ボブ
「おう、戻ったぜ」
マリー
「おかえり。彼の家、どうだった?」
ボブ
「ふぅ・・・特になにもなかったぜ、綺麗なもんだった」
マリー
「そう・・・」
ボブ
「あいつと呑んでたんだろうな・・・酒の呑み残しがあったくらいだな」
マリー
「あらあら、未成年にお酒、ね・・・」
ボブ
「・・・それと、これがあったぜ・・・」
マリー
「これ・・・」
ボブ
「ああ・・・ほとぼりが冷めたら、あいつに渡してやるつもりだ」
ジョシュア
それから、何日かたった時のこと。
ボク達は買い物をした帰りにパパ達と会った。でも、マリアは先に帰るとはしゃぎながら走っていった。
マリア
「ただいまー」
マリー
「おかえりなさい、マリア・・・。あら、ジョシュアは?」
マリア
「途中でパパ達にあったから、一緒に来てるわ。私は料理の材料を持ってたから先に帰ってきたの、全部じゃないけれど」
マリー
「そうだったの、ご苦労様」
マリア
「今日はビーフシチューにするでしょ?ジャガイモとか人参とか、固いものは先に茹でるかなって思ったの」
マリー
「ふふ、そうね、ありがとう」
テオ
「・・・・・・」
マリア
「テオ・・・」
マリー
「いまは大人しいから、平気よ」
マリア
「怖いとかじゃないわ、ママ」
マリー
「そうね、それじゃ、料理を作ってる間、テオのこと見ててくれる?」
マリア
「わかったわ」
テオ
「・・・・・・」
マリア
「今日はビーフシチューなの、美味しいわよ?」
テオ
「・・・・・・」
マリア
「お腹すいてるでしょ?みんなが作ってくれてるから、できたら持って来るわね」
テオ
「・・・・・・」
マリア
「もう、なにも反応してくれないとつまんなーい!」
テオ
「っ・・・!」
マリア
「あ、反応した!でも、そんな怖い目で見られるのは嫌だわ」
ジョシュア
「マリア、もうすぐご飯できるよ」
マリア
「あ、兄様」
ジョシュア
「ボクが見ておくから行っておいでよ」
マリア
「お願いね、兄様」
アンナ
「マリア、テオ、どうだった?」
マリア
「うーん、少しだけ反応してくれたけど、その後は全然なのよー」
ジェシー
「まだ、かかりそうね」
マリア
「私が折角、お話してあげてるのに、失礼しちゃうわ!プンプン!」
マリー
「さ、出来たわよ」
マリア
「テオに料理が出来たら持っていくって言ったから、持って行くわね」
マリー
「ええ、お願いするわ」
マリア
「はーいっ!」
ジョシュア
「マリア」
マリア
「兄様!テオ、どう?」
ジョシュア
「全然、なにも変わらないね」
マリア
「そう、じゃあ、ご飯食べさせてあげなくちゃ!」
ジョシュア
「そっか、じゃ、ボクも一緒に見ておくよ」
マリア
「うーん・・・でも、人が少ないほうが食べやすいと思うの、兄様もまじまじ食べてるところ見られたら、恥ずかしいでしょ?」
ジョシュア
「まぁ、そうだけど・・・」
マリア
「最近は暴れたりしないから、平気よ!」
ジョシュア
「なら、いいけど・・・」
テオ
「・・・・・・」
マリア
「ごはんよ、お腹すいてるでしょう?」
テオ
「・・・いらない」
マリア
「兄様は行ったわ。ここには私とあなたしか居ないから、恥ずかしがらなくても平気よ?」
テオ
「・・・いらない」
マリア
「でも、もう何日もちゃんと食べてないわ・・・」
テオ
「・・・いらない」
マリア
「あ、手を縛られてるものね、今ほどいてあげる、乱暴しちゃ、嫌よ?」
テオ
「・・・・・・」
マリア
「これで食べられるわよね、はい、スプーン」
テオ
「・・・いらない」
マリア
「でも・・・。ほら、わたしが食べさせてあげるから、あーん、して」
テオ
「いらないって・・・」
マリア
「テオ?」
テオ
「いらないっていってるだろっ!」
マリア
「きゃっ!!」
テオ
「何が食べさせてやるだ!このっ!少し年上だからって!」
マリア
「痛いっ!痛い!やめてっ!」
テオ
「なんだよ?そんなにボクが気になるのかよ!?ならっ!」
マリア
「ぇ!?いやっいやぁ!!」
ジェシー
「遅いわね」
マリー
「そうね」
ジョシュア
「ボク様子みてくるよ」
ボブ
「ああ、そうだな、頼む」
テオ
「ボクだって、ボクだって大人だっ!子ども扱いするなよ!なんだよ、なんなんだよ!みんなして!」
マリア
「いやぁっ!!兄様!ママ!パパ!」
テオ
「家族を呼べば助けてくれるっていいねっ!ボクなんか、ボクなんかっ!!」
マリア
「誰か!だれかっ!!」
テオ
「あははっ!ボクのじゃなくて、いっそこのパンを捻じ込んでやろうか!?」
ジョシュア
「!?マリア!っ!この!!」
テオ
「あぐっ!」
ジョシュア
「く、ボクが押さえてるから、みんなを呼んできて!」
マリア
「っはぁ、はぁっ・・・。え、えぇ!」
マリア
「ママ!パパ!テオがテオが!」
ボブ
「マリア!どうしたその顔!血が出てるぞ!?それに、その服・・・」
マリア
「え・・?ぁ・・・っそんなことはいいの!テオが暴れて、いま兄様が押さえてるけど、早くしないと!」
マリー
「えっ・・・」
アンナ
「早く行こう!」
ボブ
「ああ!!」
マリア
「兄様!・・・大丈夫?」
ジョシュア
「いっっ、大丈夫だよ」
マリア
「良かった・・・でも、口から血が・・・」
ジョシュア
「大丈夫、ボクも殴ったからお互い様」
マリー
「テオ!テオ!落ち着くのよ!落ち着きなさい!」
ボブ
「ぐっ!毎度毎度、ガキの癖に力あんな、くそっ!」
テオ
「死なせろ!死なせろよっ!!」
アンナ
「ジェシーそっち押さえて!!」
ジェシー
「わかったわ!っ!テオっ、あんた、ねっ!!」
テオ
「しなせろぉぉおお!!」
マリー
「っ!きゃあ!!」
ボブ
「ぐおっ!!」
アンナ
「マリー!ボブ!」
ジョシュア&マリア
「ママ!パパっ!」
ジェシー
「っ大丈夫!?」
テオ
「はぁ、はぁ・・・」
アンナ
「大人しく、なった・・・?」
マリア
「マ、ママ・・・大丈夫?」
マリー
「はぁっ・・・ええ、大丈夫よ、っ!でも、ちょっと手首捻ったみたい」
マリア
「パパも、腕から血が・・・」
ボブ
「ん?・・・ああ、ほんとだ、まぁ、少し切れただけだ気にすんなよ」
テオ
「し、な、せて・・・よ」
ジェシー
「あんた、いい加減にしなさいよっ!?」
ボブ
「ジェシー!・・・あんなことがあったんだ、と・・・」
アンナ
「いまのテオくんを、二人に見せたい?・・・同じだよお父さんと」
ボブ
「お、おい!アンナまで!」
テオ
「う、、る、、っ、五月蝿いな、お前らに、お前らに何がわかるんだよ!!おれなんていらない存在なんだよっ!!」
ジョシュア
「・・・いいたいことはそれだけ?」
テオ
「っ!?なんだって!?」
ジョシュア
「ここには色んな人が居るの知ってるよね?」
テオ
「・・・・・・」
ジョシュア
「女性が乱暴されたとき、どれだけショックを受けるかも知ってるよね?」
マリア
「っ・・・」
ジョシュア
「大丈夫だよ、マリア・・・もう離れないから。ボクの妹に手を出そうとしてたよね、殴るとかじゃなくてさ」
ボブ
「あ?マジか?」
マリー
「本当なの?」
マリア
「・・・・・・」
ジェシー
「・・・本当に、父親と同じね」
アンナ
「いいの?それで・・・」
テオ
「そうだよ、ボクは、最低な奴だ・・・だから、もういいだろっ!?」
マリー
「っ!」
テオ
「がっ!・・・なんだよ、殴りたいなら、好きなだけ殴ればいいじゃないかよ!」
ボブ
「・・・なぁ、お前、このまま終わったら、本当に最悪な奴でおわるぞ?」
ジェシー
「ほんと、あの子達がいたら、なんていうかしらね?・・・もしかしたら、見てるかもね」
ボブ
「おい、それはもう、やめてやれ」
テオ
「・・・・・・」
ボブ
「俺もこの際だ、はっきり言わせてもらうぜ、今のお前には殴る価値は無い」
テオ
「っ、、っ・・・・」
ボブ
「お前がその状態から抜け出したら、一発殴らせてもらうぜ・・・。だからよ、ちゃんと覚えておけよ」
ジョシュア
それからは、暴れることも自殺しようとすることも無くなった。
マリア
でも、それからが長かったわ、本当に、本当に・・・。
テオにご飯を持って行って、食べさせる。怖くなんてない、そう思っていたのに、その度に手が震えた・・・。
テオも気がつくと、悲しい顔をする、自分を責めている顔・・・。
私の存在は、彼を傷つけるだけかもしれない・・・でも、私は逃げないから・・・ごめんなさいね、テオ・・・。
ジェシー
食べ物を食べても、吐いてしまったり、生きる気力、それが枯渇してしまった。
辛く当たるのは逆効果だ、そんなことはわかっていた。
でも、彼に対しては、私は、あの二人のことを考えて欲しいと思ったから、それとなく言っていた。
その度に、ボブには止められたけれどね、彼は優しいから、その優しさはもう少し後で必要になるだろう。
だから、いまは・・・。
マリー
テオの耳に伝わる言葉は、きっと・・・ジェシーの言った言葉だけなのだろう。
彼女のきついけれど優しい言葉が、テオの胸を打つだろう、私達は、壊れたテオが元に戻るまで、出来ることをするだけ。
彼が、心を取り戻すまで・・・。
ボブ
ジェシーのきつい言葉に、俺は何度か、思うところがあった。
だが、テオが反応を示すのは、その言葉のときだけだった。
マリーもアンナもそれを見つめているだけだ。
俺には、どうすることも出来ない。
それでも、見捨てたりなんかしねーからよ・・・。
だからよ、早く戻って来いよ?生意気なクソガキによ・・・。
アンナ
十数年・・・そう、彼が自分の足で歩けるようになるまで、自分の心を取り戻すまで、十数年もかかった。
わたしも、似たような状態になったことがある。だから・・・待った。
テオ
「にい、、さん・・・アーランド・・・」
テオ
「シルフィリア、、さん・・・おれ・・・おれ・・・どうしたらいいの?」
ジョシュア
「・・・・・・」
マリア
「兄様・・・テオ、どうかした?」
ジョシュア
「いや、別に、なにもないよ」
マリア
「ん・・・?」
ジョシュア
あの日、思い詰めているテオをみてから・・・。 更に数ヶ月後・・・。やっと戻ってきた。
テオ
「ごめんね、マリア、ジョシュア、みんな・・・」
マリア
「いいのよ!テオが元気になってきただけで」
ジョシュア
「やっと、戻ってきたみたいだね、どう?負け犬くん」
テオ
「負け犬の遠吠え、聞かせてやるよ」
ジョシュア
「ふ~ん、それは楽しみだ・・・。長い間待たせたんだ、早く僕に追いつけよ?」
アンナ
その言葉に、みんなが笑う。
やっと、テオが戻ってきた・・・。
でも、少し心配、かな・・・。
アンナ
「みんなに迷惑かけたからって、頑張り過ぎたら、駄目だよ?」
テオ
「うん、ありがとう」
マリア
それから、テオは一生懸命だった。
でも、無理をしないように、それだけは言い聞かせていた。
そしてまた、数年の歳月が過ぎた・・・。
テオ
「ただいま」
マリア
「おかえりなさい。色々聞かれなかった?」
テオ
「聞かれたよ」
アンナ
「怒られちゃった?」
テオ
「いや、全然。ウルには何か言われると思ったけど、あいつが一番大人になってたな」
マリア
「そう、よかった」
テオ
「みんな僕のほうから来るのを、ずっと待っていてくれていたんだ」
ボブ
「仲直りできたってことか?よかったじゃねーか!」
テオ
「・・・やっと、踏ん切りがついたように思うよ」
ボブ
「おっ、やっーとテオ坊主帰還ってとこか?」
テオ
「うん、本当に長い間、ごめんなさい」
ボブ
「OKOK、んじゃ、一発いっていいか?忘れてねーよな?」
テオ
「うん!思いっきりお願いします!」
ボブ
「ちゃんと歯、食いしばっとけよ?・・・ふんっ!!!!」
テオ
「っつ~~~、へへ、これで元通りだね」
ボブ
「へへへ・・・ま、そういうこったな」
テオ
「それと、もう一つ大事な話があるんだ」
ボブ
「お、なんだ?」
テオ
「父さんって、呼んでもいい?」
ボブ
「あ?ああ、勿論いいぜ、なんだよ今更・・・」
マリア
「そうじゃなくてね、パパ」
マリー
「私のことも母さんって呼んでくれるのかしら?」
テオ
「勿論だよ、母さん」
ボブ
「えっと、ああ、、ん?」
テオ
「では、改めて・・・娘さんを僕にください!」
ボブ
「へ?・・・あぁ!?」
マリア
「実は、パパ、もうお腹の中に、居るの」
ボブ
「お腹?ま、まさか、ガキか!?」
マリア
「うん」
ボブ
「て、てめぇ!!いつの間に娘を孕ませやがった!?」
ジョシュア
「ああ、やっと告白したんだ?僕の妹は健気に何年も待ち続けていたよ」
ボブ
「はっ!?お前知ってたのか?」
ジョシュア
「もう、僕を妹離れできない兄だと思わないで欲しいな~」
ボブ
「あ、あぁ」
マリア
「パパのほうが娘離れできてなさそうね」
ボブ
「まぁ、その、な」
ジェシー
「鈍いわね~」
アンナ
「わたしもなんとなく気がついてたよ」
マリア
「兄様も所帯を持てばいいのに」
ジョシュア
「本気になるとモテてモテてかなわんのだ、妹よ」
ジェシー
「本当にね、テオもそうだったけど、ジョシュア宛ての手紙も、ものすごかったものね」
アンナ
「ね、もう、すごいよね、こことは関係ない手紙って、大体テオかジョシュア宛のラブレターなんだもん」
ボブ
「俺にはないのかー」
マリー
「あなたには私が居るでしょ?」
ボブ
「おう!照れるじゃねーか!もっと言ってくれよ!」
マリー
「あら?いいのかしら?」
ボブ
「ああ、いや、その、やっぱり照れくさいからいいぜ!あ、でも、そのなんだ、二人っきりの時は、いいぜ」
マリー
「それなら、あなたも言うのよね?歯の浮くような台詞」
ボブ
「ま、その、少しは、、な」
ジェシー
「相変わらず、ラブラブね~」
アンナ
「わたしとジェシーみたい」
テオ
「でも、どちらかというと、ジェシーとアンナが歳をとるにつれて落ち着いていったのに、父さんと母さんは逆だね」
マリア
「そうね~、私達が大きくなったから羽目を外しちゃった?」
ボブ
「ちっ!からかうなよ~!」
マリー
「いつまでも、元気でいてね 私の永遠の少年 」
ボブ
「ん、、お、おう」
ジョシュア
「ははは!まぁ、これでテオは手紙の呪縛から開放されるかな?」
テオ
「そうだね、手紙をくれるのはありがたいけれど、少しは減ってくれるといいね」
ジェシー
「二人とも律儀にちゃんと返事書いてるものね」
ジョシュア
「テオはそうかもしれないけど、僕は違うよ?本気だなってわかった人にだけ」
アンナ
「そういうストイックに冷たいところとかも、モテる秘訣なのかもね」
ボブ
「いや、俺が言うのもへんだけどさ、冷たいだけじゃそこまでモテないぜ?」
マリア
「兄様のことをちゃんと見ている人なら、それだけじゃないって気がつくわ」
マリー
「ジョシュアは自信たっぷりだから、見合った女性が現れるといいんだけど」
ジョシュア
「そうだね、それは自分でも思うよ」
テオ
「ジョシュアは、どんな人ならいいと思う?」
ジョシュア
「うーん、よく知らないけど、テオが好きだったシルフィリアって人みたいな女性なら、、もしかしたら」
テオ
「ははは、シルフィリアさんのような人は、そんな簡単には居ないよ」
ジョシュア
「それはわかってるよ。だからこそ、ね」
アンナ
「人生は長いようで短い、けれども、我が道を行こう、それが私の誇りであり、私の生き方だ。だから友よ、何度でも言おう、後悔はしていないと」
ジェシー
「ジョシュアの事みたいね」
アンナ
「フランク・シナトラのマイ・ウェイって言う曲の歌詞がそんなだったよ」
ジョシュア
「そうだね、後悔は、したくないから・・・」
テオ
「後悔して後悔して、それでも、前に進むのも辛いしきついけれど、悪くないって思えるときも来るさ」
ジョシュア
「それは君の生き方・・・だろ?テオ」
テオ
「ああ、そうだ。けど、間違いじゃないし、間違いであってもいいんだ」
ジョシュア
「負け犬の遠吠え、か・・・。随分と威勢のいい鳴き声だ」
テオ
「ジョシュア・・・。兄さんって呼んでもいい?」
ジョシュア
「・・・兄さんと呼んでくれるの?」
テオ
「駄目かい?」
ジョシュア
「馬鹿な、勿論いいさ・・・。本当に吹っ切れたみたいだね」
テオ
「吹っ切れたというか、踏ん切りがついたというか・・・。本当は、自分でもよくわからないんだ」
マリア
「ふふ、さ、あなた、兄様、今日のご飯は鳥のハーブ焼きとコーンポタージュよ、あと、美味しいパンがあるわ」
ボブ
「お、そいつは楽しみだな!・・・っと、ああ、悪いテオ、口、しみるかもしれないな」
テオ
「大丈夫だよ、父さん。暖かい痛みさ」
ジョシュア
「そうだ、どうだった?テオの描いた彼女の絵を、持っていったんだろ?」
テオ
「ああ、喜んでもらえたよ。それなりに、よく描けたと思うし、母さんほどじゃないけれどね」
テオ
そしてその日の夜、話があると、父さんに呼ばれた。
テオ
「話って、なに?父さん」
ボブ
「おう、渡したいもんがあってな」
テオ
「この、ワイン・・・」
ボブ
「・・・あいつがお前に渡したんだろうと思ってな、もって来ておいたんだ」
テオ
「ありがとう、父さん・・・」
ボブ
「おう、存分に感謝しろ」
ボブ
「娘のこと、頼むぜ・・・」
テオ
「・・・任せてよ、父さん」
ジェシー
落ち着いたときに、わたしは、録音したあの娘の歌を、音楽業界に送りつけた。
・・・今では、彼女の歌声は、至る所で聞くことが出来る。
わたし達が作った曲と一緒に・・・。でも、それを歌う彼女は、もう、この世界のどこにも居ない・・・そう、どこにも。
たった一曲だけの歌を遺して、16歳で時が止まったあの娘は、天使になった歌姫と呼ばれている。
アンナ
そして、あの時の医者は新種のエイズウイルスを完璧に治すワクチンを作り出し・・・。
それをほぼ無料で世界中に配り、救世主だと言われている。
でも、私は思う。多分、シルフィリアちゃんもその医者も、そんな風に呼ばれるのは好きじゃないのかもって・・・。
ジョシュア
「テオ、ちょっといいかな?」
テオ
「兄さん、ああ、ちょうど手が空いた所だよ、どうしたんだい?」
ジョシュア
「・・・二人だけで話したいことがあるんだ」
テオ
「それで、話ってなんだい?兄さん」
ジョシュア
「シルフィリア、彼女のことだよ」
テオ
「シルフィリアさんの話・・・?」
ジョシュア
「・・・僕も、君と同じでね、テオ、彼女に恋をしたんだ」
テオ
「兄さんも?」
ジョシュア
「彼女が死んだ時、僕は、一人で出て行っただろう?」
テオ
「ああ、マリアは、後から着いて行ったけどね」
ジョシュア
「そうか・・・あの時、僕は、外で泣いていたんだ」
テオ
「そうだったのか・・・」
ジョシュア
「君達の手前ね、僕は、一度会っただけで、あの娘に恋をしたから・・・」
テオ
「・・・兄さん、ちょっと待っていてくれ」
ジョシュア
「ん?・・・ああ」
テオ
「お待たせ」
ジョシュア
「お帰り、それは?」
テオ
「アーランド兄さんがくれたんだ、酒の味が分かるようになったら呑めってね」
ジョシュア
「あのおじさんが・・・。君の兄なら、僕の兄でもあるからね」
テオ
「ああ。あの後、マリアをくださいといった日の夜、父さんがくれたんだ。アーランド兄さんの家から持ってきてくれていたらしい」
ジョシュア
「そうか・・・じゃあ、貰おうかな」
テオ
「美味しいな、優しい味だ。ほんのりとした甘さに、しっかりとした味わいがある」
ジョシュア
「それだけじゃないね、この少しの酸味と渋さも・・・。これは、si vales valeo(シー・ウァレース・ウァレオー)?・・・はじめてみる銘柄だね」
テオ
「シルフィリアさんが造っていたワインだよ」
ジョシュア
「これが・・・なるほどね」
テオ
「ウル達にも持っていったから、これが最後の一本なんだけどね」
ジョシュア
「男同士で呑むには・・・上品過ぎるワインだね・・・。なのに不思議としっくりくるな・・・。彼等はワインは造っていないのかい?」
テオ
「名前は違うけれど、造っているよ。だから、持っていったんだ」
ジョシュア
「今度、そっちも呑ませて貰えると嬉しいね」
テオ
「お互い忙しいからね。でも、今度持って来るし、ウル達にも兄さんの事を紹介するよ」
ジョシュア
「楽しみにしているよ。そういえば、彼女がいなくなった後からなんだよね、定期的に援助してくれる人が増えだしたのは・・・」
テオ
「そうらしいね、僕も母さんから聞いたよ。偶然かもしれないって言っていたけれどね」
ジョシュア
「僕はなにかあると思っているけれどね。野暮な話、だね」
テオ
「・・・兄さんは、シルフィリアさんの・・・」
ジョシュア
「瞳だよ」
テオ
「兄さんは、瞳か」
ジョシュア
「そう、強い強い、母の瞳に、僕はやられた」
ロゼット
あれからも、小さな世界の取材を時折している。
テオは人の話を聞き、悩みを聞き、それに答えている。
世界中の人の悩みを、兄であるジョシュアと共に。
そして、あの白亜の家は、シルフィリアちゃんの子供たちが・・・。
大人になった子供たちが、もう一つの小さな世界として孤児院をしている。
ロゼット
「ねぇ、ルナ。あなた、小さな世界に興味があるっていってたわね?私の代わりに、取材、いってみる?」
ロゼット
私の言葉に、ルナは顔を輝かせて答える。
・・・テオのことにすごく興味がある感じだけれど、恋愛感情とも違う、知りたいという欲求・・・。
私達にはその探究心が大切だからね、多少グイグイいけることも大事。
それに、あの娘なら、気がつくだろう、小さな世界にある、そこにいる人たちの、小さな優しさに。
闇を一度見つめた人たちの、強さと愛に・・・。
ロゼット
「一回や二回じゃ無理だろうけれど・・・テオから、あの娘のことを聞き出せたら、一人前だぞ。そこまでの、あなたの言葉、あなたの文字を期待してるからね、ルナ」
マリー
「あら、いらっしゃい。何の御用かしら?」
ルナ
「あ、あの!初めまして!取材にきた、ルナと申します!よろしくお願いします!」
マリー
「ああ、あなたがロゼットの話していた・・・こちらこそよろしくね」
ルナ
「は、はい!よろしくお願いします!」
マリー
「ふふ、そんなに畏まらない(かしこまらない)でいいわよ」
ルナ
「は、はい!」
マリー
「ここを利用している人たちとは、もう話した?」
ルナ
「あ、いえ、、まだ・・・」
マリー
「そう、もしよかったら、みんなとも話してあげてね」
ルナ
「はい!次に来た時はそうしたいと思います!」
マリー
「ふふ、さ、ここが談話室よ。みんなを呼んでくるから、少し待っててね」
ルナ
案内された場所には、施設の利用者さんもいた。
今度話を聞いてみよう。
そうやって見渡していると、一人の男の人が声をかけてきた。
ジョシュア
「ん?君がロゼットの代わりに来た人、かな?」
ルナ
ロゼットさんから取材する人の写真は見せてもらっていたけれど・・・。
ジョシュアさんだよね、実際に見ると、すごくかっこいいかも・・・。
って、いけないいけない!私はテオさん一筋なのです!ふんす!
ジョシュア
「母さんから聞いてるよ、僕はジョシュア、よろしくね、ルナさん」
ルナ
「はい!ルナと申ちまっ!!・・・うぅ、すいません、噛みました・・・」
ジョシュア
「へぇ~、可愛いね」
マリア
「もう、兄様ったら」
ルナ
「あ、うぅぅう、・・・。あの、それで、みなさんにお話を伺いたくて!」
ボブ
「おっと、あんたが、ロゼットの、最初に来た時のあいつより若いな。っと、俺はボブってんだ、よろしくな」
マリア
「私は、マリア。ジョシュアの妹なの、よろしくね」
ルナ
「ルナと申します!よろしくお願いします!・・・・あの、そんなに若く見えますか?」
ボブ
「お?ああ、高校生くらいに見えるぜ?」
ルナ
「うぅぅう、やっぱり、この眼鏡と、髪型がいけないのかなぁ・・・」
ジョシュア
「僕は可愛いと思うけどね」
ボブ
「俺も、良いと思うぜ?」
ルナ
「うー、こう見えても、もう22なんですよぉ」
ジェシー
「あら、あなたがルナね、私はジェシーよ、よろしく」
アンナ
「ふふ、あんまり緊張しないでね。あ、私はアンナ、よろしくね」
ルナ
「はい!よろしくお願いします」
ジョシュア
「これで全員揃ったね」
ルナ
「あ、あの、テオさん、、は?」
ボブ
「あいつは、、今日中には帰ってこれるって言ってたんだけどな・・・」
マリア
「そのうちに帰ってくると思うわ」
ルナ
「そ、そうですか・・・」
ジョシュア
「君の目当てはテオ、かな?」
ルナ
「えっと、そうと言えばそうなんですけど・・・すいません」
ジョシュア
「ふふ、相変わらずファンがいるみたいだね。まぁ、彼が戻ってくる前に、聞きたいことがあったら聞いてよ、その間に帰ってくるさ」
ルナ
「はい!・・・では、その、この小さな世界が作られることになった経緯(いきさつ)とか、聞いてもいいでしょうか?」
マリア
「その話なら、ママ達の出番ね」
マリー
「そうね、けど、一番は・・・あなたね、ボブ」
ボブ
「そうだな、まぁ、もう20年以上前の話だ」
マリー
「あ、ルナさん、録音とか大丈夫?」
ルナ
「あっ!?・・・っとと、これで、、だ、大丈夫です!」
ボブ
「お?OKか?んじゃ、始めるぜ」
ルナ
ボブさんが 彼 との出会いを話す。
路上で倒れていたときの、出会いの話を。
ボブさんが彼を牧師さんと呼ぶ理由を・・・。
ジェシー
「それから、図々しく、私達の間に入ってきてね」
アンナ
「そうだね・・・でも、あの人がいたから」
ルナ
ジェシーさんとアンナさんからも、言葉が紡がれる。
心中しようとしていたときの出会い・・・。
その話が終わった時、赤ちゃんの鳴き声がした。
マリア
「・・・あ、ミルクの時間、ちょっと行って来ますね」
ルナ
「お子さんがいるんですね」
マリー
「ええ、私達の孫になるわ」
マリア
「あ、リナさん、この子達のこと見ていてくれてありがとう」
ルナ
「施設を利用している人たちにも、色々手伝ってもらっているんですね」
マリー
「そうなのよ、受付も、私の代わりにしてくれる人がいるの」
ジョシュア
「最初は人が少なくて大変だったんだけどね。今では定期的に援助金を送ってくれる人もいるし、ボランティアで来てくれる人も多くなったよ」
ジェシー
「そうね、すごく助かっているわ」
アンナ
「みんな、必要とされたがっているんだよ」
ボブ
「そうだな、社会にはでれないかもしれないけど、俺達みたいなことを出来る奴はいる」
マリー
「ええ、そうね、小さなことの積み重ねが大事だって言うなら、小さな助け合いだって、大切よ」
ルナ
「そうですよね・・・。でも、忙しい中で、みんな忘れてしまうのかもしれません・・・」
マリー
「そう、そうなのよ・・・。社会をつくっているのは、その人ひとりひとりなの、大変なのはみんな同じだから、そこで止まってしまうの」
ボブ
「人それぞれのペースってのがあるからな」
アンナ
「私達みたいなことを、してしまう人も居る、それは、とても寂しいことなんだ・・・」
ジェシー
「その分、仲はもっともっと深まったけれどね」
マリー
「ふふ、次は私達の出会いね、ボブが彼を紹介してくれたときの話」
ルナ
マリーさんはボブさんとの間に子供が出来た時の事
そして、彼と一緒にした、募金のことを話してくれた。
マリー
「その後にね、ジョシュアとマリアが生まれたのよ」
ルナ
「それで、その人は今はどこに居るんですか?」
ジョシュア
「ロゼットは話してないんだ」
ルナ
「あ、は、はい・・・自分で聞いて来いって言われて・・・」
ジェシー
「・・・殺されたわ」
ルナ
「・・・え?」
ボブ
「冬の日に、な。募金をしていた場所と同じところだった」
ルナ
「そんな・・・」
アンナ
「あの人のパソコンの中に、書いてあったよね。死の美学っていうのかな?そんなような事」
ジェシー
「そうね、かっこつけすぎだって思うけどね」
ボブ
「でも、牧師さんが死んでなかったら、多分、この小さな世界はなかったと思うぜ」
マリー
「そうね、今でも思い出すわ、鳥のハーブ焼きとミネストローネ、、美味しいって言ってくれた時の彼を・・・」
ジェシー
「そういう意味では、あの人の思い通りになったんじゃない?」
ボブ
「遺されたほうは、たまらねーけどな」
ルナ
「あの、もしかして、そこに飾ってある絵って・・・その人ですか?」
マリー
「ええ、そうよ、私が描いたの」
ルナ
その絵からは、優しい感じと 少しの影 を感じた。
ルナ
「すごい人だったんですね・・・」
ジェシー
「普通よ」
ルナ
「え・・・?」
ジェシー
「普通よ。社会に適応できなくて、そんな自分を嘆いて・・・。ただ、一つだけ違ったのは、あの人は手を差し伸べることが出来た人」
ルナ
「それって、すごいことなんじゃ、、ないですか?」
ボブ
「それが特別なことであってはならないんだ、みんながみんな、誰かに手を差し伸べられる人であって欲しい・・・。牧師さんが言っていた言葉さ」
マリー
「ええ、そう、そうよ。私達は彼を知っている、みんな、彼に助けられた。だから、自分達も助けることを学んだのよ」
アンナ
「でも、時々、助けるとか、救うとか、私はなんか違うような気がするんだ。なんだか、上から目線な気がして・・・」
マリー
「そうね、彼なら、なんていったかしらね・・・」
ボブ
「それこそ 手を差し伸べる でいいんじゃねーかな?」
ジェシー
「手を差し伸べて、その手を誰かが掴めば、それは手を繋ぎ合う事になるわ」
アンナ
「ふふ、いいね、そのフレーズ」
ルナ
「あ!そうです、ボブさんとジェシーさんとアンナさんは歌を歌っていると聞きました!」
ジェシー
「ええ、歌っているわね」
ルナ
「よかったら、聞かせていただけないでしょうか?」
ボブ
「俺はかまわないぜ~」
ジェシー
「いいわよ」
アンナ
「ルナちゃんは、どんなジャンルの音楽が好き?」
ルナ
「えっとぉ~、そうですね。意外と激しい曲が好きだったりします!」
ボブ
「激しい系か・・・。あ、ここにいる奴らは大丈夫かな?激しいの」
ルナ
ボブさんがそう言うと、周りから、構わないよ!やれやれ!という声がする。
マリー
「ああ、無理に聞きたい人に合わせなくていいからね、聞きたくない人は、数分離れていてくれればいいわ」
ボブ
「っても、みんな聞く気満々だな、よっしゃ!ギターとアンプをっと・・・」
ルナ
「そのギター、すごいその、年代物ですね!」
ボブ
「ああ、さっき話した、牧師さんのギターなんだ」
ルナ
「そうなんですか、すごい年季がはいってます!」
ボブ
「まぁなぁ、このSG、牧師さんが若いころに買ったとか言ってたからな、40年か50年はたってるかもな」
ルナ
「私の年齢の倍以上ですね、、SGっていうんですか、そのギター」
ボブ
「ああ、ギブソンのSGだな」
アンナ
「わたしはOKだよ」
ルナ
「あっ!それベースですか!」
アンナ
「そうだよ、フェンダーのカスタムジャズ、、まぁ、名前は長いからいいよね」
ジェシー
「さ、それじゃ、行きましょうか」
ボブ
「ちょっとまってな・・・よし!OKだぜ!」
///////////////////上に同じ、ジェシーが読むなり、テケトーに歌うなり、飛ばすなり、好きにしてくださいませ////////////////
掴んだその手を離さない あなたが例え 私達を拒んでも
私達は あなたを見捨てない 例え貴方が それを拒んでも
あなたにとってそれが優しさでなくても あなたにとってそれが苦痛でも
私達はその手を離さない いつかきっと あなたは戻ってくる
そう 信じてる・・・。
貴方が残骸の様に崩れ落ちても 優しい言葉は届かなくても
あなたを信じた人が居るから 私達も信じる
あの人たちの面影を追いかけて
戻ってきて 本当のあなた 傷ついた心を癒せる事を 私達は知っているから
信じてなんて言わない けれど温もりの香り この手の暖かさを感じて欲しい
あなたは 独り じゃない
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
ルナ
「わぁ!!すごいです!」
ジェシー
「ふぅ、どうだったかしら?」
ルナ
「メタル系の曲なのに、すごく優しい詩で、、ジェシーさんの歌もボブさんのギターもアンナさんのベースも、みんなすごくよかったです!」
アンナ
「ふふ、満足してもらえたみたいだね」
ルナ
「はい!ありがとうございました!」
ジェシー
「ロゼットの時も、こうだったわね」
アンナ
「そうだね」
ジョシュア
「父さん達の音楽は、誰かを楽しませるためにある、僕はそう感じているね」
ルナ
「そうですね、、やっぱり音楽っていいなぁ~」
アンナ
「ルナちゃんも、何か楽器、弾けたりするの?」
ルナ
「えっと、実はキーボードを少し・・・」
ジェシー
「へぇ~、私と一緒ね、今度ボブと一緒に弾いて見ない?」
ルナ
「いいんですか!?ぜ、ぜひ!あまり上手くないかもですけど・・・」
ボブ
「いいってことよ!」
ルナ
歌を聞かせてもらった後で、テオさんの昔の話と、現在の話になった。
明かされるテオさんの過去・・・。
そうだったんだ、私がテオさんに親近感を覚えた理由がわかった気がした・・・。
私も、昔、お父さんに・・・。
ボブ
「でよ、あいつ、牧師の資格とったんだぜ」
マリー
「ええ、それにジョシュアは弁護士・・・ここには必要だろうからって」
ジョシュア
「僕に出来ない事はないからね」
ボブ
「まぁ、俺達の子にしちゃ出来すぎだわな。お前に似たのかも」
マリー
「あら?そうかしら、あなたに似たところもあるわよ」
ボブ
「あぁ・・・うーむ、そうか?性格と言いなんといい、俺には似てないような・・・」
マリー
「あら?料理が壊滅的な所とか、怒ったら意外とすぐに手が出る所とか、そっくりよ」
ジョシュア
「ちょっと、母さん、最近はそんなにすぐには手を出さないよ、言葉で十分勝てるし。まぁ、料理は、その、ね・・・」
ボブ
「駄目なところばっかりじゃねーか!」
マリー
「そうかしら?言い出したらテコでも聞かないところとか、そっくりよ」
ボブ
「そうかぁ?俺、結構人に言われて、変えちまうことあるぜ?」
マリー
「そういう事を言ってるんじゃないのよ」
ボブ
「?」
ジョシュア
「芯の部分だよ、父さん」
ボブ
「芯、、かぁ・・・」
ルナ
「あ、あの、ジョシュアさんは弁護士って言ってましたけど、どんなことをしてるんですか?」
ジョシュア
「そうだね、ここだけじゃなくて、いろんな人の仲介をしたりしてるよ」
ボブ
「そうだよな!それだけじゃなくてよ、こいつ、殆どむ・・・」
ジョシュア
「やめてよ父さん、そういうことは、ひけらかすものじゃないでしょ?」
ボブ
「まぁ、それもそうか」
アンナ
「ジョシュアって、自信満々なのに、天狗にならない所がすごいよね」
ジェシー
「そうかしら?自信が顔に出てるわよ」
ジョシュア
「自信はあるからね・・・。それにしてもテオ遅いな」
ルナ
「そうですね・・・。もう、日が傾いちゃいましたね」
ジェシー
「時間、大丈夫?」
ルナ
「大丈夫です!いざとなれば車の中で寝ます!」
マリー
「若い女の子なのに危ないわよ?よければ、泊まっていくといいわ」
ルナ
「え、でも・・・」
テオ
「ただいま」
ジョシュア
「っと、帰ってきた」
ボブ
「よぉ!牧師!長旅ご苦労さん!」
テオ
「その呼び方はやめてってば、ここでは、ただのテオなんだから」
マリー
「ふふ、おかえりなさい、この人が話していたインタビューの人よ」
ルナ
「あ、、初めまして!ルナって言います!」
テオ
「ああ、君が・・・ご苦労様、疲れてないかい?」
ルナ
「いえ!大丈夫です・・・それに、テオさんに話を伺いたくて来たので!寧ろ元気百倍です!」
テオ
「ははは!そうか、それならよかった」
ルナ
「えっと、それで」
マリア
「はいはーい、パパのおかえりでちゅよ~」
ルナ
「わぁ、かわいい!」
ジョシュア
「寝てたね?」
マリア
「寝かしつけていたら、一緒に寝ちゃった」
テオ
「はは!ああ、私の子供達だ、双子の男の子でね。兄のアーランドと弟のユライプだ」
ルナ
「え・・・ユライプって・・・あの、テオさんのお父さんだった」
テオ
「嫌いだった父さんの名前をつけたのが、不思議かな?」
ルナ
「え、、あ、はい、ご、ごめんなさい!」
テオ
「気にしないでいいよ、そうだね・・・。昔、私が妻に乱暴をしたときを思い出して、思ったんだ・・・。ああ、父さんも私の一部なんだなって・・・」
ルナ
「一部、ですか?」
テオ
「そう、血筋っていうのかな、父さんの駄目な部分も私に受け継がれている。そして思ったんだ、父さんも寂しかったんだろうって・・・」
ルナ
「寂しい、、ですか・・・」
テオ
「私を最期にみた父さんは、笑ってたんじゃなくて、泣いていた、からね」
ルナ
「私には、難しいです・・・。けど、けど、なんででしょう、なんだか、とても優しい気持ちになりました」
テオ
「ふふ、さて、それを知っているということは、私の話はもうあらかた聞いたかな?」
ルナ
「は、はい!」
テオ
「じゃあ、これからの事を話そうか」
ジョシュア
僕達が連れてくる人たちは、犯罪歴があったり、独りで生きていて、狭い狭い、けれど、頑丈な壁を持った。
そんな人も多い。暴力的でどうしようもない、そんな人も居る・・・表向きはね。
マリー
どうにもならない人も、確かに居る。テオの父親の様に・・・でも、もしかしたら・・・誰かが手を差し伸べていたら、その手を掴んであげられていたら・・・。
私達は、そのもしかしたらを信じている。
ボブ
あいつは人から感謝されて、すごい人だとか、神様のようだといわれるが、その度にこう答えている。
「自分はそんなにすごい人じゃない、偉い人でもない、ただ、出来ることをしているだけだ」ってな。
アンナ
全然タイプは違うのに、穏やかに話す様子は、まるで、そう、あの人を見ているみたいだった。
救える人が居たら救いたい、ううん。救うって言ういい方は違うかもしれないけれど・・・。
表面だけじゃなくて、その人の内側を見せてもらいたいから、きっと、本当にダメな人なんて、そんなにはいないと思うから。
マリア
小さな世界は広がっている。けれど、今も、そして、これからも、変わらない、幸せを探す場所。
その場所を作った、彼と、私達の物語。
ジェシー
もう一人の彼と呼ばれているテオと、その仲間達の物語。
辛いけれど、悲しいけれど、これは、希望の物語・・・。
パンドラの箱、その中に出来た、小さな世界の物語。
小さな小さな幸せの話。
///////////////あとがき/////////////////////////////////
いやぁ、バッドエンドじゃないよね?大丈夫だよね?相変わらず死ぬけどさ・・・。
シルフィリアというキャラは、自分の中で本編といっている世界のメインキャラです。
どっかで見ることもあろう、セティルとかアレスとか絶影とかアヴェイユとかもそうなのですが・・・。
まぁ、この本編の話は、いつか死ぬまでに書ければいいかな、と思っています。
さて、そのなかで難点なのはこのシルフィリアのお嬢さんなのです。
見かけとか性格は決まっているのですが、いかんせん、なんかイメージがつかめません。
かなりお気に入りのキャラなのですが、よわったことに、うまく書けません・・・。
このシルフィリア・ファインシルツ、慈愛の聖少女と呼ばれている彼女を、絵と台詞とで納得がいく具合にかけるようになったら、私の創作冒険は一区切りつけるかもしれません。
まぁ、エイズのくだりとかは、色々考えると、現実的ではありませんが、許してください。
本当にこういう病気の人は大変というか、そういった言葉だけでは足りないものでしょうから・・・。
さて、蛇足的にメインキャラクターの髪の色と瞳の色でも書いておきますか。
彼 黒髪 黒眼 髪型は手入れのしてないボサ髪
ボブ 黒髪 黒眼 髪はアフロとまでは行かない感じの天然パーマ
マリー 栗色 茶色の瞳 髪型は肩に届かないくらいのボブカット
ジェシー 薄めの金髪 瞳はグリーン 髪型はセミロングウェーヴ
アンナ 黒髪 黒眼 髪型はロングストレート
ジョシュア 銀髪 金眼 髪型は普通・・・まぁ、シャギはいった感じ?w
マリア 銀髪 金目 髪型は少しウェーヴがついたロング
上記二人はぶっちゃけありえない。アルビノだとでもおもってくだしあ
シルフィリア 濃い金髪 濃い蒼眼 一本三つ編みロング
テオ 髪色 ゴールデンブラウン 瞳 ゴールデンブラウン 短めの髪型。十数年後は髭あり
ロゼット 薄い金髪 瞳はブルー 癖のあるロングウェーヴ
ルナ 髪色 桃色 瞳 イエロー 髪型 二本三つ編み (髪がピンクとか、ありえないよね・・・うん。まぁ、イメージだし・・・)
ユライプ 髪色 薄いゴールデンブラウン 瞳 同じく薄いゴールデンブラウン 髪型は襟足長めの短髪
一応、ヘタなイラストも描いてはあるのですが…以上です!
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うむ、終わりじゃ…これの未完成の…外伝というか、終わりの奴もそのうちポーイするだ
…わかる人には、わかるだろうが…色々な要素、というかキャラが混ぜ込んである。
ウルフリックはスカイリムだし、ロゼットは自分のイメージでは、クロノクルセイドのロゼット・クリストファである
マリア、ジョシュアは…ブラックラグーンのあの双子である
アンナは…けいおんの澪であるし、ジェシーは東方のアリスである。
…話はいきなり変わるんだけど…わしINFJ型って数年前になんかの…テスト?やったら出たのよね、提唱者とも書いてあったけど…
なんか、えらいレアらしい…なんとなーく最近YouTubeとかでも聞くようになったからぼーっと見てるんだけど…あぁ…当てはまるなぁ…というのが多い…が…無駄に英雄的思考が強いだけで、別段、ほかとあんまり変わらんぞ?と思っていたのだが…よくよく考えてみると…なんだかそんな事はないような気もしてきた…
よく言われるのが、そこまで考えるんだ…”普通”の人はそこまで考えないよ。と言われる…
わしが考えすぎなんじゃなくて、貴公らが考えなさすぎなんだ!頭ついてんのか!小豆でも詰まってんのか!?…みたいに考えていたが…どうもおかしいのはわしの方なのかもしれないなー
そして、世界とは…弱者と強者は一緒に入られない相容れない存在である。
…結局最後には、どちらかを選ばなければならない。
両方を取りたいというのは…理想どころか妄想に近い。
…もしそれでも、というのなら…そんな世界を作って見せろ!
そう言って…引き金を引いたり引かせたりした…そう…その言葉と理想こそが…争いと闘争を産むのだ。
私と同じで…世界そのものが、二律背反しているのである。
そう…私こそが神だ!!…うん、優しい世界の話もおもろいが、正直こんなのも間違っているとは思えない。
誰でも無料でお返事をすることが出来ます。
お返事がもらえると小瓶主さんはすごくうれしいと思います
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