夏休みになると、母に言われた一言を思い出す
私の家は、毎年家族旅行するのが恒例だった
行くところは毎年同じ県だけど、遊園地や牧場、色んな博物館とか‥とにかくたくさんあって、いつも楽しめた、私は。
私はそこが大好きで、帰るときに泣いちゃうくらい本当に大好きだった
でもある年を境に行かなくなった
母にある一言を言われた次の年からだ
いつものようにリュックにお菓子を詰めて、自前でしおりを作っちゃうくらい旅行を楽しみにしてる私
旅行の前日に母はこう言った
楽しみにしてるのあんただけだよ
そう言った
びっくりするくらいに悲しかったのを覚えてるし、一人で泣いたのも覚えてる
必死に考えて作った自前のしおりを破り捨てるくらい悲しかった
その年の旅行、私は楽しめなかった気がする
大好きな地に行けて嬉しかった気持ちと皆どんな気持ちなんだろう?って不安な気持ち
そんな気持ちが入り交じってて、複雑だった
その次の年、いつものように父と兄は、今年も行こうって言っていた
母はなんて言ってたか覚えていない
でも、はっきり覚えてる
私は、行きたくないって言った
本当は行きたかったけど、行きたくなかった
なんでそう言ったのかいまいちわからない
行きたかったけど行きたくなかった
それから数年、何度も行こうって話になったけど行くことはなかった
そしていつのときからか、行こうって話が挙がることはなかった
私はいつだって、あの一言を思い出してしまうから
夏休みになると思い出してしまうから
今考えてみれば、あのころの母は大変だった
父方の両親の介護
祖母の介護が終わったと思ったら、祖父の介護が始まり
介護中の祖父を置いて家を空けることに、親戚に何か言われていたのかもしれない
もしかしたら、そんな状況だったからあの一言を言ったのかもしれない
そう考えれば、最悪なのは私だと思う
酷いのは私だと思う
自分ばっかり被害者ヅラして、今でもあの一言を思い出す
たまにまた行きたいなって思ってしまう
また行きたい
行きたくなる