係長が新入社員くんに色々と指導している横で、
パートのおばさんは、帰る前に周りのあれこれを片付けていた。
すごく頑張り屋さんの女性係長、
彼女が人を叱るようなことはないけれど、
周りに聞こえないよう低めの声で
彼にだけ聞こえるように静かに話す様子から、
まぁ、新人時代はいろいろあるよね、大変だよね、って思いながら
私は私で手を動かしていたら、
「いい?くさったらお終いだよ」って係長の言葉が耳に飛び込んできた。
ハッとして思わず彼らのほうを見た。
途切れ途切れに聞こえてくる内容から、
他の人のミスを、そもそもがまだまだ仕事に不慣れな彼が
処理しなくてはならないようなことがあったらしい。
係長はまた繰り返す。
「くさったらお終いだからね。ダメだよ」。
男前の係長の、この淡々とした、でも力強い言葉が、
あの日以来、ことあるごとに頭の中に響く。
いろいろと不本意な流れで今の場所にいる私。
どうしたらよいのかわからないまま生きてきて、
流れ流され、とにかく生活のためにと選んだ今の職場。
体力と自尊心が削られ、みじめな思いも味わったけど、
逃げることは簡単だけど、
結局また振り出しにもどるだけだ、だから今しばらくは、ここで頑張るしかない!
そう思って頑張ってきた。
いつしか3年が経って、続けるってことにはそれなりに意味があると感じる。
嫌な人たちはだんだん片隅に追いやられ、
新しい人たちで良い連携が生まれ、
続けているから少しは仕事も覚えて頼まれたり、
こちらから引き受けたりすることも出てきて、
いないよりはいたほうが助かる程度の人員には数えられるようになった、と思う。
嫌な人たちも、周囲が私をあだ名で呼んだり
冗談言ったりして仲間に入り込んでいるのを、もう無視できない。
少しずつ当たりが柔らかくなってきて、
前よりずいぶん居心地がよくなった。
だんだん居心地よくなって、でもだからといってこのままここでやっていくわけにはいかない。
疲れすぎて体調を崩したり、死ぬかも! と思ったほど危険な目にあったりと、
ハードすぎて長く続けられる仕事じゃないから。
時々、何もかも投げ出したくなる。
もう何もかも!
そうして家に閉じこもって、貯金が完全に底をつくまで(3ヶ月も持たないな)、終わりの日が来るのを待とうか。
そんな考えが頭をチラリと過ぎると、
「くさったらお終いだよ!」と係長の声。
ありがとうOさん。
あなたに幸あれ!!