文化祭本番まで、あと1週間。
正直今も辛い。急にボイコットする役者が出るかも知れない不安と、いまだに残っている同期に囲まれた時の恐怖と手首の傷。
それでも、私はやれることをやった。そう思えるようになった。
顧問も、もう人に見せられるレベルと褒めてくれるようになり、部内の雰囲気も段々と残りの日々を惜しむような空気になってきた。
私は一つ下の後輩ともっと仲良くなって、一緒に帰るようになった。同期とも上手く関われるようになった。
私は、部長として、演出として、ちゃんとできている。そう思う。
それなのに、リハーサル中の舞台裏でふと叫び出したくなる。
得体の知れない寂しさ、不安、怒り、何もかもが襲ってきて崩れ落ちそうになる。
辛いよ。誰か褒めてよ。私はこんなに頑張っているんだよ。引退なんてしたくないよ。やり直したいよ。
それらを全部込めて唯一与えられた、舞台裏から叫ぶセリフに変える。とてつもなくうるさくて、鋭い声が出る。毎回わかっていても驚く後輩が、私のことを抱きしめてくれる。この温もりに甘えていたい。
怖い。ずっと怖い。この劇を続けるのも、終わるのも、怖い。
立ちすくんでしまいそう。