
結局、その先生はすぐにやめてしまってそのあとは厳しくて怖い先生が来た。みんなすぐにおとなしくなった。
私は先生のこと、なにひとつ救えなかった。一度だけ、先生にがんばってねって言ったことがある。先生はありがとうって笑ったけど、言われなくてもがんばってたから余計な言葉だっただろう。
先生ごめんね。顔合わせる前からクラスみんなの名前と顔、おぼえてくれてたのに。卑怯でごめんね。弱くて向き合えなくてごめんね。