休暇前に考えていた通り、昨日は海を見に行って来ました。モバイルバッテリーを持って、殆ど見切り発車に近いような形で、何のプランも無く暗い夜道を延々走り、コンビニで休憩したり、ガソリンスタンドで給油したりしながら、結局、夜明けより少し早く海岸に着きました。
何年も海も砂浜も見ていなかったので、新鮮な気持ちです。潮の生臭い匂いも非日常感があります。子供の頃は日が昇ってからビーチで遊ぶことしかなかったので、何だか特別な気分。
繰り返し打ち寄せる荒い波の音を聞きながら、夜明けまであれこれ考えました。
そのあたりの地域は、学生時代、よく遊んでいた内の一人の地元なのですが、その人とは何年も連絡を取っていません。
何気なく会話が途切れて、そのまま連絡がつきません。何か気に障ることを言ってしまっただろうか、迷惑に思われてしまっただろうか。アタシ、鈍感ってよく言われるしなぁ、とか色々。
昔馴染みと段々と疎遠になって行く感覚はあまり好きではありません。自分が何も成長せずに、時間ばかり過ぎてゆく感じがするからです。
けれども、そうして鬱屈とした気持ちのままでいるというのも嫌で。それは、その人のことを理由に、アンニュイな気分に浸っている自分に酔っている気もするからです。
暇つぶしに写真を撮ることがあり、その日もカメラを持って来ていたので、あたりの景色を撮ってみました。所々、変わっているものはあるけれど、やっぱり子供の頃に親に連れて来て貰った場所です。
思い出は色褪せた写真のようです。曖昧だから、美しいんですよね。
まとまった休みが中々取れなかったここ数年は、時折、記憶の中の海のことを考えていました。白い砂浜に、延々と広がる海と潮の香り。太陽の鋭い光、帰り道の車内にゆっくりと流れていた幸福な時間。
辛い時は、そんな空想に耽ってやり過ごしました。それでもう一度、同じ場所に立って何を考えたのか。
失望です。思い描いていたようには行きませんでしたね。海は水の塊でした。夜が明けて、開けた空の下で浴びる朝陽の光は、心地よくはありましたが、それがごく限られた時間の中の、なんと言えばいいのか、まるで仮初めの自由のように思えました。
近頃、良く考えます。楽しいこと、嬉しいこと、何かを美しいと感じる気持ちが、何だか自分の中の、過去に感じた気持ちの焼き回しのように思えて来る。
決してそれらを上回ることは無くて、これからの時間はそういったことばかりなのではないか、と。苦しいこと、辛いこと、憎む気持ちは日々、自分の中で濃縮されて行くのに、自分を繋ぎ止める為の何かは、決定的に欠落しているように思われる。それでも生きて行く為に、思い出の欠片を拾い集め続ける。
心が鈍くなる。嫌なことを感じないようにするほど、嬉しいことも感じなくなり、何も感じずに、他人にとって好ましい人物を演じることで、居場所を守っている。
そんなことが頭の中でグルグルして来てしまったので、もうこれはいけないと思い、日帰りの予定だったのですが、近くのビジネスホテルで部屋を取りました。
朝一からお酒飲む気持ち満々で、漁港で朝ご飯を食べる頃には、ホテルの傍にあったコンビニで買い、歩きながら飲んでいたロングの缶ビールは言わずもがな、途中で買い足したハイボールの缶もすっから。
海鮮丼なり浜焼き?を食べながら、さらに飲みました。実に気分が良い。別に酒の味なんてどうでもよくて、気持ちが軽くなるから好んで飲んでいる。
別に魚やらを買って帰る気持ちも無く、少しだけ魚市場を見た後は、酔い覚ましに散歩をして、砂浜に座り込んで、それから暫く、穏やかな潮風にうとうとしながら、そこに居ました。
昼過ぎ頃、タクシーを呼んでちょっと離れた銭湯に行きました。湯船に沈んでいると、酔いのせいもあり、もう色々のことがどうでも良い感じになります。
ホテルに帰ってからは、本を読みながら、煙草スパスパしながら窓の外を見ていました。気づいたら爆睡していて、次の日の朝方でした。
帰路につく前に、もう一度だけ砂浜に行きました。やはり海は海でした。
何も変わらない自分。まあ、それで良いのよね。生きてるので。
