私へ
君は小説を読むのが好きだ
空想に浸ることは心地良いから
君は小説を書くのが好きだ
あわよくばもっと自分に都合のいい空想を作り出したいから
君は過去に浸るのも好きだ
過去は美化できるから
で、今はどうだ?
君があのとき軽い気持ちで責任転嫁した瞬間、過去は終わったんだよ
そう、君が美化できていた自分は君が殺した
他でもない君の言葉でね
きっかけになったあいつはまあ確かに悪かったように思えるかもしれない
でもお前を殺したのはあいつじゃない、お前だ
数年振りに書いてみて分かっただろ?
人生経験が増して良かったと一瞬思ったよな
でも結局、空想だってわかりきって書いたものに君は価値を見出せない
もう君は世界観に完全に浸ることはできない
だってそりゃ、現実がうまくいってないからね
喉に小骨が刺さってりゃどんな美味しいもの食べたって充足感は得られない
当たり前だろ?
で、どうだ、このざまは。満足か?
ついでにトラウマ昇華しようなんて100年早いんだよ
許されたかったね
見殺しにしたことを都合良く気にしてないって言ってくれて、あんなものが私に影響与えられるわけないじゃないって言ってくれて、それだったら本当に良かったのに
目の前で大事にしたかった人の精神が死んでいくのを見た
手を下したのは自分じゃないが、止めようとはしなかった
ああ、自己保身だよ、笑ってくれ
そしてその人はそのまま生き返らなかった、その痛みを全部書いて昇華したくて綺麗にご都合つけて
好きだよその話自体は だって自分好みに書いてるから当然だ
でも、書き終えて残ったのはなんだ?
許されたかった、僕だって。
ああやって簡単に生き返ってほしかった
私はあんなんじゃ傷ひとつつかないよって、
今生きてるんだから良いじゃないって、
そもそも助けなんて期待してなかったって、
でも助けたいとは思ってくれてありがとうって、
全部、僕があのとき欲しかった言葉
しかも無自覚に書いてたのこれ全部
気付いたら虚しくなっちゃった
自覚したら余計に願望も増した
一生背負って生きていくって決めてた方がよほど楽だった
いつの間にやら中途半端に仕方ないって諦めて忘れるように努めてた
それに今更気付いちゃった、気づきたくなんてなかった
私、また多分見殺しにするよこれじゃ
我が身可愛さに口を噤んでなかったことにして
いっそ責めてほしかった、なんてね
嘘だ、誰よりも救われたがってるくせに
何かあったら私を呼べば良いとか君が一番欲しがった言葉だろ
都合よく自分を見捨てないでいてくれて
都合よく許しをくれて
都合よく、都合よく、都合よく
だから面白くなくなっちゃったんだ多分
これ以上逃げたってきっと意味ないや
あーあ、気付きたくなかったな
所詮現実ありきだったんだ
現実がうまくいかない限り、私はもうきっと純粋な気持ちで小説を書くなんてできない
先に現実から、だな
ついでに有名サイトに投稿してみたけどやっぱ全然読まれないねぇ、有名だけあって利用者多くてすぐ埋もれちゃう
才能も多分なかったと思い知らされて、良かったじゃない?
とはいえこれでやめることはない、私のことだから