「うっわ、何あのブス!」「やばー、かわいそー!」
「あの顔で一生過ごせって言われたら即自殺だわ~みたいな(笑)」
電車の中でそんな声が聞こえてきたので、
顔を上げたら斜め向かいの女の子たちと目が合った。
「こっち向いたじゃん!」「ちょ、マジやばい(笑)」
どうも私に対して言っているようだった。
いつもなら目をそらしてイヤホンを耳に突っ込んで
何もなかったことにするけど、なんでか体が動いて、
私はその子たちの目の前に立った。
「やばいやばいって、やばいのは、キミたちだろう」
その子たちの顔をしっかり見て、ゆっくり言った。
目のすぐ下にチークを入れて、バサバサすぎない
つけまつげをした、今どきっぽく可愛い女の子だった。
まぁ、確かに比べてみれば私の顔などとは
入れ替えたくはないだろうな、と思いながら
元の席に戻ろうとしたら、スーツの人に座られていた。
「あー…」と思わず声に出すと、
先ほどの女の子たちのひとりが「ドンマイ」と
声をかけてきたので、少し驚いた。
これといって悪口を謝られただとか、
その後仲良くなったとかそういうことはないのだけれど、
今日はなんかいつもと違う日だなぁと思いながら過ごした。それだけ。