『電車通勤』
リュックの人に突然話し掛けられた
次の日朝。
ホームには昨日と同じようにリュックの人がいる。
いや、昨日とちがう。
「おはようございます!」
「ーーおはようございます。」
挨拶が付いてきた。
流れで電車内では隣に立ってしまった。
「いつも駅で見掛けてて、気が付ついたら手に包帯してたんで、あれ?と思って…すみません。」
「いえ、大丈夫ですよ!」
リュックの人の申し訳なさそうな言い方に思わず笑顔がでた。
「電車通勤ももうすぐ終わるんですよ!」
「そうなんですか?」
「今年新卒で入って研修が今の職場であってて、研修が終わると本格的に配属先が変わるんで。」
「それで電車通勤が終わるんですね。」
他愛もない会話をしていた。
リュックの人は大卒、私は短大卒なので歳が少し違うこと。
出身地が他県だと言うこと、仕事の話、学生時代の話…
"悪い人では…ない…よね"
「じゃ、駅に着いたんで!いってきます!」
「いってらっしゃい。」
駅で見掛ける人から、
朝逢えば挨拶をし、電車内で世間話をする。顔見知りのリュックの人になった。
一つ不思議なのは昔から知ってるような感じ…。
そんな関係が数日続いたある日。
「今日で電車通勤も終わりです!」
「あ!明日で配属先が変わるんですね!」
「明日からこんなにしゃべる奴居ないんでゆっくり休んでくださいねっ!」
「ーーいえいえ。」
ニコニコしながら喋るリュックの人に何て答えたらいいんだろう。
「あの、名前…聞いても…いいですか?」
リュックの人言われるまで名前を知らなかった。
「ぁ、ハヤシダです。」
「ん!?俺、ハヤシです。ちょっと似てますねっ!」
ニッと笑うハヤシさん。
…私は思わず目線を窓に移した。
見馴れた田んぼが広がってる。
と、その間にハヤシさんはメモ紙を取りだし何かしてる。
"?"
こっちを向かないハヤシさん。
私とは反対方向を見て、息を吐いてこっちに向き直した。
「あの、これ…」
と言われ渡されたメモ紙。
「?」
「良かったら連絡ください。迷惑だったらゴミ箱に入れていいんで!」
メモ紙見ると携帯の電話番号が書かれていた。
「…ありがとうございます…」
「あ!席空きましたよ!俺はもうすぐ降りるんで!」
「…じゃ、」
私は座り、小説を読み始めた。
ハヤシさんは駅に降りた。
ハマっていたはずの小説の内容が入ってこなかった。
ーーーーーーー
実話です。また小瓶流します。皆さんどう思われますか?!