私はどうして、こんなところで燻っているんだろう。
水の中でもがき続けて、やっと水面に顔を出すことができたと思ったら、世界の仕様を、私の記憶を、すっかり忘れてしまっている。
なんてことを、もう何回考えただろう。ヘドロのようなゴミダメのような清水のような、認識し直すたびに姿形を変えるこの現実の間に挟まる緩衝材が私の正確な思考を(多分)奪い去っていくせいで自分の現在位置がどこなのか、後ろへ進んでいるのか前へ進んでいるのか、それとも停滞したままなのか、全く、見当もつかないでいる。
言葉にしたら全て嘘になりそうな何かがもうずっと胸の中でわだかまりとして在る。
単純明快だった私の世界観に戻って、単純明快な言葉で単純明快を言い表し、単純明快な美しさと踊り、単純明快に絶望し、単純明快な眠りにつきたい。
疲れているのだろうか。
こんな気持ちになるのも、自分自身に自分が絡め取られていくような感覚を覚えるのも、逃れられない何かから逃れたくなるのも、身がすくんで動けなくなってしまうのも、全部、私の疲労と寝不足がいけないのだろうか。
曖昧な場所でえずきそうになりながら、私が生きてる意味を誰かに問う、生きるゆるしを誰かに乞う。
でも、曖昧な場所には誰もいない。
曖昧さと余裕のない稚拙さを纏った文章は、誰にも応答されない。
私の中にある真っ暗闇で虚しい空間を私だけが知覚していて、それがとても悲しくて、怖いと思う。
私、どうしてこんなに、どうかしてしまったんだろう。
誰かが説明可能な範囲に戻りたい。
突然ハッとしたのだが、私はアイデンティティ・クライシスなるものに陥っているのかもしれない。だったらなんなの、という話だけど。