ストレートな言葉より、オブラートに包まれた言葉の方が傷つくこともある
居場所なんて、人間の数だけあるハズなんだ
それこそ星の数にも匹敵するほどに
そう笑って背中を押す笑顔が眩しかった
空いてある席は確かにある
それこそ歩き回った分だけ空席を見付けることができるくらい
だけど、誰のものでもないハズの椅子に座る権利があるかは別問題だ
あなたは若いから、他の人に譲りなさい
まだまだ探す時間も体力もあるでしょう?
こっちの席には先約がいるんだ
あそこの席の方があなたには合っているわ
だからこの席にあなたを座らせるわけにはいかないの
それならハッキリと言ってほしかった
ギプスを引きずった時も、お腹を押さえて耐えた時も、汗だくで眩暈と戦っていた時も
誰もが遠巻きに眉をしかめるだけで拒絶する
拒絶されるだけなら良いんだ
ここにはあなたの座る場所はないんだ、と断られるだけなら仕方がないと諦められる
だけど、座っていいよ、隣においでよ、ここに空席があるよってトントン手招きしながら
思っていた人と違う、若いんだから我慢しなさい、呼んでいたのはあなたじゃないのって拒絶するのは意地悪だと思うんだ
怪我をして立っているだけでも痛いと言ってもリハビリだと思えば頑張れるよ
具合が悪くて辛いんだと伝えてもお大事に
一言、良いこと言ったと私の肩を叩くその手が重かった
邪魔だと押しのけられた時以上の虚無感が苦しかった
居場所があるよと笑顔で呼ぶ人は確かに人の数だけ、星の数だけいるのだろう
だけど、そこに座れる権利を持っている人も星の数かと聞かれれば、答えはノーだろう
座らせてくださいと伝えても、ダメだと言われる人もいるんだ
弱肉強食は仕方がないにしても、あなたにはまだまだ違う可能性があるんだと蹴り出す人の笑顔は、すごく痛かった…