僕は気まぐれな猫である
独りになる夜は
君が眠った後の夜は
見知らぬ人と唇を重ねて
時折身体も重ねて
夜を愉しむ
君が手招きすれば
従順な猫のように
君は知っている
僕が汚れた野良猫であると
そんな綺麗な寝床では寝ないし
その程度の刺激では物足りない
もっと餌が欲しい
僕は飢えているのだ
餌をくれる人が好き
美味しい餌を
欲する時に求めるだけくれる人
僕は容姿の良い猫だから
撫でに来る人間は少なくない
噛みつく癖も
ひっ掻く癖も
その傷も愛しいと撫でる
愚かだな
僕を飼いたいと泣き
五月蝿い声に顔を顰めて
僕は塀から飛び降り
草むらへと逃れる
近所の猫を片っ端から抱く
そんな姿を見るのも好きで
その猫は僕の毛色に似ていたり
ああ、僕を探しているのだね
そこらの猫は容易に鳴くけれど
僕は君のためだけに鳴く
僕は君だけを想って鳴く
希少価値
鳴かないよと前置きしても
それでも罠に嵌る
人間は愚かだね
僕のために泣けばいいよ