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「分かってもらう」をあきらめたことの恩恵

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アメリカの友人に作品集をプレゼントした。
無事到着の連絡とともに、なんだかえらくエモーショナルなお礼のメールが来た。
彼は、特にアート方面に造詣が深いというわけではない。
趣味で嗜む程度、とはいえ、技術的には唸るほど上手い。
作品集を贈りたいと思ったのは、そういう人であればこそ、なのだけど。

彼の感想の中に、
” I can see your wholesomeness expressed in every piece you create”
という言葉があった。
全く予想外の、何の期待もしていないときに、こうやって想定を超える理解を示されることが間々ある。
以前も、フランスの方から「あふれる詩情」という感想をいただいた。
その前には、日本のお若い方から「無駄が無くて綺麗」というコメントをいただいた。
彼女は、「無駄がない」ということを、私が制作上どれほど重視しているか全く知らない。
それでそういう感想が出るんだ、と感動を通り越して呆れてしまった。

「無駄がない」ためには、
「必要なものが全部含まれている」
「不要なものが何も含まれていない」
この両者を実現する必要がある。
例えば、制作しているものが絵だとして、自分の飼い猫のポートレートを描こうと思ったら、
「無駄のない絵」
とは、具体的にどんな絵なのか。
飼い猫だけを描くのか。飼い猫がいる場所も含めて描くのか。
飼い猫の顔を描くのか。全身を描くのか。
飼い猫が遊んでいるところを描くのか。寝ているところを描くのか。他の猫とじゃれているところを描くのか。
「無駄のない飼い猫の絵」とは、何を描き、何を描かない必要があるのか。
この取捨選択に恐ろしく頭を使う。
それは結局のところ、取捨選択の基準となる
「自分が何を表現したいのか」
をハッキリと見極める作業だ。
だから、制作に要する時間の何倍、何十倍もの時間を企画のために費やす場合が多い。

作品を見て思わず出た言葉が、
「無駄のない綺麗な作品ですね」
とは、実際凄まじいアンテナだと思う。
もう5年ほど前の出来事だが、あまりに感心したので、よく覚えている。

こういった思いがけない嬉しい出来事というのは、
「分かってもらう」
をあきらめたことの恩恵の一つだ。
分かってもらおうと思っていると、制作にあたって、
「これで伝わるだろうか」
という逡巡や、
「分かってもらうには、こうした方がいいだろうか」
という計算が邪魔をして、作品の純度が低くなる。
切れ味が悪くなる。
密度が低くなる。
そうすると、皮肉なことに、却って伝わらなくなってしまうのだ。
人間は、どうあがいてみても宇宙に一人ぽっちなのだから、
「他人には、自分が見ているものは見えない」
というのは、思い違いではなく事実だ。
それを、自分にとって一番無理のない自然なやり方で外の世界に引っ張り出してくる。
それを、世界にぽいと放り出す。
インターネットのお陰で、ほんの数秒で、
「自分にだけ見えているもの」
を、世界中の人に
「ねえねえ、見てこれー」
と見せることができる。
そうしたら、全く同じではなくとも、近いものが見えている人たちが反応してくれる。
そして、自分の言葉で、それを再定義してくれる。
大抵の場合、そうした再定義はとても新鮮だ。
「新鮮」と受け止めることができるのも、
「分かってもらう」
をあきらめているから。
「分かってもらう」のが当然と思っていると、見た人の反応が自分の期待通りでない場合、
「自分が伝えたいことを分かってくれる感性の人がいない」
「誰も分かってくれる人がいない」
と、不満を抱くことになる。

長く生きるとは、自分が初期設定において、
・どれほど期待過剰だったか
・しかもその期待に、どれほど根拠がなかったか
を思い知らされ続けることだ。
がっかりして、
「ああ、私の期待過剰のせいでしたか。すみません」
またがっかりして、
「すみません。まだ期待過剰だったんですね」
更にがっかりして、
「ホントに懲りないね、私も。いい加減にしなよ。あ、すみません」
を幾度となく繰り返し、あるときふと気づくと、
「なんか、みんな優しいな」
「こんなに分かってくれる人がいるんだ」
と思うようになっている。
それが、この世界の現実に照らして、妥当なレベルの期待値への調整が完了した瞬間。

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