目の前の場所に足を踏み出したら、どんな景色が見えるんだろ。電車を真っ正面から見たら、どんな感情になるのかな。
少しだけ踏み出したら、呆気なく今までのことがなかったみたいに人生が終わるんだろう。
ほんの少しのことだから、私にも簡単にできるんじゃないか、じーっと見詰めて居たら君が言う「腹へらねぇ?」って
さっき何か食べていなかったかな。
今は体格の差が開き過ぎておんぶは出来ないけど、君は相変わらず私の背中にくっついて私の首を大きな腕で挟んでる。
そろそろ気温的に厳しいんだけど、
多分君が捕まえてくれてるから私はいらない一歩を踏み出せない。
少し体が引っ張られて、目の前を電車が通過する。こんな音にも驚いて身をすくめる私だから、自分からは踏み出せない。
私は女で君は男。歳は一緒でも、小さい頃から一緒でも、君とはいつか離れ離れになっちゃうんだろう。
我が儘を言えば君を困らせてしまうんだろう。だから言わないけど、できたら私は離さないでほしい。