扉の開いたエレベーター
乗りません の意思表示
下を向き
顔を背けていたはずなのに
見てしまった
「開」を押したあの指先が
ためらいがちに 下りたこと
左手に抱えた赤ん坊は
寒さに凍えていなかったろうか
毛布と父の胸に
守られていると分かってはいても
左手に抱えた赤ん坊は
寒さに凍えていなかったろうか
北風の歩道橋で
手をつないだと知ってはいても
泣きたい時は泣いてもいい
でも
好きで泣きたいわけじゃない
涙の底で叫ぶことを
どうかどうか、許しておくれ
気づかないで届かないで
でも
ふれてあげたいと思う
卑怯者の僕はどこへ向かうんだろう
もう消してやるな
押さえてやるな
お前が見に行く先々は
きっと
お前に必要なひかり
hatose