南北にまっすぐ伸びる道を車で走っている。
横道が1本もない。
道幅は丁度車体と同程度で、左右とも絶壁断崖。
この状況で、今まで走ってきた方向と逆方向に向きを変えたい場合、どうするか。
怪力の持主なら、一度車を止めて車体下にもぐって車を持ち上げ、180度回して再度乗り込むこともできるかもしれない。
何らかの魔法が使えるなら、車をミニカーサイズに縮めてから向きを変え、元の大きさに戻して乗り込むとか。
だが、現実には、こうしたやり方は使えない場合が殆どだろう。
行動変容についても、同じことが言える。
頭の状態がこの一本道のようになっていて、道幅も横道もない場合、行動変容は物理的に不可能。
人間は物質的な存在で、行動を変えるにも、それを可能にする物質的な根拠がいる。
その根拠を欠く場合、根性論、精神論、泣き落とし、何をしたところで変われはしない。
部下や後輩の指導、あるいは認知症の親御さん対応等、他人の行動変容を実現したい、あるいは、実現する必要がある場合。
その当人が、そもそも変わることが可能な状態にあるのかどうか、そこから考えなくてはならない。
「頭の中が一本道」―もともとそうした仕様、あるいは、生きている途中で故障や病気でそうなった場合、他人が働きかけをしてもしなくても、相手は変わらない。
というより、変われない。
それに気づいたら、「相手を変える」というゴールから、何か実現可能な「他のゴール」にシフトする方が良い。
それは、冷たいわけでも不親切なわけでもない。
相手にとって不必要かつ意味がない上に、自分も疲れる独り善がりの押しつけをやめるだけのこと。