この恋は叶わないから、綺麗な思い出に書き換える。
どうしてあんなにいい顔で、くだらない話聴いてくれたの?
どうしていいのかわからずに困っている私のために、会話を止めてくれたのは何故?
寂しいときも側に行きたかったけれど、やっぱりいちばんは、楽しい時を一緒にわらいたくて、毎日がカラフルでした。私がわらうときあなたも微笑む、その瞬間がすきで、だから一緒にいたかった。
なに考えてるのかわからないって友だちは言ったけれど、ちゃんとみてたらわかるんだよ。うれしいとほんのり柔らかになる目尻とか、困るとかすかに下がる眉とか。
あのときは勝手に首突っ込んでごめんね。あなたみたいに受け流せなくて、あなたのこと悪く言う言葉が許せなくて。私だってちょっと仲良いだけ、あなたのことわかってないくせに、だってこんなに悲しい顔してるのになんでこいつらわかんないの、って怒っちゃって横から入って喧嘩して。
ふと我に返って見たあなたは困ったような顔で。一気に冷めた。傷つけた、って。
あいつらが去って、ごめん、っていうとあなたはぶっきらぼうに、お前は俺の母さんか、って。
どういう意味だったのかな。
ごめん、やっぱなに考えてるかわかんないや。
わかんないけどその言葉が何故かひどく痛くて、いっぱいぐるぐる考えて泣いて、どうしてこんなに気になるのかな、って。
いつもあの5人でたのしかったよね。
そのうちの、軽音楽部の子がライブするときはいつも一緒にみにいったね。私はあんまりバンドとか詳しくなくて、でも視聴覚室のあかりにあなたの横顔がたのしそうで、後で聞いたらすきな曲なんだって教えてくれて、聴くようになったよ。
歌はすこし下手だったね。だけど文化祭、コールアンドレスポンス最前列でみてたらマイクを向けられて、驚いた顔をしたけれどうたってたね。ぎこちないうた声はむしろ、みんなを和ませてて。終わった後、みんなわらってるこういうのがすきだなあって言ってた。恥ずかしそうに俯いたまま。
私の髪は短いけれど、頑張って編み込めばアップにできる。打ち上げで試しにやって行ったとき、面白かったな。目があってからすこし目線が止まって、指さきで頭をちょんとつつかれたのはびっくり。そのまま真面目な顔で、これなんだっけ、三つ編みの親戚?って。そんな感じかも、答えながら紅くなっていったのは私のほうだけ。
冬が来て、最後の試験が迫って、毎日放課後に残って勉強したね。前の方の席、やたらと姿勢のいい背中を時々見ながらだから頑張れた。6時半の最終下校まで粘って私が教室を出て一歩後ろであなたが電気を消して、私は夜の学校っていいなー!なんてはしゃいで。
マフラーをぐるぐる巻いて、すこし間を空けてだけど並んで歩く、門までの時間がだいすきだった。職員室からのあかりに浮かぶ横顔、いつまでも見られた。
そんな試験中だったけれど、ささやかながらバレンタインのチョコもつくった。カモフラージュみたいにみんなに配っちゃった。
違うの渡せば変わってたのかな。
春が近づいて、進路の違う私たちは絶対にクラスも離れるから。ふわふわしてた気持ちはだんだん重く痛くなって、抑えるのが大変で。
あなたのせいじゃなく、私がうまく出来なくなって、すこしずつズレてくるって気まずくて。
最後の行事の合唱は、あんなに毎日練習があったのにずっと離れていた。
せめて綺麗な伴奏をする、そこに思いを込めることしか出来なかった。
始まりから一年がたって、また文化祭が巡って来ました。
クラスの宣伝に歩きながら、去年一緒に宣伝をしたときを思い出してました。まだ自覚はなかったけれど、ちょっと前を歩く背中をずっと見てました。
歩幅が私よりも大きなあなたには、すぐに置いていかれてしまいます。最初からずっと、待ってくれることなんてありませんでした。走って追いかけるのはいつも私だけでした。
クラスの離れた友だちの、それでもみにいったライブ、最前列にはあなたも来ていました。暖かくなるにつれ、すこしずつまた元のように話せるようになっていたので、来てたんやー!なんてはしゃいで。
内心、焦ってました。
元どおりの良い友だち。それはもう私には演技でしかなかった。
だからもしも今日会えたら終わらせよう。そう思ってたから。
まさか朝一番に会ってしまうなんて。
結局そのときは言えなくて。
2日目の終わり。決心して、後夜祭までの時間、探しに行った。教室に行ったら、みつけてしまって。
勇気が出なくてウロウロして、通りかかっただいすきな友だちに話をしてぎゅうーっとしてもらって。
なりかかってた癖の過呼吸が、それでなんとか収まったから、戻って名前を呼んだ。
ちゃんと目があって、来てくれたのに。ひとり 連れ出されたあなたは多分わかったのであろう顔をしてて、私はもうはんぶん泣いてたけどちゃんと言うつもりだったのに。
あなたは通りかかったクラスの子に手が足りないのだと言われて、
そしたらあっさりと、ごめん後で、なんてついて行ってしまった。それっきり。
後夜祭たのしかったしラストの花火は綺麗だったけれど。
答えなんてわかってる。
私なりに頑張った(といっても大したアタックはしてないけれど)春、距離をどんどん置かれて、辛くて友だちをまた演じたらあからさまにほっとしてて仲良しで、落ちつく友だちでいてほしいのわかってて、
もうどうしたらいいのかわかんない。
もうあんな勇気出ないよ。
静かにフェイドアウトしていけるかな。
帰りの方向の違うあなたと、話があんまり盛り上がったから遠回りして一回だけ一緒に帰った、自転車を押しながら見た空と たのしそうな横顔を、やたらと思い出すんだ。