今日の午後。教室移動で、あるクラスのある席に座っていたら、
机の持ち主がスタスタとやってきて、無言で机の中を漁り始めた。私は当然、捜しやすいようにと、椅子を引いた。
すると彼は無言のまま机をガタッと押して、中から捜し物を引き抜いて、無言で去っていった。
傾いた机の向きは、そのまま。
感じ悪いな、と思った。
――今日の放課後。
歩いていた私の下半身に取っ組みあいをして騒いでいた男の子の体が思い切りぶつかって、思わずよろけた。
それでも彼は取っ組みあいに夢中。
謝る、っていう選択肢は全く頭に無いようだった。
高校に入って、もう慣れたはずだった。
かき消されやすい私の声。内向的で、存在感の薄い私。
今日もなんとなく存在をスルーされて、私はスルーされたことをスルーするつもりだった。
だけど。
ぶつかってよろけた私を見てた別の男の子が
大丈夫?
って。
大丈夫だよって、たんの絡んだ声で精一杯答えた。
…うれしかった。
きにかけてくれて。心配そうな眼差しをむけてくれて。
それだけのことなんだけど
ほんの少しだけ、救われた気がした。