会いたくなかったやつに会った。
この世で一番、再会したくなかった。
そいつは気軽に声をかけてきた。
「覚えてる?Yだよ」
一緒にいた私の母親は事情を知っているし、私以上に嫌っていたからガン無視。
「この辺りに住んでいるの?」
だって?
昔、あんたが私と友達やめたいって言ってきたあとにも平然と家にきたじゃない。
で、思った。
「(まだ結婚もしないで)この辺りに住んでいるの」
だったら意味が通じるな、と。
昔と変わらない、あの気軽さが妙に感じ悪く、
「…まあ…」
と答えるのに精一杯だった。
そのまま歩き出した母親の後ろに続いて歩き出して背中を向けたら、
「またね」
だって。
そのとき思った。
やっぱり、懺悔の手紙で私が許したと思ったわけだ。
懺悔の手紙には、高校に上がってからいじめを受けて、やっと気持ちが分かったとあった。
近所で私と母親が歩いているのを見て、声をかけられなかったとあった。
…だから、なんなのだろう?
確かに読み、そしてビリビリに破り捨てた。
いじめを受けている私といたら、自分もいじめに遭うと言って離れたそいつ。
学校では無視。
そのくせ学校外では平然と友達面してきたよな。
その態度に母親はキレていたんだ。
そのあたりがちっとも変わっていなかった。
…こいつにとっては、過ぎ去った話なんだな…
確かに最後にいじめを受けてから20年が過ぎた。
こいつからの最後の電話も成人式の日。15年前だ。
今さら中学時代を引きずる私が悪いのかもしれない。
大人げないのかもしれない。
それでも、時折当時が甦って、今でも怯えて泣くことがある。
眠れなくなるほどに…
自分の体を小さく丸めて、声を殺して、夜中に泣くんだよ。
お前にその気持ちは分からないだろうな。
私はずっと、当時の人間全てに対して、一つを思っている。
二度と私の人生に介入しないでほしい。
許すとか思わないけれど、介入しないならこれ以上何もしない。
けれど、もしまた私の人生に介入してくるのなら…
……殺すかもしれない……