軽く2日酔い。
昼近くに目が覚める。
ガンダムの映画でも観に行くか。
…車がない。
親父と弟が使ってったな。
程なくして帰ってきたが上映時間に間に合わん。
動画でカツ丼を見たから気分を変えるべく食べに行く。
昼時なので混んでいる。
奥の方のカウンターに座る。
動画で見たトリプルカツ丼を注文。
ふと入口を見るとお婆さんが店に入ろうとしてた。
ドアが開かないようだ。
(そのドア押すんじゃなくて引くんだよ)
と思いながら見ていると引くことに気付いたようだ。
だがうまく開けられない。
手押し車みたいなのを頼りに立っている。
足が悪そうだ。
ドアが引けなくて、ちょっと開けたけどうまく入れなくて挟まれそうになってる。
この間15秒~30秒くらいだろうか?
・お婆さんが店に入れない
・足が悪そう
・挟まれて転んだり怪我するかも
そう思った俺は店の奥から入口に向かってドアを開けてあげようとする。
半分ドアに寄りかかってる感じだからそのまま開けたらドアでお婆さんを押し出して転ばせかねない。
『開けますよ、大丈夫ですか?』
『引っ掛かっちゃうんで少し下がれますか?』
そう言ってお婆さんか転ばないように慎重にドアを開ける。
『ありがとう、助かりました』
と言ってお店に入るお婆さん。
どうやらテイクアウトのようだ。
お会計してる人の後ろにお婆さんが並ぶ。
取りあえずお婆さんが注文できそうだったのでレジの店員に任せて俺は席に戻る。
隣では俺のあとに注文してた人に先にカツ定食が提供される。
(俺のが先だったのになー)
レジを見るとお婆さんが注文を終えたところのようだ。
『お掛けになってお待ちください』
と店員が言うも足が悪いのかヨタヨタしててしてて心配だ。
何とか店内のベンチに腰掛けたあたりで、俺の頼んだトリプルカツ丼が運ばれてくる。
『お待たせしました。お客様のご案内ありがとうございました。』
と配膳の際に言われる。
『あ、いえいえ、、』
と面白味のない返事をする俺。
もうちょい爽やかに返せばいいものを。
食べながらお婆さんが気になる。
帰りにドア開けられるのか?
ちゃんと家まで帰れるのか?
俺は車だし乗せてってあげたら親切か?
等と考えた。
食べ終わるのが間に合ったらお婆さんに一言声かけよう。
大変そうだったら送ってあげよう。
だがカツ丼は熱い。
テイクアウトの時間までに食べきれるわけがなかった。
流石に俺がドアを開けてたことを見ていた店員はドアを開けてお婆さんを見送る。
お婆さんは無事に帰れただろうかと気に掛けつつ、食べ終わった俺は会計して店を出る。
…なんで目の前で困ってると思ったら勝手に行動して心配してしまうんだろうな。
ただの他人なのに。
そもそも店員に任せておけば良かったのに。
俺が行動する理由なんてないのに。
理由があるとすれば『いい人の振りをしたい』だろうか。
…何がいい人だ。
ドアを開けただけじゃねえか。
そういう考えをすることが気持ち悪い。
それでも俺は同じような場面に遭遇したら、やっぱり同じ行動を取るだろう。
目の前のことしか見えない愚かな人間だ。
宛メで苦しんでる人間にも少しは気にかけてやればいいものを。
結局人間なんてその場限りの自己満足でしか動けない。