もう何だか疲れちゃったな。
お母さんが倒れてから、うちはまるきり変わっちゃったね。
お母さんは寝たきりになって、お父さんは毎日のお見舞いと寂しさ、兄への対応でくたびれている。兄は、兄なんて呼びたくないけど、この疫病神だけは変わらず働きもせず家事もせず、家に寄生しているね。そんなあの疫病神へのストレスを、お父さんは私にぶつけてくるようになった。
毎週末のお母さんのお見舞い、もう三ヶ月も行ってない。お見舞いに行けば必ずお父さんと顔を合わせるし、疫病神をどうするのかで喧嘩になる。もう疲れちゃった。お母さんに会いたいけど、お父さんには会いたくないんだ。
うちは典型的な、過干渉の母親と無関心な父親の家庭だった。そして二人はいつも、兄ばかり見ていた。その視線はいいものであれ悪いものであれ、最後は必ず兄へ向いた。二人は私を褒めると、その流れで兄を褒めた。二人は私たち兄妹を平等にしたかったのかもしれない。でも私はそれで、不平等を学んだんだよ。私がいくら頑張っても努力しても、兄と同じ評価なんだ。兄が成果を残さなくても、成果を残した私とおんなじ。
私、頑張ったよ。二人の望む学校へ行ったし、就職もした。毎年プレゼントも欠かさなかった。なるべく実家へ帰るようにした。それでも私は兄と同じ評価なの?
お母さんのことはね、大好きだよ。この世で一番愛してる。過干渉には辟易したけれど、そばにいてほしい時は必ず寄り添ってくれたし、家族の思い出はお母さんとのことばかり。
でもねお父さん、私はあなたのことが本当は好きじゃないの。外の人たちは、私とお父さんをいい親子だね、いい父親だねっていう。その言葉、まるでナイフのように私に突き刺さるの。いい父親ってなに?お金を稼いで仕事していれば父親なのかな。
家族の思い出の中に、あなたはいない。夏休み、おばあちゃんちへお泊まりに行く時、あなたはいつもいない。仕事が忙しいからね。運動会、お祭り、入学式や卒業式、あなたと並んだ写真はない。家族写真を撮ったのは、いつ以来だろう?土日休み、あなたはずっと寝てる。起きても仕事を始めるか、ずっと映画や録画を見てる。私は見たくもないけど、それに付き合う。本当は遊園地とか旅行とか連れて行ってほしいけど、我慢する。私とお父さんが仲良くしていれば、お母さんが喜ぶから。あとね、これが決定的だった。成人式の日、お父さん会社に行っちゃったね。あと30分待ってくれていれば、振袖姿を見せれたのに。まさか仕事に行くとは思ってなかったんだ。綺麗だって褒めてくれるかなって、ワクワクしながら美容室から帰った。そこにお父さんはいなかった。お母さんが、お父さん仕事に行ったみたいって言った時、ああ、お父さんはやっぱり私のこと興味はないんだなって、納得したというか、気づかないふりをしていたものを認識させられたって感じ。
それから当たり障りなく過ごしてきて、お母さんが倒れた。
もともと足が悪かったから、リハビリもあまり進んでいない。歳も歳だし、たぶんこのまま老人ホームかもしれないって不安、お父さんも抱えてるんだと思う。そこに加えて、あの疫病神でしょ。不安とストレスで押しつぶされそうだよね。でもね、それを私にぶつけないでほしいの。私もね、唯一の家族と思っていたお母さんが倒れて、生死を彷徨って、今もまともに喋れなくて、意思疎通がうまくいかなくて、もうどうしていいかわからない。私の「実家」はね、お母さんのいるところなの。家にお父さんと兄がいても、そこは実家じゃないの。お母さんがいなければ、そこは私の帰る場所じゃなくて、私は帰る場所がなくなってしまって、私はもう一人なんだって感じるの。
お父さんが八つ当たりしてくるようになって、お見舞いに行くたびに頭痛や吐き気を堪えるようになった。耳がね、最近おかしいの。ずっと飛行機に乗ってる時みたいな、低気圧の時みたいになってる。聞こえないわけじゃないから病気ではないと思うんだけど、気持ちが悪い。お父さんたちのこと考えてない時は調子がいいんだけど。
兄のこと、追い出そうって何度も言ったよね。自立させないと、お父さんだけでなくお母さんも共倒れだよって。でも私の言葉はお父さんには響かない。せめて家事を、自分のことだけでもできるようにさせないと。自分のご飯くらい、自分で用意できるよ。でもお父さんがお弁当を買ってきちゃうから、外にすら出かけなくなってる。
いつかね、あの事務次官の家みたいになるんじゃないかって私は思ってる。いや、もうなってるのかも。お父さんの中のごちゃごちゃグルグルしたものが、いつか殺意に変わった時、同じになるんだ。
本当はここで、娘として二人を支えるべきなんだと思う。お母さんも正直、寿命がどれだけあるかわからない。なるべく側にいてやるべきなんだろうね。
でもさ、疲れちゃった。疲れちゃったんだ。
私は嫌な思いをしてまで帰りたくない。頭痛や吐き気を堪えるのも辛い。兄と顔を合わせたくない。お父さんと言い合いになりたくもない。お母さんはお父さんの味方をするから、家族の中で私は一人ぼっちだ。
私、自由になっちゃダメかな。これまで親の顔色伺って、兄のせいで振られたり虐められたりしてさ、頑張った方だと思うんだ。
いまね、好きな人がいるの。結婚できたらいいなって思うくらい、今まで恋愛に本気になれなかった私が心からそう思えるくらいに、自分を頑張らなくてもいい、自然体でいても認めてくれる人なの。
その人とご家族に迷惑かけたくないから、いつか生まれる子供や孫に兄を背負わせたくないから、離れたいんだ。
ごめんね、親不孝な娘で。愛してるけど、すごく重いんだ。私一人では3人を背負えない。だから、手放すね。
私は、幸せになりたいんだ。
名前のない小瓶
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お返事が届いています
ななしさん
こんにちは。全て読ませてもらいました!
1人じゃ3人を背負えないのはもちろんのことです。
私も3人を背負えないので。
あなたはひとつの鳥籠に囚われていますね
そこから幸せになりたいという願望があるんですよね
あなたは自由になっても構いませんよ!
そんな人生真っ平御免です!
あなたは1人じゃないです!
私が居るじゃないですか!
今は1人になることに集中してみてください!
苦しかったらまた、私は小瓶を拾いますので!
好きな人も居るんですよね…
告白して結婚して幸せな家庭を歩んで下さい!
あなたの親とお兄さんが結婚を拒否されても私はあなたの味方です。だから、自分が嫌いだとか、マイナスの方向には行っちゃダメです!プラス!プラスで行きましょう!
もう一度言いますが、あなたは1人じゃない。
私が居ます。味方です。
どうかあなたが幸せになるように願っております
ななしさん
人間て、なんなんやろな、、
でも、真直ぐ生きて居れば、
幸せになれると思う
ななしさん
初めまして。お返事させていただきます。
あなたの幸せを大事にしてほしい。
親は、そうなることも覚悟して子供を産むべきだと思うから…。
そうじゃないなら、それは親とは言えない。…と、私は思っています。
それは、親の責任。あなたが背負う必要はないと思うから…。
そもそも、自分で選んでないから、産まれてきた責任なんてとらなくていいんですよね、きっと。
自ら進んで、不幸になる必要はないはずだから、
あなたの幸せを願っています。
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