推しのバンドのメンバーが不倫していた。
そのバンドはコロナ禍真っ只中に知って、ライブパフォーマンスや曲やバンドの在り方に惹かれてあっという間にファンになった。
ファンクラブにも入ったし、ライブのBlu-rayもたくさん買ったし、ライブにもたくさん行った。
ファン歴の浅いにわかだけどものすごくのめり込んでいた。
だけど、突然メンバーの不倫がすっぱ抜かれた。
何気なくバンド名でパブサしたときに、真っ先にその記事が出てきて目を疑った。
最近やたらとバンドの不倫報道が多いと思っていた。
フェスでカッコいいと思ったバンドも不倫をしていたことが分かったときもあった。
そのたびに不愉快な気持ちになったけれど、推しは大丈夫だと無条件に信じていた。
バンドメンバーはみんな真面目だし、良い人そうだし、倫理から外れるようなことはしないと思っていた。
全くそんなことはなかった。
今でも信じられない。
記事が出たときは、本人の言葉をひたすら待った。
否定してくれると思っていた。
しばらくしてHPに載ったのは、不倫したメンバーと、バンド一同の謝罪文だった。
とにかく悲しくて悔しかった。
自分は不祥事の中でも不倫だけは特に許せなかった。
なぜかはよくわからない。
事故とか薬物とかより、不倫が受け付けられない。
自分や周りの大切な人たちが、もしされたらと思ってしまうのかもしれない。
された側のことを思うとただただ怒りが湧いてくる。
当たり前だが自分はそのメンバーの家族とは知り合いではなく、赤の他人だ。
赤の他人の気持ちを勝手に慮って憤るのはおかしいと自分でも分かっている。
分かっているが感情をコントロールできない。
不倫したメンバーは曲の歌詞やメロディーを書いてはいないけれど、曲作りには参加していたし、コーラスもするし、当然演奏もする。
その人の断片が、意図が曲に混ざっている。
その人のことを感じたくない。
曲を聞くのが怖くなった。
ライブやフェスでもその人はステージで曲を演奏する。
メンバーとアイコンタクトをとりながら演奏する様を、ソロで喝采を浴びる様をどういう目で見ればよいのだろう。
できれば視界に入れたくない。
行く予定だったライブのチケットはトレードに出した。
今回はメンバーの一人がすっぱ抜かれたが、もしかするとバレていないだけで他にも不倫をしているメンバーがいるのでは?という疑念も頭にある。
メンバーの過半数以上が不倫や浮気をしているバンドもあったし、ありえない話ではない。
もし更に報道があった場合、本当に心が折れてしまう気がする。
そうならないうちに離れてしまいたいが、離れがたい。
ここ一年以上、ふとした時に彼らの曲を聞いていた。
家事、買い物、遊びに行く時、眠れない時、暇を持て余した時。
彼らの音楽は生活に溶け込んでいた。
今は自分の気持ちと向き合うために、意図的にそのバンドの音楽を断っている。
しかし、そのバンド以外のなんの曲を聞いたら良いのか分からない。
好きなアーティストは他にもいるのに、聞いてもいまいち気分が乗らない。
そのアーティストも不倫していたらどうしようという気持ちにもなる。
ずっと、どこかに穴が空いているような気がする。
そのバンドはやっぱり好きだ。このバンドの代わりはどこにもいない。
ライブは凄いし、曲も凄い。何度も度肝を抜かれた。
だけど、それだけではなく、メンバーの人柄も好きだった。
バンドマンなんてみんな不倫している、ミュージシャンなんてまともな人はいない、というのが一般論かもしれないが、自分はそんなわけないと思っていた。
音楽は音楽にこそ価値があって、それを作ったり演奏する人間の人柄に左右されない、というのは文字として理解できるが、納得はいかない。
誰もが簡単に発信できる時代になり、発信しなければ埋もれてしまう時代になっている。
そんな中でそのバンドもかなり積極的にあちこちに顔を出して(多分そうするのは不本意だっただろうが)、自分の意見を口に出して世に発信していた。
それを知ってからは、曲を聞くときにふとその人たちの顔が浮かぶようになったし、彼らの意図に思いを馳せるようにもなった。
そうなった以上、自分の中で人間性と音楽は切り離せない。
曲を聞いても、「この時既に不倫してたんだ……」と思ってしまう。
バンドのファンは「全然気にしない!」「どうでも良い!」という人が多い。
多分、彼らが正解なんだと思う。
バンドのメンバーなんて結局はただの赤の他人で、赤の他人がしたことにいちいち目くじらを立てても仕方ない。
バンドにとってもそういうファンがありがたいはずだ。
そうなれない自分にイライラする。
そもそも赤の他人の不祥事に怒りを覚えることは『正義中毒』になっている、という意見もある。
それも正しいと思う。
ここまで不倫に対して怒りを覚えているのは、された側の気持ちを慮ってのテイを取っているが、実際自分がなぜ怒っているのか分からない。
もしかしたら正義ぶりたいだけかもしれない。
今、自分の中に2つの気持ちがある。
不倫のことを水に流して元通りバンドのことを好きになりたい気持ちと、一生許せないままバンドから離れてしまいたい気持ちだ。
この2つの気持ちの間でずっと堂々巡りしている。
今まで不倫騒動で怒ってそのミュージシャンの曲を聞かないようにしていたのに自分の好きなバンドには甘くするのか?
自分が好きなものにこそきちんと批判すべきではないのか?
なんでも盲目的に受け入れることがファンなのか?
しかし、リアルタイムで不倫を知ったバンドは意図的に聞かないようにしているが、昔不倫をしたバンドの曲は普通に聞いたりしているのだから、自分の中のルールすら守れおらず、それを意固地になってまで貫くのか?
そもそもそんなルールを守っているのは、不倫された家族のことを思ってではなく、自分のためにそうしているだけでは?
この怒りや悲しみは本物なのか?
夜になるとそんなことばかり考えてしまって、気持ちが暗くなる。
結局結論は出ないまま、メンバーの不倫は受け入れられないまま、一日が終わる。
Twitterで同じ気持ちの人を探した。
不倫に怒る人もちらほら見かけてホッとしたが、自分と少し考えが違う部分もあり、結局モヤモヤしてしまう。
自分の気持ちに決着をつけられるのは自分しかないようだ。
せめて気持ちを整理するためにこの文章を書いている。
(思いつくままに書いているので支離滅裂になっているだろうが……)
今後どうなるのかは自分でも分からない。
時間が経って受け入れられるようになるのか、完全に決別するのかは分からない。
ひとまずは不倫に決着がつくまでは待つしかない気がする。(決着がついたとしてもそれはこちら側が知ることはないかもしれないけれど)
勝手に信じて、勝手に裏切られた気持ちになる。
今までもそうやっていろいろな推しから離れてきた自分は本当に身勝手な人間だと思う。
今回の件を許容したら、ますますその身勝手さに拍車がかかるような気がして、許容できないのかもしれない。
とにかく、今夜この小瓶を流したら、一旦バンドのことを考えるのはなるべく止めにしようと思う。
今も置いているがバンドと距離を置こうと思う。
時間をおいてまた1からどうすべきか考えていきたい。