中学三年生のときに、はじめてキスをしたことを思い出した。
する直前は、胸がドキドキして、目とかぜんぜん合わせられなくて、それから少し間が空いて私が恥ずかしくて下を向いたら、不意打ちでキスされて、なにがあったのかわからなくてびっくりして、目を見開いたら、目が合っちゃって、その瞬間ぎゅっと抱き締められて、もうどうにかなっちゃいそうなほど心臓がばくばくしていたのを覚えている。
最初はそれでよかった。そうやってドキドキすることが幸せだった。
でも、そうやってドキドキする一方、相手に自分をさらけ出せなくて、怖くて相手に思うような事を聞けないでいたので、結局、途中で苦しくなってしまった。
だから、あたり前かもしれないけど、もっともっとなんでも話し合えて、ありのままの自分でいられて、
夜は、ずっと二人で寄り添っているだけでいいような…そんな恋がしたいって思っちゃうんだ。
私は、一度だけ、恋人でない人と恋人つなぎをしたり、ぎゅっと抱き締めあったりしたことがあった。
私は彼のことは愛していなかった。彼も、私を愛していなかった。きっと。
でも、引き寄せられるようにして、そうするだけで、すんごく…幸せだった。
まだ過ごしたことはないけれど、誰かと、とろけるような夜をすごすよりもずっと幸せだろうと思った。
そして、好きでもない彼の瞳を見てにっこり笑っている自分を見て、私ははっと気づいた。
私は、ドキドキ何て求めてない。
ただ笑ってその時間が共有できる人に出会えればそれでよいんだと。
でも、彼のことはすきになれなかった。
もちろん、彼は、なんでも話せたし、いつでも会えたけれど、はかなく友達の一線を越えたそのあとでも、私は彼のことは好きになれなかった。だから私は突然怖くなって完全にその人と縁を切ってしまった。
私は、そんな、過去を振り返り、ようやく気づいた。確かに、私は、寄り添っているだけで幸せだと感じられる人に出会えた。
キスとかしなくても、話しているだけで、心が休まるような人と出会えた。
でも、条件がそろっていても、なぜか好きになれなかった。好きじゃなきゃ意味ないよね。
だから、結果的に私はまだほんとうの恋をしたことがないんだろうな。恋とかいってほんとは焦っていただけなんだろうな。
でもその事実は全然ショックではなかった。
窮屈な恋も条件だけそろう恋も全部嫌だったから、全然ショックではなかった。
だって
そばにいるだけで、それだけで構わないとお互いに思えるような
そんな運命の恋って
自然とありのままの自分のまま相手の懐へ飛び込んでいける恋の事だと思うから。
そうじゃないのに彼氏ほしいからとか言って背伸びする必要もないんだなって思えるから。
だから、彼氏いないーとかいってなやむのっておかしい。
あわない恋してもぜったいに短く散ってしまう…
どうせ付き合うなら結婚までこぎ着ける人がいい。
紗絵子