伯父から聞いたあったかい話。
伯父が若い頃、結婚前提の彼女の両親に挨拶に行った。
伯父は学生時代にもらい事故で、右手の手首と指が少し曲がってしまっていた。
だから、元々右利きだったけど、左手で字を書いたり、作業が出来るように練習した。
それでも日常生活で度々、少し困る時があった。
彼女は気にしないと言ってくれたけど、ご両親には苦い顔されるかもしれないと、内心びくびくしていた。
彼女の家に着いて、自己紹介が終わった後で、お父さんが便箋を出してきた。
「お名前を書いていただけますか」
わけがわからないまま、伯父は左手で自分の名前を書く。
するとお父さんも、その隣に、左手で自分の名前を書いた。
伯父は綺麗な字。
お父さんは右利きだから、左手で書いた字は歪んでいて下手。
それを見ながら、お父さんに
「私は利き手じゃない方で、こんな綺麗な字は書けません」
「あなたが左手で、その字をかけるまでになる努力は、私達には推し量れません」
「あなたの努力を、今後はちゃんと支えるように、娘によく言っておきます」
と言われたそうだ。
それから結婚して、30年。
未だに毎年、夫婦の間では度々この話題が出るらしい。
伯父が号泣してしばらく動けなかったとか、お母さんの方が「うちの娘の困った所」をげらげら笑いながら上げたとか、そういう付属エピソードと一緒に。
伯父はあからさまに奇怪な目で見られることばかりだったから、その言葉に救われたし、確かに伯母を育てた人だととても感動したそうだ。
ちなみに、もう1人の伯父の方は挨拶に行ったら既にヤケ酒していた彼女のお父さんに「殴られるか駆け落ちか選べ!」と言われ、腹をくくって「何発でも!」と答えたら「何でだよ~そう言われると殴りづらいだろ~」と泣かれたらしい…どうすればいいか途方にくれたと…
お父さんは偉大だ!