「ねぇ・・ちょっとまってってば!!」
息を切らしているわたしを見て満は足を止めた。
でもまだ手を繋いだままで、わたしのこの体の熱さは走ったからなのか、手を繋いでいることに対してなのか、分からない。
すると顔見知りのおばちゃんがわたしに気づいて話しかけてきた。
「あらあ、みるちゃん、かっこいい彼氏連れてえ〜」
彼氏!?ボッと急激に顔が赤くなったのを感じた。
「あ、こんにちはぁ〜」
「失礼ですけど、おれはこいつの彼氏じゃないですよ」
そう言って満とわたしは苦笑いする。
「あ、そうなの〜?お似合いよお〜?」
おばさんは「それじゃね」とだけ言って去っていった。
・・お似合い・・。
周りからは、そう見えてるのか・・。
満はわたしのことやっぱりどう思ってるのかな・・。
少しでも気になってくれてたら嬉しいな。
幼馴染なんかじゃなくて、
女子として、恋愛対象として、見てほしい。
「おれとみるってそんなにカップルに見えんのかな」
満がサラッとわたしの心臓が爆発しそうなセリフを言ってくる。
「・・じゃ、付き合っちゃう?」
口が勝手に言っていた。
脳で考えるよりも先に口が・・。
「ごめん、今のは冗談です」
絶対今わたし顔まっかだ。
穴があったら入りたいってまさにこのことだ。
「あの、みる――」
「じゃ、わたしごめん急いでる」
満から逃げるようにわたしは走って帰った。
家についてひとり大反省会。
配信前には声出し練習しときたいけどそれどころではない。
「はぁぁぁぁ〜」
さっきからため息しか出ていない。
なんであんなこと言っちゃったんだろう。
満は恋愛する気なんてなさそうだし。
推しに一筋!!!!とかそんなかんじ系のタイプぽいし(超偏見だけど)。
あと数分で配信が始まってしまう。
皆コメントの方で待機してくれてる人が現在2万人居てくれてる。
わざわざわたしのために時間を取って配信を見に来てくれようとしている人がいるんだ。
せめて配信だけでもリスナーちゃんたちを楽しませて自身も楽しめるようにしなくっちゃ。
今は満のことは忘れよう。
さっきの出来事も忘れよう。
今は、配信だけに集中する。
わたしは、満が配信に来てくれたこと、配信でスパチャを送ってくれたことにも全く気づかず、スパチャ読み上げして
配信に没頭していた。
完全に仕事モードに入っていたのだ。