少年が一人いました。
彼には友達と呼べるような友達がいませんでした。
彼の周囲には彼と同じ様な人間が何人も集まっていました。少なくとも彼はそう思っていました。彼らはよく話しました。
その日は一人で下校してました。たまたま用事があって遅くまで学校にいたのです。
トボトボ歩いていると、足下から声が聞こえてきました。「助けて、助けて」と。
視線を下げるととても小さな人が石の下敷きになっていました。彼はその小さな人を助けて、手のひらに乗せました。
「助けてくれてありがとう」と小さな人は言いました。こうも言いました。「お礼に願い事を叶えてあげます」
それを聞いて彼はポツリと言いました。じゃあ友達になってよ、と。
それから二人はとても仲良くなりました。
小さな人は不思議な力を持っていました。彼がある日、明日テストなのに全然勉強できてないんだ、と言うと「じゃあ僕の力を使って助けてあげよう」と小さな人は腕を振るいました。すると彼は明日のテストの内容をスラスラと口にできるようになりました。
あの子に告白したいけど勇気がでないんだ、彼がそう言うと小さな人は腕を一振り。彼の中に勇気がわいてきました。
その後も彼が相談する度、小さな人は不思議な力で彼を助けてくれました。
そしてある日、彼は小さな人に言いました。今日はとても暑いけどこの部屋にはクーラーがないから大変だ、と。「わかった僕に任せて」そう言った小さな人は随分小さくなっていました。けれど彼は気づきません。小さな人は腕を振るいます。まるで開いた冷蔵庫の前に立つようなひんやりとした心地よい冷たさが部屋を満たします。
それで、終わりでした。小さな人は、それで、おしまい、でした。
……別に例え話とかじゃないですよ。普通にフィクションです。それにしてもこの小瓶流れるだろうか。重さで沈みそう。