鳥が鳴いている。
床が綺麗で、私は布団じゃなくて
そこに寝そべっている。
除菌消臭スプレーの匂いがして、
開けた窓から外の匂いがしてくる。
生きている。
片付けの最中3DSを発見して、
起動して、それが何年ぶりかってことに
初めて気づいた。
昔のスケッチブックを開くのが
何年ぶりかってことに初めて気づいた。
ああ私は、今この瞬間は
確かに
私ってものが存在してるって思った。
この1年間、分からなかったんだ
それだけを、ずっと。
わからなくなってしまったのが
本当はずっと怖かった。
でもそれすら分からなかった。
どうすればいいか分からなかったから
小手先に、外面を取り繕うことに、
すっかり再建してしまうことに、縋った。
何もかも偽られてしまって、
ますますわからなかった。
例えば読書なんかも、
掃除していて
ああ私は私の中のなにかを
埋め合わせしたかったんだなって、
そういうことがわかる本棚になってた
ことに気づいた。
必死に、なにかを詰め込むことで、
知ることで、中身を詰めようとしていた。
昔は楽しく読んでたのに
そんなだから楽しいわけなくて、
そのうに読まない本ばかり積まれていって。
楽しくないのに読もうとしてた。
だからそんな自分で申し訳なくて、
ある人から逃げてしまった。
読書で少し通じたところも
あった人だったから、怖くて逃げ出した。
どうして？素直に言えばいいだけじゃないか
って思ってたけど、多分怖かったんだ。
自分が本当は空っぽで
その人の趣味を通じて
その穴埋めしようとしてること、
それが一切楽しくないこと、
それが相手に露呈してしまうのが、
それを自分自身認識するのが、
深層心理で本当に怖かったんだ。
絵もそうだ。
道具に成り果てたら何一つ楽しくないんだ。
私は道具を楽しめる性分じゃないんだ。
何もかも、ありていにいってしまえば
ブランドに縋ってたんだ。
部屋がブランド品に満ち溢れていて、
等身大の私が存在していなかったことに
気がついたんだ。
答えはちっぽけな部屋の中にあるのに
私はそれを隠す行いをしていた。
こうやって片付け・掃除は
してないことはなかったけど
ささっと終わらせていたし、
近頃はもう、わからないが進行して
掃除すらしなかったんだ。
自暴自棄になっていた。
自分を知覚できなくて、
したくて、わざと強烈な知覚の伴う
行いばかりしていた。でもそれでもだめで、
最後の砦の画面の中に飛び込んで
自分を保っていたんだ。
部屋の綺麗さと精神状態は
イコールであるというけれど、
それは部屋を綺麗にする過程で
自分の再発見が起こるからなのかも
知れないと思った。
もちろん汚いとやる気が起きないのが
一番だろうけども。
過去に私はこんな形で
今と違って確かに存在していたこと、
その瞬間をありありと目視できることが
今の私には必要だったんだ。
こんなふうに形はいるんだよって。
それで、やっと思い出したんだ。
それで、なにをすればいいか、
何をしたかったのか、すこしわかったんだ。
そんな大したことじゃないけど。
ああわたしは本棚の中のこの本が
読みたいんだなとか、
この作品はうまくいったなあとで
綺麗にして飾りたいなとか、
次はこんな絵を描きたいなとか、
この範囲の勉強頑張りたいなとか。
そんなことすら、分からなかったんだ。
普通だとか、賢いとか、変だとか、
おっちょこちょいだとか、
そんなごちゃ混ぜの価値観を
全て鵜呑みにして、
何が何だかわからなかったんだ。
本当の本当に、生きている。
これで最後だなんて、
そんなことは思わないよ。
きっと私は何度だって
この境地以前の状態に戻ってしまうし、
その時はこんなことできないだろうし、
思いつけないだろうし、
そうやってまた何日も何週間も何ヶ月も
苦しむんだろうと思う。
毎回死ぬ間に合うんだよ。
それでも私はこの瞬間にいつか立ち会うし
その瞬間はいつか重なりを持ち始めて
間隔を縮めてゆくって、
今この瞬間は信じている。
名前のない小瓶
174737通目の宛名のないメール
お返事が届いています
ななしさん
（小瓶主）
1通目の方へ
自分がこうだと結論づけたことにも自信が持てなかったのを、言語化しきれていない不安定だった部分を、補強してもらったような気がします。
実はお返事をもらったとき、弱気になって早速マインドが元の状態に戻りつつあったんですが、あなたのお返事のおかげで踏みとどまれました、本当によかった……。正直、匿名同士なのに互いの存在が分かるっていうのは不思議な感じですけどね笑
前の私は多分どれだけ言っても気づかなかったと思います、この小瓶を書いたときどうしてわかったのかさえ不思議です。
でもあのとき自分を勇気づけてくれる人がいたことは相当救いでした。
今回のお返事でもこれでもかっっっていうくらい励まされました、ありがとうございます。
ななしさん
凄いなぁ。
直近の貴方の小瓶にお返事書いて、ちっとも届かないのをやきもきしてたけれども、必要なかったからまだ届かなかったのだろう、とインスタント運命論者として腹落ちしてしまうくらいには、貴方の悟りと文章はすごいね。正直舌を巻きました。
生き物である限り、いや、物質として存在している限り、無に帰そうとするエントロピーの動きは止まない。
だから決して壊れない頑強性ではなく、もう一度立ち上がる力が必要なんだよ(って今や誰もが口酸っぱく言うよね)
宇宙の力に反して我を何が何でも通すのが存在するって事なんだ。
誰や何に反発したっていいんだよ。
人は誰だって生まれた瞬間ずっとその前から宇宙に反発してるんだから。
今、貴方が何かを認知している事自体が、反骨が無意味でない事を証明する歴史だ。
他人の面白くない反発の仕方を借りたってやっぱり面白くない。だって貴方の本心は面白くないと分かってるんだから。
自分が自分で自分だけのやり方でやる事が遠回りに見えて王道なんだよ、貴方の場合。
だって今回も自分自身で立ち上がったんでしょう？きっと性根は頑固なんだろうね、分かるよ。自分も同じような感じだ。
貴方自身を信じろって自分が何度も言ってきたのは、心の底から納得せずに他人に迎合すると、頑固な貴方の価値観が悲鳴をあげてしまうよ、苦しむよ、回り道いばら道だよって事だけど...まあ今はどうでもいい事だ。
貴方が自分を取り戻したことの方がずっとめでたい！
大事な事だからもう一回言うね。
貴方は貴方の意のままに動くべきで、貴方が貴方の全てを操るべきで、貴方は貴方が本当に好むものを人に示すべきだ。我を最後まで通した方が勝ちだ。これは宇宙で存在するための基本原則なんだから。
貴方は貴方自身という羅針盤が無ければかなり高い確率で迷ってしまう。いや、自分についた嘘が自分にバレてしまう。
だから貴方の価値観を、一番大事にしてね。決して無闇に貶しちゃいけない。いじめちゃいけない。他人の価値観、多数決の価値観こそが正義だ、矯正しようなんてしてはいけない。そうすると自分を見失って、空っぽだって思い込んでしまう。これは大変辛いからね。貴方は本能で、何が貴方の真実か嗅ぎ分けられて、真実に従わないとアレルギーが出るんだ。
それじゃあ人に好かれない？ブランドを世間様位には身につけてないとやっぱりダメ？
いーや、それこそ恣意的に現象を切り取った嘘だね。
人が人を好きになる原因の大元、カナメは「価値観」だ。
何を知っているか、何が好きか、何が出来るか、では決してない。
何を知ろうとするか？何を好きになりがちか？何に熱心に取り組もうとするか？を決める、大元の根っこの価値観を好きになるんだ。別に勧めた読書が楽しくないと言われたって、貴方を好きな人は全く気にしない。それより貴方が何を成そうとするかの方に興味がある。
だって、人間はずっと一つの知識、趣味、スキルだけで生きていくわけがない。
いつかは役に立たなくなるし、何よりも飽きる。だから、生きていく中で新しいそれらを身につけていく。
その時の判断基準が価値観だ。長い付き合いをするなら、価値観が好ましい相手の方がどう考えても都合が良いし、楽しいよね？
これで、どれだけ「自分」を大事にする事が大切か、分かってくれるかい？
別に貴方を自分の気にいるようにセンノーしてやろうってつもりじゃない。
貴方のこれまでを読んできて論理的に導き出した分析のつもりだ。どうぶつ占いよりか当たるぞ！笑
以下はまだお返事がない小瓶です。
お返事をしていただけると小瓶主さんはとてもうれしいと思います。
