ぼくはずっといい子だったんだ。顔も頭もそれほど悪くなく、そんなぼくに両親や親戚は期待している。バイト先の人たちも優しくて、失敗ばかりのぼくを責めたことは一度もない。ぼくが志望した美大でも特待生だ。頑張ってるだろ?
でもな、そんなのぜんぶたまたまなんだよきっと。周りを見ればわかる。ぼくよりすごい人なんていくらでもいて、素敵な人もいくらでもいて、ぼくはね、ほんとはいい子なんかじゃないんだよ。才能以上のものを好きになってしまっただけなんだよ。だれかに否定されるのが怖くて外に出ることもできやしない。描いてる時も、こういう絵を描く自分を演出したいだけなんじゃないかと、ぼくがほんとうに描きたいものはなんなのかわからない。
父さんも母さんも、ぼくに好きな道を選ばせてくれた、素敵な人間だよ。だからふたりが悪いわけじゃない。なのに、どうしてこんな人間ができてしまったんだろうね。もっと素直で明るい子に育つはずなのにね。自分の好きなことに打ち込んで生き生きと生きていくべきなのにね。ごめんな。ぼくはこの世界に生まれてこなきゃ良かったと思ったことはないし、生まれてごめんなさいと思ったこともないけど、生まれたのが僕じゃなければ良かったねと思うことはあるよ。ごめんな。やりたいことをやらせてやろうって送り出してくれたはずなのに、ぼくはそのやりたいことさえ満足にできずに疑問を持ちながら生きている。
ぼくから絵をとってしまったら人間関係が下手な人間だけが残るのだけど、そもそも「もし絵をとりあげたら...」と例え話をするほどの才能もないんだよ。ごめんな。ぼくは子供を持つつもりもないから、孫を見せるというかたちの親孝行もできないね。ごめんな。あなたたちは素敵な人間だから、生まれたのが僕じゃなければ良かったよ。でもあなたたちは素敵な人間だから、ぼくが死んだらきっと泣くんだろうな。自分たちのせいだって泣くんだろう。違うよ。ごめんな。なんでそんなに素敵な人間なんだよ。あなたたちがもっとひどい人だったなら、ぼくがこの世界で頑張る理由も無くさっさと消えることが出来たのに。
こんなことを考えるのもさ、きっと遅れてきた中二病なんだよ。全部戯言だよ。甘えてんだよ才能無いのだって努力が足りないだけだよ。でもぼくはね、ぼくよりぼくの絵を好きでいてくれる人を探しているんだけどね、それがこんなにしんどいものだと、ただ絵が好きなだけのむかしのぼくは思ってなかったんだよ。
名前のない小瓶
53624通目の宛名のないメール
お返事が届いています
ななしさん
芸術家に、素直で明るい子なんている?
そんな人は、絵や物を使って自身を表現などしないでしょ。
いい子でいなければならなかった貴方には、同じ境遇として共感はしています。
けど、いい子のまま大人になってしまうといつか必ず、親のせいにして生きる事になってしまう。
でも、親御さんは貴方に何を期待しているんでしょうかね。
芸術に道に進むと言えば、大抵の親は反対すると思います。
その道で食べて生けるかどうか、不安視するでしょ。
親は割と見抜いていますよ。
期待と思っているのは貴方だけで、親御さんは貴方の得意不得意を良く存じて、敢えて貴方の好きな事をさせる為に自由にその道を選ばせているだけなのかもしれませんよ。
文面だけですが、貴方には品性がある。
バイト先でも出会う人が良くしてくれるのは、単に顔や頭や良い子を演じているからではないですよ。
この品性だけは親御さんの愛情の元に育った方にしか備わない物なのですよ。
親御さんを素敵な親だと言う観点がずれ過ぎています。
育った環境が、人間を作っていきます。
貴方の品性は、生涯に貴方を助け、貴方に徳を与えてくれる物だと私は、思っています。
いい子でいる事が親孝行?
それは、貴方が間違っています。
親に背を向ける事で、親も成長する。
これが、正常な親孝行なのです。
まりちゃん
もう、親のために生きるの
やめたら?
だから生きづらいんだよ。
いい親、毒親、関係ないよ。
人間関係、下手くそなまま
転がる勇気
だろうな。
ななしさん
好きなものに、打ちこめていた主さんは幸せです。
両親もね、きっと貴方だから好きな事をさせていたんですよ。愛されているんです。貴方は。
ななしさん
読んでいて、涙が止まりませんでした。
私は小さい頃、絵を描くことが好きでしたが、ぱったり描かなくなりました。
私は勉強も全然できない子でした。保育の学校に通わせてもらったけど、進路が自分で決められず、なんとなく選んだものでした。その道には進まなかったです。親にとってかけてくれたお金はムダだったことでしょう。。親の望む、世間や常識的な生き方も出来ていません。
親の望む理想的な姿と、自由に生きたい私の狭間でずっと苦しいし、人生が楽しくありません。
だけど興味を持ったことは徹底的に調べて、誰よりも詳しくなれたりする所があります。その時に意味が無いことだとしても、後で役に立ったり、器用にこなせたりしました。 絵を止めたとしても、他の才能や好きなことが沸き上がってきたら、とりあえず受け入れてみてほしいと思います。続かなくてもいいから。
お互いに、親から自由になりましょう。
親も私も悪者では無いですが、心の距離がすごく離れていて、お互いの気持ちが理解しあえません。
久しぶりにぼろぼろ泣いたのは、やっぱり親に認められない自分が苦しくて。なのかな。
自分からは逃げられないから、上手く付き合って楽しくなる人生にしていきたいですね。
冬
絵は自分の排泄物だから人に見せるもんじゃないと言って描くのをやめた知人がいました。
描く理由はそれぞれ。
絵と主さんは主さんの中では別々のものなの?私は案外承認欲求なのかと思った。違ってたらごめんだけど。
自分の思うように接して貰うことが大事なのかなと思った。
のたうち回るのはしんどい。
好きになって貰うのはしんどい、ね。
一番の理解者は誰なんだろう。誰であって欲しいんだろう。
昔、絵が好きだったのはなぜ?
以下はまだお返事がない小瓶です。
お返事をしていただけると小瓶主さんはとてもうれしいと思います。