試験には、黒を着ていった
上から下まで黒づくめだ
マスクだけは白だった
とても新鮮だった
黒は、
忘れられる色
音も光も
吸い込んでくれる
不吉だから 女だからと
禁じられていた色を
浪人がバレる
という冗談みたいな理由で
許してもらった
安いコートと
真っ黒のズボンは
憧れだった学ランに似ていた
ガラスに映った自分を見て
ほんの一瞬だけ
気持ちがはずんだ
試験は好きなので
楽しかったが
結果には満足できない
勝負は来月
誘惑に堪えてきた
きみの努力は報われる
春には
楽しい毎日が待ってる
あたりまえのように言われると
誘惑どころか希望も見えず
単に苦しんでいる自分は何なのかと
目薬まきちらしたい衝動に駆られる
心を支配している
虚無感
その正体が今日うかんだ
何かをだまし取られてきた
という思い
だから、
わいてくるものは
足りない でも
ほしい でもなく
「返せ」
親への恨みつらみを
書きつづる時期は過ぎた
なんど打ち明けても
肝心なところは語れないし
自分の弱さが増すばかり
いつまでも昔の時間を
生きているわけにはいかない
ただ、これだけは言いたい
全て事情があって
親にも悪意はなかったけれど
何もかも雁字搦めの19年は
誰が何と言おうと
苦しかった
本当に親不孝だと思うけれど
このまま家族と一緒にいて
克服できるほど
自分は強くないかも知れない
死にたい を押し殺して
闘いたいを前面に
外に出してほしいと
できるだけ静かに、交渉
一度離れて
少しでも成長すれば
両親ともうまく行くように
なるんだろうか
疲れて、頭が動かないから
同じことばかり考えて
時間がとても、もったいない
あれもこれもダメ
でも
生きなきゃいけないし
それなら自分は
進みたい
ないもんは、ない
持ってるもん
全部使って 生きる
黒は汚れが
目立たないから
包容力がある
何となくそう思う
「黒い服着たいんだけど」
頼みこんで
良かったな、と
あと一ヶ月
下は向いても後ろは見ない
今 を淡々と越えていく
頑張ってきます
hatose