エピソード一 難聴
難聴と聴覚過敏になった。
難聴になったから何も聞こえないわけじゃなくて、低音が聞こえない。それだけ。それだけのはずなのに周りはうるさくて聞き取りたい人の声は聞こえない。雑音ばかり耳に入ってくる。でも、この辛さはだれも理解できない。それはみんなが普通だから。
「普通なんてない。」「他人と比べちゃダメ。自分は自分。」
何回も聞いたし何回も言われた言葉たち。こんなこと自分が普通なのが当たり前だから言える言葉。
「普通なんてない。」それは自分が常に普通で普通の中からしか自分を見たことがなくて、普通を深く考える機会がなかった人の言い分。この世の中の大半は、耳が聞こえて、目が見えて、自分で歩けて、自分で判断することができて、外に出ても奇声を出さないし、じっとしていられる。常に自分をコントロールすることができる。「普通なんてない。」と言っている人も自分をコントロールすることができると思う。私は聞きたい。「目が見えない耳が聞こえない、奇声を上げる、自分の体をコントロールできない。これらの人達は普通の中に入るのか？」と。ここで「はい」と答える人は現実が見えない人だと思う。
これらの人が普通なわけない。だって、普通はその人達の逆だから。「普通なんてない」と言っている人は自分に障害がないから言えるのだ。
わたしはずっと周りとの「普通」のギャップで悩んだ。中学生の頃、発達障害が見つかってこの障害の受け止め方と今後の付き合い方を模索して悩んでいた時期に、友達と言い合いになり、「私は普通じゃないから普通の貴方に私の気持ちが理解できるわけない」と言い放った。そのあと相手の子から「普通って何？」と言われた。周りの普通と自分の普通のギャップで苦しんでいた当時の自分にはあまりにも受け入れられない言葉だった。「普通って何って何？」とすごくイラついたのと「あぁ、ずっと普通で生きている人はこんなこともわからないんだ。普通でいられることのありがたさが理解できてないからこんな発言できるんだ。」と当時更に普通の人と普通じゃない自分のギャップに気づいてしまった。そのあと、その子の顔を見るたびに「普通って何？」と言い合いした時の言葉が頭の中に浮かんでしまい、結局その子と付き合うのはやめた。
わたしは自分が普通じゃないと気づいた中学生の頃から普通に囚われている。自分が普通じゃないと気づいた瞬間からもう二度と普通には戻れなくなる。「普通は普通でしょ？」と考えていたころにはもう戻れない。
なぜこんなにずっと普通に囚われているのか。
「ADHD」「自閉症スペクトラム障害」「感覚過敏」「低音障害型感音難聴」「聴覚過敏」「アナフィラキシーショック」
私の普通への執着を強めている原因。１８歳でこんなも他人と違うものを持っていたらどうしても普通の友人との違いを痛感する瞬間ができてしまう。最近自分は普通からまた遠くなったと感じたのは聞こえ方について。最近病院で低音障害型感音難聴と診断され「低音が聞こえづらい」と言われたので「低音だけなら支障ないな」と舐めて学校に行ったら、周りの雑音がうるさくて人の話に集中できたものじゃなかった。後ろから急に人が出てくると足音が聞こえないからか、めちゃくちゃびっくりするし、席が離れていると本当に喋っている人の声が何も聞こえない。生活できたものじゃない。軽くパニック状態。「え、え、え」って感じだった。また病院に行って耳の薬をもらったけど改善はなし。
自分が思っていたより聴覚過敏が辛くて友達に相談という形で話を聞いてもらった。ただ「びっくりしたよね。ざわざわするよね。」って共感してほしかった。自分はおかしいことを言ってないって言ってほしかった。でも違った。「悩みを解決するには…」とか「偉いね。」「普通の人なんてないよ」とかそういうのばっかりだった。誰も共感してくれなかった。それはみんな普通に聞こえるから。共感できない。みんな急に雑音が大きくなったり足音が聞こえなかったりしないから。自分とは違う。やっぱり自分は普通とは違う。そう痛感した。
