00008000。自由な時間を多く持っていた頃は、ふらふらと色々な所に居りました。
或る時は歓楽街に、或る時は雪深い土地に居りました。一つの場所に長く留まりはしませんでしたが。
飛行機や新幹線ならば移動も手軽なものですが、たまには趣向を変えようとフェリーに乗った時のことです。甲板に出れば冷たい潮風と波濤に晒される冬の海を見ました。鈍色の世界です。
あまり夢を見る人間ではなく、見るにしても不快なものばかりですが、あの時の光景が再び現れると、狂おしい気持ちになります。
困難な決断であることは今も昔も変わらないはずですが、何故にあの時、波間に身を投げなかったのだろうか。
苦痛から逃れること、その為に自らの手で幕を引くことに憧れがあります。
おそらく絶対に出来ないからです。