”期待の星”
このサッカー部でキャプテンを務めている
一つ上の先輩は期待の星のような存在だ。
将来プロになるとも噂されているほど上手い選手で、サッカーIQも高い。
まさしく性格は”キング”そのもので、
口はかなり悪く自分中心のところがあるが
良い事も悪いこともはっきり言える彼には、
他の選手にはない気迫がある。
そんな彼は公式戦前日の午後連後、
必ず部室やトイレの掃除を一人でしていたり、
朝早く来てゴミ拾いをしている。
これが俺のルーティンなんだと内面も磨き続け
本気でサッカーと向き合っているのである。
何よりも全国優勝への意識が高く、
努力家なのだ。
「来年は絶対全国行きます」
そう誓った去年の冬から約1年、
その願いは儚くも散ることとなる。
試合終了の笛とともに舞い上がり喜ぶ相手チーム。鳴り響く勝利を称える歓声。
引退間近の3年生が多く入っているメンバー25名は一列に並び、相手チームにも私たちにも挨拶をした。
こらえきれず泣き崩れていく姿には
”もう二度とない試合”だという自覚からの限りない後悔が黒雲のように漂い続けている。
黄色いキャプテンマークを握りしめる彼は、それでも泣くことなく私たちに暗い顔は見せなかった。
一番自分が悔しくてしんどいはずなのに
泣き崩れるみんなに手を差し伸べる。
涙を見せることは彼のプライドが許さないのだろう。どんな時でもみんなを引っ張り上げようとする彼は流石としか言えない。
ただどれだけ励ましあっていても、
この計り知れないほどのやり場のない後悔が
当分消えることはないのであった。
背負った10番の重みを
誰よりも痛いくらいに感じている彼は
今どんな想いで、どんなモチベーションで
練習に参加しているのだろうか。
引退まであと2週間。
次はプロになるという個人の夢を叶えるために走りつづける。大学生になっても誰もが思う期待の星であり続けて欲しい。