これは失恋と、呼ぶのだろうか。
わたしは既婚者だった。
2個上の旦那と、1歳の息子と暮らしていた。
当時、わたしはボロボロだった。
連日の仕事による睡眠不足、
どんなにこなしても慣れない家事、
上手くいかない子育て、職場での人間関係。
そして旦那からの度重なる暴言、酷い暴力。
全てに疲れていた。
誰でもいいから、
誰かに肯定して欲しかった。
あなたは頑張ってるよって頭を撫でて欲しかった。
本当に誰でもよかった。
疲れ切っていた。
そんな時、ひょんなことから始まった
彼とのLINEのやりとりは
日々の生活を彩ってくれた。
毎日続く他愛もない会話。
次第に電話もするようになり、
いつしか軽い冗談を言い合う仲に。
不思議だった。
だって、幼稚園の頃から知ってるのに
わたしは彼の好きな食べ物も
好きな音楽も、好きな女の子のタイプも
なんにも知らなかったのだ。
正直、後悔した。
なんでこんな素敵な人、放っておいたんだろう。
なんでちゃんと話そうとしなかったんだろう。
もっと早く知れていたら、
もっと早く仲良くなれてたら
いまのわたしは、幸せだったかもしれないのに。
そんな後悔が何度も頭をよぎった。
だけどわたしは、結局。
誰でもよかったのだとおもう。
だから彼をぞんざいに扱ってしまった。
好きだと伝えてくれる彼の真っ直ぐな目を見ようともせず、気持ちを踏みにじった。
弱かった、本当に。
わたしは
いつの間にか彼のことを、
自分を満たしてくれるだけの存在だと
勘違いしてしまっていたんだと思う。
だから離れていった時動揺した。
なんで、あれ、あの言葉は嘘だったの
支えるよって言ったのは 嘘だったの
なんで、どうして
そればかりがぐるぐるとあたまを駆け巡った。
彼がいなきゃ壊れてしまいそうだった。
彼の言葉に本当に救われていた。
誰かがいないと、1人で立てなかった。
彼は、そんなわたしに見切りをつけた。
離れていったならそれでいいのに。
追いかける必要も、追いかける権利も
わたしには無いのに。
誰でもよかったんだもの、
次の人を見つければいい。
なのに
彼の存在はわたしから消えてくれない。
彼女が出来たと風の噂で聞いた。
それでもまだどこか期待している自分が憎い。
こんなわたしを
好き だと言ってくれた彼の目をみなかったこと
支えてくれるばかりで一切弱音を吐かずにわたしを常に肯定してくれたこと
自信もプライドもなかったわたしに
想いを伝え続けてくれてたこと
踏み出す勇気をくれたこと
感謝と、後悔がずっとわたしを
彼から離してくれない。
「匂いを嗅ぐと安心する」
わたしの肩に顔をうずめながらそう言われたのが忘れられなくて
香水は、しばらく変えられなさそう。
そのメイク可愛いね、色っぽい
照れたように褒めてくれた彼の、
少しはにかんだ顔が忘れられなくて
最近は毎日このメイク。
「そのままでいいんだよ」
そう言ってくれたのが泣くほど嬉しくて、
自分に自信がなくなった時はいつも思い出してしまう。
わたしは、彼の事をちゃんと、こころから
好きだったのだろうか。
でも彼と出会う前のわたしは知らなかった。
歩幅を合わせてくれる事が、
かわいいと褒められることが、
会う度に好きを実感させてくれることが
こんなにも幸せだなんて、知らなかった。
いつかまた、誰かのことを好きになれたら。
今度こそは気持ちを踏みにじったり
適当に扱ったりせずに
ちゃんと向き合って、目を見て、
気持ちを伝えようと思う。
幸せだった。
このひと夏の夢みたいな毎日は
実は幻だったんじゃないかと
彼の笑顔を思い出す度に思う。
大好きだったなあ、
しばらく立ち直れなさそうだよ。
夢を持ってしっかり歩んでいる彼のこと、
心から尊敬してた。
どんな道でもいい。
あなたの選ぶ道が、あなたの幸せに
繋がっていますように。
どうか、どうか
幸せになってください。
こんな風に願うほど好きだったなんて、
あなたは知らなくていい。
いつかまた会えたら、
背筋を伸ばして声をかけるね。
自分で自分を満たせるように、
誰かに縋らなくても生きていけるように
強くなりたい。
暗闇の中で、
何も見えなくなっていたわたしに
光をみせてくれて本当にありがとう。