成長しなければ、という強迫観念があった。
自分は幼いのではないか、
成長できていないのではないか、
という恐怖もあった。
なぜなのだろう。
わたしは何を望んでいたんだろう。
成長とは必須のものだと思っていた。
今でもそれは変わらないけれど、
誰もがそう思っているわけではないらしい。
思うに、成長は必ずしも
生きていくのに必要じゃない。
幼い中年の大人は大勢いて、
目を覆いたくなる。
わたしが、成長しないと
生きていけないだけだ。
それも、他人や世間や社会が要求する
成長ではない。
気高い人が好きだ。
誰に非難されようが、命を危険に晒されようが、
間違っていようが、
自分と真摯に向き合って、
これが生き物としての正しさだ、
と示した人が好きだ。
英雄ではない。
他人に行使した力は関係ない。
やるべき時だと感じたときに、
やるべきことを為した人が好きだ。
そうなりたかった。
幼いわたしは理想主義で、潔癖で、
毎日自分に鞭打って生きていた。
起こっている問題はなにか、
できることとできないことはなにか、
できないことをできるようにするために
今できることはなにか…
地に足をつけて、
他人の要求を切り捨てて、
透明な壁に頭を何度も何度もぶつけるように
限界まで力を絞れば、
しばらくして、突然、前触れもなく、
答えがあらわれる。
サンタからのプレゼントのように。
大人になって、
わたしはあらかた幼い頃の夢を叶えた。
それでもまだ全然足りない。
けれど楽しい。
成長していくことは楽しい。
長年考え続けていた問題が解けた瞬間、
青空に白球を打ち上げるのに似た
突き抜けるような快感がある。
それに、
自分の手で人生を変えていくのも、
結局変えられない大きなうねりの中に
つつまれて生きていると感じるのも、
あたたかい。