女に生まれればよかったと、思うことがたくさんある。今だってそう。
別に女だろうが男だろうが、生きていて辛いことはたくさんあるだろう。
でも俺が女だったら、好きなあいつに思いを伝えられるじゃないか。
別に同性愛者だって普通なんだから思いを伝えればいいとか、堂々としていればいいとか、綺麗事はたくさんだ。
結局、同性愛者なんて、結婚もできないし、里親になることも難しいし、同性間の性行為をした人は献血ルームでも差別される(差別でなく合理的な理由だという人もいるけど、同性間だろうが異性間だろうが性行為のリスクはあるんだよね・・・リスク回避ならセクシャリティに関わらず、直近に性行為した者全てを禁止しないと意味がない気がする)。それなのに、同性愛を異性愛に変更する術はなく、研究も打ち切られてしまったらしい。「同性愛は病気じゃないので治療は不要」ってさ・・・あの、希望者いるんですけど、みたいな・・・
八方塞がりだよね。
結局、綺麗事いって、建前だけ恰好つけて、でも現実は社会から締め出している。だから俺はカミングアウトする気はない。
こんな社会の中で、俺ら同性愛者が人を好きになるって、どういうことか。思いを伝えるとか、相思相愛とか、周囲からの応援とか祝福とか、まして結婚だなんて、そんなだいそれた希望は持っていない。
別に結ばれなくていい。ただ、あいつが元気でいてほしい。もしできたら、そばにいてほしい、別に恋人でなくていいから、ただの知り合いだとしても、少しでも、近くに。友達としてたまに少しでも遊んでくれれば最上の喜びだよ。話しかけてくうれるだけで、うれしいんだから。たとえあいつが他の誰かと付き合ったり、結婚したりしても、それは自分の幸せ、ってくらい。まあ、辛くないといえば嘘になるけど。
それでも、こんな絶望的な運命をもちつつも俺は負けたくない。
俺の目標は、性別を超えて生きること。男だからこうしようとか、女に生まれればよかったとか、そんな考えに支配されるのではなく。男でも女でもなく、ただ一人の人間として、夢を叶えたい。そして、同じような苦しみや、別の苦しみをもつ人を、救いたい。そういう人に、俺はなりたい。
恋愛はする気はない。ゲイっぽいとかなんやら怪しまれることも多い。でも、無理矢理にでも受け流して、素知らぬ顔で生きていく。誰も俺のセクシャリティを暴く権利なんてない。
ずっと、苦しみながら、闇の中を生きていくのだと思う。それでも夢があって、片想いだけどあいつがいて、俺は生きていてよかったと思う。