君は
テープに貼り付けた毛を
大事に取り繕っていた
『集めてるんだよ、みんなの記憶を。』
なんて君は言うが
これっぽっちの髪の毛に
記憶なんかあるもんか
どうしてゴミばっかり君は拾うんだ
とは言えずにいた
君が語るには
これらは全て人々の遺失物なのだと
しかし君がそいつらを拾い上げる様は
とても妙で仕方がない
学校で君が屈んでいるときは
ほとんどが毛の話だ
近所の床屋に毎晩立ち入っては
オーナーに出禁にされるほど
信じられないような狂いっぷりだ
そこまで大事ならば
なぜもっと丁寧に保管しないのか
そう君に尋ねると
『自然体じゃないと毛が傷つくだろ。』
意味が分からない
どうしてそこまでして集める必要がある
君が不快でならない
少なくとも床に落ちている毛は
清潔だとは言い難い
とはいえ反論するほどのものではない
こんな下らない仲違いは勘弁だ
そういう折でずっと君とは
離れられないまま
身元不明の髪の毛を
ひたむきにいじる君を見るままに
切れない縁をそのままに