「アリスちゃんってさ、好きな人とか居るの?」
唐突な質問だった。
アリスは少し驚いて、隣に座っているべクルックスの顔を見た。
「どうしてそんな事聞くんだ?」
「いや、何となくだよ。誰しも若ければ恋ってするものじゃない?」
べクルックスはそう言うと、窓の方を見たままロリポップを齧った。
アリスもつられて窓の外を見たが、観覧車から見える高い景色に目が眩み、思わず下を向いた。
「誰しも、っていうのはお前の勝手な妄想だろ。カルディアは無性愛者だ。」
「まあ、そうだよね。恋に興味があるか無いかなんて、個人の自由だし。」
がりがり、という飴を噛む音が聞こえる。
「でもおれは単純に君の事が気になるの。好きな人、居るの?」
「……昔は、人間に恋をしていた。」
べクルックスの視線が刺さる。
アリスはその人と目を合わせないまま、話を続けた。
「綺麗な瞳の、優しい声をした人間だった。誰からも好かれなかったオレを、好いてくれた。でもそいつには、他に好きな奴が居た。」
「諦めたの?」
「諦めが付く前に、オレは今の世界で神として生きることになった。アイツの居る世界へは簡単に降りられなくなったし、想いすら伝えずにアイツとは別れてしまった。」
思い空気が流れているのを感じた。
べクルックスはただ窓から遠くを眺めたままだった。
そのエメラルド色の瞳が、寂れた都市の夜景を映し出して、輝いていた。
「人間と神様の恋なんて、おかしいって言われるのかな。」
「少なくともカルディアが許してくれないだろうな。アイツは法律に厳しい。」
「おれとアリスちゃんも、悪魔と神様だけど?」
「オレ達はただの友人だ。一緒にするな。」
アリスは突き放すようにそう言った。
べクルックスは少し微笑んで、食べかけのロリポップをアリスの口に捩じ込んだ。
「何ッ……」
「もうすぐ地上だから、降りないと。」
べクルックスに頭を撫でられ、そのままうやむやにされる。
結局あの質問の意図は何だったのかと問う前に、観覧車の扉は開いてしまった。
***
どうも、雨の音です。
今回は初の小説投稿。
短めにしようと思いましたが結構な文字数になっちゃった。
今回の主人公はアリスとべクルックス。
アリスはとある国の主導者 兼 神様で、べクルックスは死を司る悪魔です。
2人とも性別に規定はありません。
時々出てきたカルディアは、アリスの居る国の本来の王様。この人も性別に規定はありません。
どちらもうちのこです。また出てくると思います。
今回のテーマは「恋」でした。
恋をするのに規定なんて無いと思います。
性別にだって制限を持たせなくていい。
自分が「こうなりたい!」「これが好き!」というものを、何で世間に邪魔されなくちゃいけないんでしょうか?
私は、自分の性自認も、自分が誰を愛するのかも、よく分かっていません。
大事な書類に自分の身体的性別を書く時、抵抗があります。
恋愛の話になると必ず異性について話し出す同級生に、少し嫌悪感があります。
かと言って、どっちが恋愛対象なのかと聞かれたら、「どっちもだしどっちでもない」みたいな回答しか出来ません。
今私は、「私」という性別を名乗って生きています。
リアルではまだ怖くて誰にも言えていませんが、ネットでは「私」として生きています。
その方がずっと心地いい。
性別は2つだけでも3つだけでもない。性格みたいに、色々な性別があっていいと思うんです。
そんな意味も込めて、「恋」の話を書きました。
私の作品では、性別の概念が薄弱になった世界を描いています。
同性愛も異性愛も、無性別も両性も、トランスジェンダーも当たり前として受け入れられる世界。
性別という境目で悩む人々が減りますように。
性別という壁に当たって苦しむ人々が減りますように。
そんな意味を込めて。
長くなってしまった上に上手いこと伝えられませんでしたが、今回はここら辺でおさらばしたいと思います。
誰かの痛みに寄り添えたなら、蛇は幸せです。
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ななしさん
いい話でした
性別にとらわれない世界になりますように
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